肋骨滑り症候群は、肋骨が通常の位置からずれてしまう状態(サブラクセーション)です。体幹部の急激な捻り動作や慢性的な姿勢の問題などが原因になります。
肋骨は背側で胸椎、腹側で胸骨と連結しています。従って、背側には肋椎関節と肋横突関節があり、腹側には胸肋関節と肋骨肋軟骨結合があります。
- 肋椎関節
- 肋横突関節
- 胸肋関節
- 肋骨肋軟骨結合
上の4つの関節の中で胸肋関節には可動性がありません。
本記事では、肋骨滑り症候群について解説してあります。
原因
肋骨滑り症候群は、肋骨肋軟骨結合においてサブラクセーションが発生しています。
スポーツや交通事故、転倒などにより、肋骨肋軟骨結合を補強している靭帯が損傷して発症することがあります。また、男性に比べ女性の発症率が高い傾向があります。
肋骨滑り症候群の好発部位は、第8肋骨から第10肋骨です。
その他の原因には以下のようなものがあります。
- 喘息
- 気管支炎
- 副鼻腔炎
- 靭帯の変性
症状
肋骨滑り症候群では、体幹部の捻り動作(寝返りなど)や咳やくしゃみなどに伴う痛みが特徴的です。痛みは鋭い局所痛であることが多いです。
また深呼吸でも痛みの増悪が認められ、痛みを避けるために呼吸が浅くなる傾向があります。
検査
肋骨滑り症候群の検査にはフッキングマヌーバー(Hooking maneuver)があります(下図)。
この検査法は、肋骨下縁に指をひっかけて後上方に牽引するやり方です。痛みの増悪が現れた場合、肋骨滑り症候群陽性となります。
鑑別診断
肋骨滑り症候群では第8肋骨から第10肋骨が好発部位となっているため、痛みはこれらの肋骨肋軟骨結合に局所的に現れます。
似たような部位に痛みが現れる症状には以下のようなものがあります。
- 胆嚢炎
- 肝臓疾患
- 食道炎
- 胃潰瘍
- 肋骨の骨折
- 虫垂炎
治療法
治療法にはアジャスメントと神経リリースの2通りがあります。
アジャスメント
肋骨滑り症候群の原因は肋骨肋軟骨結合のサブラクセーションです。従って、この部位のアジャスメントを行います。
また、必要なら同じレベルの肋横突関節、さらに胸椎のアジャスメントも行うようにします。
神経リリース
肋骨滑り症候群は肋間神経痛を伴っていることがあります。その場合、肋間神経のリリースを行うようにします。
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