アルコールと筋トレ

筋トレするなら酒は飲むな!【飲酒と男性ホルモンの関係】

筋トレしている人から「お酒(アルコール)を飲みながらトレーニングしても筋肉はつくの?」と質問されることがあります。

言い換えると、「お酒の筋トレへの影響」なのですが、本記事ではこの疑問に対し、科学的エビデンスに実体験を加えて解説していきます。

過去にお酒(ビール)を飲みながら、ボディビル大会の準備(減量)をしていた時期があります。

結論を書きますと、「最悪の結果」となったのですが、その詳細は後ほど。
それでは、本題に入っていきましょう。

お酒を飲みながら筋トレはありなのか?

「せっかく、がんばって筋トレしているが、お酒を飲むと台無しになってしまわないか?」と不安に思っている人は多いと思います。

いきなり結論を書きますが、あなたのその不安は的中しています。

先にも書きましたが、私は大のビール好きなので、大会に向けての減量中にも関わらず、飲酒を止めなかった時期がありました。

その根拠は、

摂取カロリー<消費カロリーならOK?
と思っていたからです。確かに理論的には正しいです。
つまり、たとえお酒を飲んでいても、それ以上に消費(この場合、筋トレや有酸素)していれば、減量に問題はないという理屈です。
しかし、お酒(アルコール)だけは例外でした。
なぜなら、この理屈は機能していないことを実体験として知ったからです。

それでは、私自身の実体験をお話する前に、『お酒が筋トレに及ぼす影響』についての科学的エビデンスをご紹介します。

お酒(アルコール)は筋肉の成長を抑制する

アルコール(体内でアセトアルデヒドに変換される)は、男性ホルモン(テストステロン)の生成を抑制します。
従って、筋トレの効果を弱めてしまうことは明らかです。

飲酒はテストステロンの生成を抑制
飲酒は筋トレ愛好家の敵
アルコールは体内でアセトアルデヒドに変換されますが、このアセトアルデヒドが酒酔いや飲酒による頭痛、吐き気などの原因になります。簡単に言ってしまえば、アセトアルデヒドは毒です。
アセトアルデヒドは精巣にあるライディッヒ細胞の働きを弱めてしまうことがわかっています。ライディッヒ細胞からは、男性ホルモンのテストステロンが生成・分泌されています。これが、飲酒によるテストステロン低下のメカニズムです。従って、体内でアセトアルデヒドを分解できない人(お酒が弱い人)は特に飲酒によるテストステロン低下の影響を受けやすいことになります (Van Thiel DH, 1979, http://bit.ly/2mcCmFf)。

アルコール摂取によって、どのくらいテストステロン生成量が低下するのか?

グラス9杯以上のアルコール(ビールなど)を飲んだ直後に男性ホルモン(テストステロン)の分泌量を測定したところ、なんと45%も低下していたことがわかっています (Frias J, 2002, http://bit.ly/2lLtlD5)
そして、その影響は飲酒の翌日にも及んでいます。飲酒の翌日のテストステロン生成量は、まだ23%も低下していたのです。
そこで、もし毎日お酒を飲んでいたら、どうなるでしょうか?お酒が筋トレにどれほど悪影響を及ぼしているかがよくわかると思います。
飲酒によってテストステロン値が45%も低下!

長期のアルコール摂取により睾丸が委縮!?

しかも、お酒を長期間飲み続けると、睾丸が委縮することも明らかになっています (Van Thiel DH, 1975 http://bit.ly/2kiqYXW)。
これはダイレクトにテストステロンの生成を低下させます。

飲酒によって脳みそからの男性ホルモン生成シグナルが弱化!?

さらに、お酒により脳みそからのテストステロン生成シグナルが弱くなることもわかっています (Maneesh M, 2006, http://bit.ly/2kirzJa)。
つまり、アルコールは脳みその機能にもダメージを与えるということ。

これは、見過ごすわけにはいきませんね。

アルコールはテストステロンをエストロゲンに変換させてしまう

さらに悪いことに、アルコール摂取によって、テストステロンがエストロゲンに転換する割合が増加してしまいます (Purohit V, 2000, http://bit.ly/2lRT4ti)。

ここで、簡単にテストステロンとエストロゲンについてまとめておきます。

テストステロン=男性ホルモン⇒男性らしい体型を作る(筋肉粒々)
エストロゲン=女性ホルモン⇒女性らしい体型を作る(柔らかい脂肪の乗った体付き)

お酒を飲むとテストステロンがエストロゲンに変換されてしまう(これをアロマタイゼーションと言います)ということは、体内のテストステロン量が減るということ。

これまた、筋トレ愛好家にとっては由々しき問題ですね。

アルコールは成長ホルモンの生成も抑制

成長ホルモンも筋肉の合成にとって、とても大切なホルモンです。
しかし、アルコールは成長ホルモンの生成も抑制することがわかっています(Välimäki M,1990, http://bit.ly/2mfpvlP)。

これで、筋肉の成長に重要な2つのホルモンが共にアルコール摂取によって、抑制されてしまうことがわかりました。
お酒が筋肉の成長をいかに妨げるかがよくわかったと思います。

ここまでをまとめておきましょう。

  • 飲酒直後の男性ホルモン(テストステロン)の生成量は45%低下
  • 長期の飲酒習慣により睾丸が委縮
  • 飲酒によって脳みそからのテストステロン生成シグナルの弱化
  • 飲酒によりテストステロンがエストロゲンに変換される割合が増加
  • 飲酒は成長ホルモンの生成も抑制

