亜鉛(あえん)の元素記号はZnで、金属元素に属します。また、亜鉛は英語でZinkと表記します。Znはその略記号になります(亜鉛の原子量は65.4)。
亜鉛は身体の中で多くの機能を持つ重要な微量元素です。体内酵素の生成に関与したり、炎症を抑える作用(抗炎症作用)などが特に重要な役割です。
また、皮膚のコンディションにも影響を及ぼし、亜鉛不足は湿疹ニキビなどの原因になります。
亜鉛は日常生活のストレス、飲酒、糖質制限ダイエットなどにより、消費されます。脳のエネルギー産生にも(マグネシウムに次いで)多く消耗されます。
亜鉛をサプリメントとして摂取する場合は食後すぐのタイミングに飲むと良いでしょう(亜鉛の1日摂取推奨量は以下のセクションを参考にしてください)。
微量元素とは1日の摂取量が100㎎以下のミネラルのことです。一方、多量元素とは1日の摂取量が100㎎以上のもののことです。
微量元素は、亜鉛、銅、鉄、ヨウ素、マンガン、セレン、グロム、モリブデンのことで、多量元素は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンのことになります。
それでは、亜鉛について本題に入っていきます。
亜鉛の1日摂取推奨量
以下の表は、厚生労働省が公表している亜鉛の1日推奨量です。
妊婦の方の必要量が多くなっているのには、理由があります。詳細は後ほど説明しますが、これは亜鉛が正常な細胞分化にとって必須の栄養素だからです。
亜鉛の効能(働き)
亜鉛の補酵素としての役割
亜鉛の効能(働き)には非常にたくさんのものがあります。代表的なのが、酵素の補酵素としての役割(なんと300種類以上!)です。
補酵素は英語でCoenzyme(コエンザイム)と書きます(”Co”が補うという意味、Enzymeが酵素です)。文字通り酵素を補うのがその役割なのですが、若干ニュアンスが違います。なぜなら、酵素は補酵素なしには機能できないからです。
酵素には体内酵素と消化酵素がありますが、それらが機能するためには補酵素が必須となります。つまり、タンパク質や脂質、炭水化物(糖質)などの栄養素を分解するためには酵素だけでは足りず、補酵素も必要です。亜鉛以外の補酵素には、ビタミンB1やマグネシウムなどがあります。
亜鉛は細胞分裂(分化)にとって必須の栄養素
亜鉛は細胞分裂にも関わっています。
従って、亜鉛が不足すると細胞分裂が正常に行われなくなります。特に妊婦の方の場合、お腹の中にいる胎児の正常な細胞分裂(文化)にとって亜鉛は大切です。
成長期の子供にとっても、重要な栄養素となります。夏場の運動では、運動そのもので大量の亜鉛が消費されますし、さらに発汗によって体外に排出されますので、亜鉛を意識して摂るようにしましょう。
亜鉛と味覚
亜鉛による細胞分化作用には、味覚とも密接な関係があります。
味覚は舌で感じますが、舌には味蕾(みらい)という感覚器があります。味蕾にある味細胞によって、私たちは味覚を感じることができるのです。
この味細胞の寿命はとても短く、約10.5日で新しい味細胞と入れ替わります。味細胞の代謝のスピードは、とても速いわけですが、このときに必要とされる栄養が亜鉛になります。
つまり、亜鉛が不足していると、比較的すぐ味細胞の代謝障害が起こり、それが味覚障害へとなります。これが、亜鉛不足により味覚障害が現れやすい理由です。亜鉛は味覚の正常な機能にとっては必要な栄養素です。
亜鉛の抗炎症作用
亜鉛不足により抗炎症作用が機能しなくなると、怪我や運動(筋トレ)からの回復に時間がかかったり、怪我の慢性化により組織の線維化や変性が進行するリスクが高くなります。
炎症はさまざまな病気の原因になります。例えば、癌(がん)やタイプ2型糖尿病、動脈硬化、心不全、ぜんそく、アトピー性皮膚炎、関節リュウマチ、アルツハイマー病、リーキーガット症候群などがあります。
タイプ2型糖尿病では、インスリンの生成・分泌がうまく行われていない場合があります。インスリン分泌に必要な栄養素の一つが亜鉛です(亜鉛以外には、ビタミンD、カルシウム、マグネシウム、ビオチンがあります)。従って、亜鉛不足はインスリンの生成に影響を及ぼし、タイプ2型糖尿病の発症リスクを高めることになります。
また、最近の研究によると、アルツハイマー患者の血中亜鉛濃度が健常者に比べ低いことが分かっています。つまり、亜鉛不足とアルツハイマー病の発症には、何らかの関係があると言われています。
リーキーガット症候群では、腸管の炎症が起こっています。
腸内フローラ(腸内細菌)のバランスが崩れ、腸管に隙間が生じることで本来は通過できない大きさの物質が、外に漏れ出しています(リーキーガット症候群は腸内環境の悪化によって引き起こされる病気です)。それにより、アレルギー反応(炎症反応)が起こっています(下図)。
従って、以上列挙した病気は亜鉛の補給によって、予防・改善が期待できる病気です。
慢性炎症や腸内環境(腸内フローラ)については以下の関連記事を参照ください。
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亜鉛不足と不妊症
