セロトニンは『幸せホルモン』などと呼ばれ、私たちの気分(ムード)に大きな影響を及ぼしています。また、セロトニンは、睡眠と覚醒のリズム、身体の一日のリズムをコントロールしています。
従って、セロトニンが体内で欠乏すると気分が落ち込んだり、怒りっぽくなったり、不安症になったり、睡眠の質が落ちたり(または不眠)など様々な症状を引き起こします。
つまり、セロトニンと生活の質(人生の質)はとても強くリンクしています。
本記事ではセロトニンを増やす方法について、以下の3点から解説していきます。
- 食べ物
- 腸内環境
- 太陽光
- 運動
- 心
まずは、そもそもセロトニンとは何?というところから解説していきます。
セロトニンの働き
- 睡眠から覚醒へのシフト
- 心の安定感
- 自律神経のバランスを保つ
- 痛みの抑制
- 正しい姿勢
セロトニンとは?
セロトニンとは脳内神経伝達物質(脳内ホルモンとも呼ばれています)のことです。「脳内神経伝達物質?」となっている人が多いと思いますが、脳内神経伝達物質は喜怒哀楽などの感情表現に大きく関わっている物質です。
現段階で数十種類の神経伝達物質が発見されていますが、セロトニンはその内の一つです。セロトニンはモノアミン類に分類され、同じカテゴリーにはノルアドレナリン、ドーパミン、アセチルコリンなどがあります。
セロトニン
ノルアドレナリン
ドーパミン
アセチルコリン
特にモノアミン類は、私たちのマインド、つまり喜怒哀楽などの感情表現に多大な影響を与えていて、これらの神経伝達物質のバランスが崩れるとうつ病などの心の病気になります。
セロトニン欠乏のサイン
セロトニンが体内で欠乏すると、もっとも影響を受けるのがマインドです。悲しみ、うつ、ネガティブな思考などは典型的なセロトニン欠乏症のサインです。
また、慢性的な疲労感や倦怠感、イライラ感、緊張、甘い食べ物の過食(中毒)、意欲(モチベーション)の低下、頭痛などの症状が現れることもあります。
うつ症状
イライラ感
慢性疲労・倦怠感
緊張
甘食中毒
意欲低下
頭痛
不眠
食欲不振
ちなみに、甘食(糖質、特に単糖類)を食べるとセロトニンの生成・分泌が促されることがわかっています。
セロトニン不足により、甘い食べものが欲するようになるのは、無意識に「甘いものを食べることでセロトニン濃度を上げようとしている」のかもしれません。
セロトニンの前駆体
セロトニンはトリプトファンから合成されます。トリプトファンが体内で5HTP(ヒドロキシトリプトファン)に変換され、それがセロトニンになります。
セロトニンはその後、メラトニンへと変換されていきます。メラトニンは松果体で生成・分泌されるホルモンです。
メラトニンは概日リズム(サーカディアンリズム)を整える働きがあります。概日リズムとは体内時計のことであり、このリズムが崩れると生活習慣全体に悪影響を及ぼします(特に睡眠習慣の乱れ)。
メラトニンは夜になると次第に体内での生成・分泌量が増えていきます。しかし、セロトニンが少ないと変換されるメラトニンの量も必然的に少なくなってしまいます。
日中に体内でセロトニンを作っておかなければ、メラトニンの必要量が満たされず、寝つきが悪くなったり(不眠)、朝起きるのがつらくなったりします。
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L-トリプトファンは必須アミノ酸であり、食事から摂取する必要があります。L-トリプトファンは、前向きな気分、質の良い睡眠、および適切な免疫系機能のサポートを促進するセロトニンとメラトニンの生成に不可欠です。
トリプトファンの一つ手前の前駆体である5-HTPは、サプリメントとして摂取することも可能です。
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5-HTP (5-ヒドロキシル L-トリプトファン)はグリフォニア・シンプリシフォリアの種の抽出物です。5-HTPは、神経の接合部(シナプス)にある神経伝達物質であるセロトニンに変換されます。心を落ち着かせる効果があり、健全な精神と感情を維持し、健康的な睡眠を促進します。
セロトニンを増やす食べ物
体内のセロトニン分泌を増やす食べ物について解説していきます。ここでは、バナナ、牛乳、ナッツ類に焦点を当てて解説していきます。
バナナを食べて幸せに
バナナにはトリプトファンが含まれています。先ほども書きましたが、トリプトファンはセロトニンの前駆体(原料)です。
また、バナナにはビタミンB6や鉄分なども豊富に含まれており、これらの栄養素もセロトニンの生成・分泌にとても大切です。さらに、バナナに含まれている糖質(果糖)は、トリプトファンの吸収率を上げる働きがあります。
ここまでの説明でもお分かりのように、バナナはセロトニンブースターとして完璧な食べ物と言えます。セロトニンの欠乏症状でお悩みなら、まずはバナナを試してみることをおすすめします。
牛乳(ミルク)はトリプトファンが豊富な食べ物だけど・・・
牛乳にもトリプトファンが豊富に含まれています。しかし、問題は牛乳にはトリプトファン以外にもたくさんのアミノ酸が含まれていることです。
どうして問題かと言うと、トリプトファンがセロトニン(5HTPを介して)に変換され、その効果を発揮するためには、血液脳関門を通過する必要があります。
しかし、トリプトファン以外にアミノ酸があると、それらのアミノ酸と競合してしまいトリプトファンが血液脳関門を通過できなくなってしまいます。
