筋トレ愛好家であれば、毎日のプロテインドリンクは欠かせないものですね。
しかし、どんなにタンパク質の必要量を満たしていても、それが吸収されていなかったら、はっきり言って無駄です。
無駄どころか、健康にとっては有害である可能性さえあります。
本記事では、プロテインが吸収されるのにかかる時間、そしてプロテインの吸収率を上げる方法について解説してあります。
一度の摂取で吸収できるプロテインの量
現在、巷にはいろいろな種類のプロテインが出回っていますね。もっともメジャーなのが、ホエイプロテインだと思います。
その次がソイプロテインかな?
意外と低いホエイプロテインの吸収率
ホエイプロテインの人気が高いのは、その吸収の素早さだと思います。また、吸収率の高さも他のプロテインに比べると高いと言われています。
タンパク質の吸収率は、構成されているアミノ酸の組成によって変わります。アミノ酸の体内での利用効率を数値化したものがアミノ酸スコアと呼ばれるものです。従って、アミノ酸スコアの値が高いほど、体内での利用効率が高い、すなわち吸収率が高くなります。自然食品の中では卵のアミノ酸スコアが最高レベルになっています。ホエイプロテインの原料である牛乳(ミルク)のアミノ酸スコアもかなり優秀なので、ホエイプロテインの吸収率(量)は高いです。
例えば、「ホエイプロテインを40g飲んだら、それが全て吸収されている」と思っている人が多いかもしれません。
しかし、意外とそうでもないようです。
驚くかもしれませんが、ホエイプロテインの吸収率(量)は、それほど高くありません。
このことは、最近のリサーチからも明らかです。
1時間当たりに吸収できるホエイプロテインの量
一度の摂取当たりのホエイプロテインの吸収率について検証したリサーチがあるのですが、その結果を見る限り、私たちが飲んでいるホエイプロテインのほとんどがそのままトイレに流れていってしまっているようです(笑)。
ホエイプロテインのパウダーを水に溶かして飲むと、それが胃を通過して腸管で吸収されるまで、およそ1時間30分かかります。
そして、1時間当たりに吸収できるホエイプロテインはたったの8gから10gしかありません!最大でも10gだけです!
ホエイプロテイン40gを吸収するのにかかる時間
40gすべてを吸収するためには、果たしてどのくらいの時間がかかるでしょうか?
タンパク質分解酵素が肝
しかし、ありがたいことに、ホエイプロテインの吸収率を上げるための方法について考察している論文があります。
こちらの論文になります。
Oben J, Kothari SC & Anderson; ML. An open label study to determine the effects of an oral proteolytic enzyme on whey protein concentrate metabolism in healthy males JISSN 2008 5(10).
上記の研究論文では「どうすればホエイプロテインの吸収率を上げることができるか?」がテーマになっています。
タイトルの中に”proteolytic enzyme”という言葉がありますが、これは『タンパク質分解酵素』のことです。
「タンパク質分解酵素のホエイプロテインの吸収率に及ぼす影響」について明らかにすることが、この研究論文の最大の目的です。
タンパク質はそのままでは、吸収することができません。分子が大き過ぎるからです。タンパク質を小さい分子に分解したものをアミノ酸と呼びますが、私たちの身体はタンパク質がアミノ酸に分解されて初めて腸管から吸収することが可能になります。
タンパク質分解酵素は、タンパク質をアミノ酸に分解するときに必要な酵素のことです。プロテアーゼとも呼ばれ、ペプシン、トリプシン、ペプチターゼなどのプロテアーゼが存在します。
関連記事;筋トレに消化酵素は必須のサプリメント
窒素バランスとは?
