小胸筋の解剖学と関連症状

 

解剖学(起始・停止・作用・神経支配)

起始;第3~5肋骨(前側)

停止;烏口突起

作用;肩甲骨の前傾、下制、下方回旋

神経支配;内・外側胸筋神経、C7/8

 

バイオメカニクス

肩甲骨には3つの運動軸があります(下図)。

  1. 下方回旋/上方回旋
  2. 内旋/外旋
  3. 前傾/後傾

これら全て肩鎖関節が運動軸となっています。

これらの中で特に小胸筋のバイオメカニクスと関係が深いのが、前傾/後傾です。

小胸筋が拘縮すると肩甲骨は前傾します。この時、肩甲骨下角が後方に突出していますが、これを翼状肩甲骨と言います。

肩甲骨の前傾と併発しているのが、胸椎の過剰後弯曲(猫背)です。このことについては、関連症状のセクションで解説してあります。

関連症状

小胸筋症候群

小胸筋の下側には腕神経叢と鎖骨下動静脈が走行しています(下図)。

小胸筋の拘縮により、これらの構造が絞扼され上肢の痺れや感覚鈍麻などの症状を引き起こします。これを小胸筋症候群と呼び、胸郭出口症候群の一つに分類されています。

  1. 斜角筋症候群
  2. 頚肋症候群
  3. 肋鎖症候群
  4. 小胸筋症候群

上位交差性症候群

小胸筋の過緊張(拘縮)により、肩甲骨は前傾位になります。

肩甲骨の前傾位は、胸椎の過剰後弯曲を引き起こします。いわゆる猫背のことです

これは上位交差性症候群と呼ばれています。

上位交差性症候群では、上図のような筋肉の不均衡が起こっており、これが脊柱の姿勢に問題を引き起こします。

脊柱の姿勢の問題には以下の通りです。

  1. 胸椎の過剰後弯曲
  2. 下部頚椎の過屈曲
  3. 上部頚椎の過伸展

上部頚椎の過伸展は後頭下筋群の拘縮を引き起こし、頭痛や首の痛み、めまい、耳鳴りなどの原因となります。

ちなみに、下部頚椎の過屈曲と上部頚椎の過伸展が起こっている時、頭部は前突位になっています。

関連動画

 

 

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