原因
上位交差性症候群では、上半身の前後筋肉のバランスに問題が生じています(下図)。
頚部屈筋群には、胸鎖乳突筋や斜角筋があります。また後頭下筋群には、上頭斜筋、下頭斜筋、大後頭直筋、小後頭直筋があります。
このような筋肉のバランスの問題により、脊柱のアライメントには以下の3つの問題が起こります。
- 胸椎の過剰後弯曲
- 頭部の前突
- 上腕骨頭の前方変位
それぞれについて、以下に具体的な症状を解説していきます。
症状
上位交差性症候群の症状は、以下の2点のアングルから解説していきます。
- 胸椎の過剰後弯曲
- 頭部の前突
- 上腕骨頭の前方変位
胸椎の過剰後弯曲
胸椎の過剰後弯曲とは、いわゆる猫背のことです。
猫背の時、肩甲骨は前傾+外転しています。肩甲骨の外転は菱形筋を伸張させるため、上背部のコリや痛みを引き起こします。
頭部の前突
また頭部の前突位も起こります。
頭部が前突位の時、頚椎では以下のような変位が起こっています。
- 上部頚椎の伸展
- 下部頚椎の屈曲
上部頚椎が伸展位で維持されることで、後頭下筋群の慢性的な拘縮が起こります。それに伴い、頭痛、頚部痛、めまい、耳鳴りなどの症状が引き起こされます。
また、下部頚椎の屈曲は上部僧帽筋や肩甲挙筋の過緊張を引き起こすため、肩こりの症状が現れます。
上腕骨頭の前方変位
上腕骨頭の前方変位によって、肩関節の運動障害が引き起こされます。代表的な問題はインピンジメント症候群です。
従って、肩関節の挙上に伴う痛みが現れます(ペインフルアーク)。
また、肩鎖関節の運動障害も併発することがあります。特に鎖骨遠位端の後方回旋への可動域制限が好発します。
インピンジメント症候群と肩鎖関節障害による疼痛可動域については、以下の図を参考にしてください。
- 上背部(左右肩甲骨の間)の痛みやコリ
- 頭痛
- 頚部痛
- めまい
- 耳鳴り
- 肩挙上に伴う痛み
メカニズム インピンジメント症候群では肩関節の運動障害が起こっています。 肩関節の挙上(外転、屈曲)では、上腕骨頭に上方回転と下方滑りという2つの運動が起こっています(下図)。 しかし、インピンジメント症候群では下方滑[…]
検査
姿勢検査
上位交差性症候群では、以下のようなアライメント異常が認められます。
- 胸椎の過剰後弯曲
- 肋骨の内旋
- 頭部の前突位(下部頚椎屈曲位、上部頚椎伸展位)
- 下顎の前方変位
触診検査
触診検査では以下の部位の圧痛の有無を確認します。
- 上背部(左右肩甲骨の間)
菱形筋、肩甲挙筋、上後鋸筋、肋間筋、胸椎椎間関節 - 後頚部
上部僧帽筋、頚板状筋、頭板状筋、後頭下筋群(上頭斜筋、下頭斜筋、大後頭直筋、小後頭直筋)、頚椎椎間関節 - 肩関節
関節包(前後)、上腕二頭筋長頭腱、ローテーターカフ(回旋腱板)、小胸筋、大胸筋、烏口肩峰靭帯
治療法
徒手療法
アジャスメント
胸椎と頚椎のアジャスメントを行います。上背部痛が現れているケースでは、肋骨のサブラクセーションが原因であることが多いので、必要に応じて肋骨のアジャスメントも行います。
また上腕骨頭の前方変位、鎖骨の後方回旋へのフィクセーションの有無を確かめ、もし必要ならこれらの部位もアジャスメントを行います。
筋膜リリース
触診検査において圧痛が確認された軟部組織を中心に筋膜リリースを行うと良いでしょう。上位交差性症候群では、以下の筋肉に問題が好発する傾向があります。
- 肩甲挙筋
- 上後鋸筋
- 斜角筋
- 後頭下筋群
- 小胸筋
ホームエクササイズ
特に拘縮(緊張)している筋肉のストレッチを行います。特に大筋群を中心にストレッチを行うと良いでしょう。
- 大胸筋
- 上部僧帽筋
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