それでは、上のセクションでご紹介した研究論文についてお話していきます。ここからが、本記事の肝になるところです。
この研究の参加者は健康な男性41名(BMIは20から24の間)。年齢は19歳から35歳まで。
使用されたホエイプロテインはバニラ味のもので、構成成分は以下の通りです。
- タンパク質=85%
- 脂質=3%
- ラクトース=6%
- 溶解剤(solublizers)、乳化剤(emulsifiers)は無添加
参加者に上記のホエイプロテインを50g飲んでもらいました。そして、その後、以下の2つの項目についてチェックしています。
- 血中アミノ酸濃度
- 尿窒素量
血中アミノ酸濃度は、ホエイプロテインの摂取前、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、3.5時間後、4時間後にチェックしています。
摂取したタンパク質の量と尿中に排泄された窒素量の差を計算することで、体内に取り込まれたタンパク質量(つまりタンパク質の吸収率)を知ることができます。
この差を窒素バランスと呼んでいます。
窒素バランスからタンパク質の吸収率が推測できる
ちょっと、話がややこしくなってきたので、窒素バランスについてまとめておきます。
窒素の摂取量が排出量に比べて大きい場合、身体はアナボリック状態にあります。つまり、筋肉の合成が高まっている状態です。
また、窒素の摂取量が排出量に比べて小さい場合、身体はカタボリック状態にあります。このとき、身体では筋肉の分解が起こっています(これは望ましい状態ではないですね)。
窒素の摂取量<窒素の排出量⇒カタボリック状態・筋肉分解
ホエイプロテインだけを飲んだ場合の血中アミノ酸濃度
先ほどの研究論文では、ホエイプロテインだけを飲んだ場合、4時間後に血中アミノ酸濃度は最高レベルに達しています。
どの程度、増えたかと言うと、摂取前のおよそ30%増しです。(1.71mg/L から2.22mg/Lへ増加)。
ホエイプロテイン単独の摂取で、身体の中のアナボリック状態は30%増しということ。まずまずの結果ですね。
しかし、この論文の目的はこれではありません。
先ほども書きましたが、もう一度確認しておきましょう。
「タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を併用したときに、ホエイプロテインの吸収率はどのくらいになるのか?」というのが、本来の目的でした。
タンパク質分解酵素は、文字通りタンパク質を分解してアミノ酸にするために必要な酵素です。
常識的に考えれば、「これとホエイプロテインを併用することでタンパク質の吸収率は上がる」でしょう。
結果はどのようになったと思いますか?
ホエイプロテインに消化酵素を併用した場合の血中アミノ酸濃度
実験では、被験者をホエイプロテインと2.5gの酵素を同時摂取するグループ、それにホエイプロテインと5gの酵素を同時摂取するグループの2群に分けました。
- ホエイプロテイン+酵素2.5g
- ホエイプロテイン+酵素5g
2つのグループとも、ホエイプロテインを摂取してから4時間後に血中アミノ酸濃度が最高値に達しています。ここまでは、ホエイプロテインのみを摂取した場合とまったく同じですね。
しかし、酵素を併用した場合、4時間後の血中アミノ酸濃度は爆発的に上昇していたのです。
覚えていますか?ホエイプロテインの単独摂取では、4時間後の血中アミノ酸濃度は30%上昇していましたよね。
酵素を2.5g同時摂取したグループは、その値が110%。そして、酵素5g同時摂取したグループは127%も血中アミノ酸濃度が上昇していました。
ここまでの結果をまとめておきましょう。
ホエイプロテインのみのグループ=+30%
ホエイプロテイン+酵素2.5gのグループ=+110%
ホエイプロテイン+酵素5.0gのグループ=+127%
ホエイプロテインだけのグループに比べ、ホエイプロテインに酵素5.0gを同時摂取したグループの血中アミノ酸濃度は、驚くべきことに4倍以上も多かったのです。
ちなみに、この論文の研究者らは、血中のBCAA濃度も測定しています。それによると、酵素5.0gを同時摂取したグループの血中BCAA濃度がもっとも高くなっています。
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まとめ
まず、摂取したホエイプロテインは、全て吸収されているということではないということ。
1時間に吸収できるタンパク質の量は、せいぜい10g程度ということです。
また、ご紹介した論文から言えることは、タンパク質の吸収率を上げるためには消化酵素を併用するのが肝要ということ。
ホエイプロテイン単独での摂取と比べて、4倍以上の吸収率となります。これは、大きな差です。せっかくのプロテインを無駄にしないためには、このような工夫が大切ですね。
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