まだある!お酒が筋トレを台無しにする理由

ここまで読んで、お酒が男性ホルモン(テストステロン)や成長ホルモンの生成にとって、とても悪い影響を及ぼしていることが分かったと思います。

しかし、筋トレ愛好家がお酒を避けるべき理由は他にもあります。

お酒は身体を脱水させてしまう

アルコールは脱水を引き起こします。
筋肉の75%は水分ですから、脱水するということは、そのまま「筋肉が萎む」ことと同じです。

アルコールは腎臓で分解されるのですが、その際、大量の水が使われます。
お酒を飲むと脱水してしまうのは、そのためです。

お酒は体脂肪を増加させる

アルコールは炭水化物なのですが、分解されてもグルコースに転換されません。
アルコールが分解されると脂肪酸に転換され、そのまま体脂肪として蓄積されてしまいます。

また、アルコールはクエン酸回路(TCAサイクル)の作用を弱める働きがあります。
クエン酸回路は体脂肪の燃焼(代謝)にとても大切なシステムなので、これもアルコール摂取が体脂肪を蓄積させやてしまう根拠です。

ビールを飲みながら減量
減量はいつも大会の6か月前から開始していました。徐々に食事と運動を変化させていくのですが、毎年大会の3か月前からアルコールも完全に絶つのが通例でした。
しかし、その年はずるずると毎晩のビールを飲み続けていました。すると、大会の1か月前にも関わらず、腹筋にまだたっぷりと脂肪が乗っている状態。明らかに例年と異なる感じでした。
いつもと違うのは、お酒を飲んていることだけ。ということで、すぐにアルコールも完全に絶ちました。すると、不思議なくらい腹部の脂肪が取れ、例年と同じくらいに絞ることができました。
このとき、ビール(アルコール)は、体脂肪の燃焼を邪魔すること。特に腹部の脂肪を落ちにくくするのではないかと、感じました。

ビタミン&ミネラルの消耗

アルコール摂取は、ビタミンA、B、C、カルシウム、亜鉛、リンの消耗を促進します。
当然ながら、これらのビタミン・ミネラル類は、筋肉の成長にとって必須の栄養素ですね。

特に葉酸(ビタミンB9)、ビタミンB6、チアミン(ビタミンB1)、ビタミンAの消耗は著しいです。
お酒は飲まないに越したことはないのですが、飲む場合は上記のビタミン類は、しっかり補給しておきましょう。

まとめ

いかがでしたか?筋トレ愛好家にとってお酒は大敵であることが分かったと思います。

ここでは、アルコールの肉体への影響についてのみ書いてありますが、精神的な影響もあります。

機会があれば、そちらもお話したいと思っています。

それでは、以下に本文をまとめておきました。

  • お酒は睾丸を委縮させ、男性ホルモンであるテストステロンの生成を抑制する
  • アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドが、男性ホルモンの生成を抑制する
  • お酒を大量(グラス9杯以上)飲むと、男性ホルモンの分泌量は45%も減少し、その影響は翌日にも及ぶ。
  • お酒により脳みそからのテストステロン生成シグナルが弱くなる
  • お酒を長期間飲み続けると、睾丸が委縮する
  • アルコール摂取によって、テストステロンがエストロゲンに転換する割合が増加する
  • アルコールは成長ホルモンの生成も抑制する
  • アルコールは脱水を引き起こす
  • お酒は体脂肪を増加させる
  • アルコール摂取は、ビタミンA、B、C、カルシウム、亜鉛、リンの消耗を促進する
お酒は『百薬の長』どころか、『百害あって一利なし』

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参考文献

  1. Frias JTorres JMMiranda MTRuiz EOrtega E: Effects of acute alcohol intoxication on pituitary-gonadal axis hormones, pituitary-adrenal axis hormones, beta-endorphin and prolactin in human adults of both sexes. 2002 Mar-Apr;37(2):169-73 (http://bit.ly/2lLtlD5).
  2. Van Thiel DHLester RThe effect of chronic alcohol abuse on sexual function: 1979 Nov;8(3):499-510 (http://bit.ly/2mcCmFf).
  3. Van Thiel DHGavaler JSLester RGoodman MDAlcohol-induced testicular atrophy. An experimental model for hypogonadism occurring in chronic alcoholic men. 1975 Aug;69(2):326-32 (http://bit.ly/2kiqYXW).
  4. Maneesh MDutta SChakrabarti AVasudevan DMAlcohol abuse-duration dependent decrease in plasma testosterone and antioxidants in males. 2006 Jul-Sep;50(3):291-6 (http://bit.ly/2kirzJa).
  5. Purohit V: Can alcohol promote aromatization of androgens to estrogens? A review. 2000 Nov;22(3):123-7 (http://bit.ly/2lRT4ti).
  6. Välimäki MTuominen JAHuhtaniemi IYlikahri R:The pulsatile secretion of gonadotropins and growth hormone, and the biological activity of luteinizing hormone in men acutely intoxicated with ethanol. 1990 Dec;14(6):928-31 (http://bit.ly/2mfpvlP).

 

ボディビル歴33年。国内外のボディビル大会で優勝・入賞経験多数。自らの肉体を実験台にして、ウエイトトレーニングや食事(サプリメント)を実践。医学博士号(スポーツ医学)所持。プロフィール詳細。

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