これは、牛乳だけでなく他のアミノ酸が豊富な食べ物にも同じことが起こります。それでは、この問題を解決するためにはどうしたらようでしょうか?一つ良い方法があります。
それは、牛乳と一緒に炭水化物の豊富な食べ物も一緒に摂ることです。なぜなら、糖質(特にGI値の低い単糖類)を摂るとインスリンが大量に分泌されます。
インスリンは、トリプトファンが血液脳関門を通過するのを手伝ってくれるのです。それにより、トリプトファンは脳内に到達しセロトニンに変換されて効力を発揮することができます。
ナッツ類
カシューナッツやクルミなどのナッツ類にはセロトニンそのものが含まれていることが、最近の研究で明らかになっています。
しかし、このようにナッツ類から直接摂取したセロトニンは、先ほど説明した血液脳関門を通過することはできません。従って、脳内神経伝達物質としての効力を発揮できないことになります。
腸内環境
腸内細菌がセロトニンやドーパミンを生成・分泌しています。なので、腸内環境が悪化している場合、腸内細菌のバランスが崩れてしまい(悪玉菌が優位)、セロトニンの生成量が減ります。
ちなみに。腸内の悪玉菌は発がん性物質や有害物質を作り出して、腸内にある物質を腐敗させます。悪玉菌が増えると、便がとても臭くなります。
その際にビタミンB群が補酵素として使われます。つまり、セロトニンの生成のためには体内に十分な量のビタミンB群が必要です。ただ、ビタミンB群も腸内細菌が生成してくれます。
先ほども書きましたが、腸のセロトニンの90%は蠕動運動に使われます。従って、下痢や便秘で悩まされている人はセロトニン欠乏症の可能性があります。
また、腸内環境が悪化している場合、腸管の細胞から炎症性サイトカインが分泌されています(慢性炎症)。体内に炎症があると、トリプトファンからセロトニンが変換されなくなってしまいます。代わりに神経毒であるキノリン酸が代謝されてしまうことがわかっています。
腸内環境を整え、正常なセロトニン分泌を取り戻しましょう。
腸内細菌はセロトニンやビタミンB群以外にも、ステロイドホルモンやビオチン、ビタミンKなどを合成しています。
加齢と共にビフィズス菌が減少し、悪玉菌が増えてきます。悪玉菌は血中に入り全身をめぐり、身体の老化を進行させますので、普段から意識的にビフィズス菌を摂るようにしましょう。
腸内細菌の理想的な割合
- 善玉菌=20%
- 悪玉菌=10%
- 日和見菌=70%
太陽光を浴びる
太陽光を浴びるとセロトニン分泌が高まることがわかっています。太陽光が眼球を刺激することで、脳内のセロトニン合成が起こります。
だからと言って、太陽光を見つめる必要はありません(そんな人はいないと思いますが)。日なたにいるだけで大丈夫です。およそ、20分程度の日光浴で脳内セロトニン値は上昇してきます。
リズム運動がセロトニン分泌を促進
一定のテンポ・リズムで運動を行うと、セロトニンの分泌が促されます。リズム運動と言ってもダンスをする必要はありません。
散歩やジョギングなどはリズム運動ですし、ガムを噛むこともリズム運動になります。しかし、このとき注意することが一つあります。
それは、「動作を意識して行うこと」です。漫然と散歩をしていても、セロトニンの分泌には効果がありません。
散歩をするなら、一歩一歩の足の動きを意識して行うようにしてください。最初は面倒かもしれませんが、慣れてくるとそれが当たり前になってきます。
「朝日を浴びながら20分以上の散歩をする」ことが、最高のセロトニンブースターとなりますね。
心
セロトニンが少ないから心が不安定なのか、それとも心が不安定だからセロトニンが少ないのか…。
どちらが先かはわかりませんが、どちらも原因になり得ます。
ここまでは、セロトニンの分泌を促すことで、気分(ムード)を安定させる方法について解説してきましたが、心そのものを安定化させることも大切です。
それでは、心を安定化させ平常心を得るにはどうしたら良いでしょうか。
心に生じる不安や恐怖、怒りなどの感情は、外側からの刺激による反応です。外側からの刺激とは、眼や耳から入ってくる知覚情報のことです。
感覚器官に触れた情報は、すぐさま「判断が加えられ」、心が反応(これが不安や恐怖、怒りになります)します。
従って、平常心を保つためには、心の反応をなくすことが根本的な解決法になります。これは一筋縄ではいきません。
しかし、この反応を完全になくすことはできなくても、小さくすることは十分可能です。その方法が瞑想です。
最近の研究によると、瞑想により脳内のセロトニン合成が促されることがわかっています。
グーグルやアップルなどでは、社員らに瞑想を推奨しています(マインドフルネス瞑想と呼んでいます)。瞑想を取り入れることで、心の平静を保ち、物事をより客観的に観ることができるようになります。
興味のある方はぜひ挑戦してみてください。
まとめ
- 幸せホルモンであるセロトニンは、私たちの気分(ムード)に大きな影響を及ぼしている
- セロトニン欠乏のサインは、不安、恐怖、怒りなどの感情の不安定化
- セロトニンの前駆体はトリプトファンである
- バナナ、牛乳などトリプトファンを多く含む食べ物を摂ることでセロトニンが合成される
- 腸内環境の悪化はセロトニン合成を低下させ、腸の蠕動運動が不活発になる(便秘など)
- 「朝日を浴びながら20分以上の散歩」が最高のセロトニンブースター(太陽光とリズム運動)
- 瞑想は脳内のセロトニン合成を促進する
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