亜鉛は、タンパク質・脂質・糖質の代謝やDNA、RNAの遺伝子発現にとっても重要な役割を持っています。従って、男性の不妊には亜鉛が重要な栄養素となります。
一方、亜鉛は細胞分化に関わっているので、女性の不妊にも重要な栄養素ですが、亜鉛以外にビタミンA、E、D、ヘム鉄を加えるとさらに不妊の改善に効果があります。
亜鉛は髪の毛の発育を促す効果がある
髪の毛はケラチン(タンパク質の一種)でできていますので、髪の毛の発育にとって重要な栄養素はタンパク質です(タンパク質不足により髪の毛は抜けます)。
また、髪の毛が抜けるもう一つの原因が、毛根細胞の酸化です。私たちの身体を酸化させる最大の原因は活性酸素です。
そして、活性酸素を除去する物質が抗酸化物質ですが、強力な抗酸化物質のSODには亜鉛が含まれています。つまり、亜鉛が不足している状況ではSODが生成されず、身体が酸化ストレスにさらされることになります。それが、抜け毛を引き起こします。
血流障害によっても脱毛は起こります。血流障害は精神的ストレスと密接に関係しています。どういうことかと言うと、ストレスによりコルチゾールというホルモンの分泌量が増えます。
コルチゾールの作用の一つに血管収縮作用があります。つまり、コルチゾールの分泌量が増えると血管が収縮し、毛根への血流量が減少します。それが、抜け毛を引き起こすのです。
抜け毛の原因
- 亜鉛不足
- タンパク質不足
- 精神的ストレス
- 血流障害
- 毛根細胞の酸化(過剰な活性酸素)
亜鉛、タンパク質、抗酸化物質(ビタミンA、C、E、オメガ3系脂肪酸、SODなど)、アルギニン
Now Foods, 亜鉛、50 mg、250粒(商品リンク)
亜鉛は、骨格系、免疫系、神経系、および内分泌系を含む体内の多くの臓器と系統の正常な機能に不可欠です。亜鉛は、タンパク質および炭水化物の代謝、RNA / DNAの合成、および細胞間シグナル伝達に関連する何百もの酵素反応に必要なミネラル補因子です。また、酸化過程に対する体の防御で重要な役割を果たすことも知られており、特に健康的な加齢維持に有効です。
亜鉛の毒性(デメリット)
亜鉛の慢性的な過剰摂取により、HDLコレステロールの減少、免疫機能の低下が起こります。HDLコレステロールは善玉コレステロールと呼ばれています。また急性の場合、吐き気や下痢、食欲不振などの症状が現れます。
善玉コレステロールは、不要となったコレステロールを肝臓に送る役割があります。よって、善玉コレステロール値が低いと、不要なコレステロールが肝臓で代謝されず(最終的に胆汁酸として排泄される)、血中コレステロール値が高くなります。善玉コレステロール値が低いと動脈硬化の発症リスクが上がります。
また、亜鉛は銅と鉄分の吸収を阻害します。つまり、慢性的な亜鉛の過剰摂取は鉄分の吸収を邪魔するので、貧血による様々な症状の原因になります。
亜鉛の過剰摂取による副作用
- 吐き気
- 食欲不振
- 下痢
- 腹痛
- 頭痛
- 免疫力の低下
- 善玉(HDL)コレステロール値の低下
亜鉛が豊富な食品(料理)
亜鉛の補給におすすめの食べ物には、以下のようなものがあります。
チーズ、鶏肉、牛肉、豆乳、豆腐、貝類、納豆、卵、白米、ヒジキ、魚、牛乳、うなぎ、ホタテ、ピーナッツ、ココア、豚肉、レバー、ナッツ、イカ、きな粉、カシューナッツ、ごま、抹茶、バナナ、青のり
主な食品の含有量は以下の通りです。これらは全て亜鉛が豊富に含まれている食べ物です。
牡蠣に含まれている亜鉛の量はずば抜けていますね。また、ひじきには亜鉛だけでなく鉄分も豊富に含まれています。
食品 | 含有量(㎎) |
牡蠣 | 13.2 |
貝類(たいらがい) | 4.3 |
豚肉(レバー) | 6.9 |
牛肉 | 4.0 |
チーズ(パルメザン) | 7.3 |
卵(卵黄) | 4.2 |
鶏肉(レバー) | 3.3 |
ココア | 7.0 |
青のり | 2.6 |
ひじき | 1.6 |
一般的に肉や魚介類などの動物性食品に含まれている亜鉛は、吸収率が高い傾向があります。
一方、青のりやひじきなどの植物性食品に含まれている亜鉛は、他の微量元素(銅や鉄分)に邪魔をされて亜鉛の吸収率はそれほど高くありません。
まとめ
- 亜鉛は300種類以上の酵素の補酵素として重要な役割を果たしている
- 亜鉛は細胞分裂にとって必須の栄養素である
- 亜鉛不足で最初に現れる症状が味覚障害である
- 亜鉛には抗炎症作用がある
- 亜鉛不足は男女ともに不妊症の原因になる
- 亜鉛は髪の毛の発育を促進する効果(抜け毛予防)がある
- 亜鉛の過剰摂取はHDLコレステロールの減少、免疫機能の低下を引き起こす
- 食品の中で牡蠣にはもっとも高濃度の亜鉛が含まれている
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【瞑想歴19年】33歳の時、インドに3か月滞在。1日12時間のヴィパッサナー瞑想を行う。それ以来、朝晩の瞑想は欠かしていない。
【カイロプラクティック歴22年】大学卒業と同時に渡米。カリフォルニア州のカイロプラクティック免許を取得しLAにて10年臨床経験を積む。オリンピック帯同経験あり。2007年に帰国。プロフィール詳細はこちら