回旋筋腱板(ローテーターカフ)は棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉で構成される筋群の総称です。
肩関節の安定性にとって非常に重要な役割を果たしており、これらの筋肉の機能低下は直接的に肩関節の不安定性を引き起こします。
腱板断裂は変性の進行が潜在的要因となっているケースが多く、そのため40代以上に多発します。
症状
痛みは肩関節の前上部に局在し、上肢の挙上に伴い鋭い痛みが現れます。また肩関節の不安定感や力が入りにくい感覚(筋力低下)を訴える場合もあります。
特に棘上筋腱の完全断裂では筋力低下は顕著となり、上肢の挙上そのものがほぼ不可能であることもあります。
原因
ローテーターカフ断裂の好発部位は棘上筋です。断裂部位は以下の2か所が考えられます。
- 停止部
- 筋腱部
これら2か所の内、筋腱部においてより断裂が生じやすい傾向があります。棘上筋の筋腱部はクリティカルゾーンと呼ばれており、この領域では急激に血液供給が減少しています(図1)。
図1 クリティカルゾーン
さらに、肩関節の動きに伴い上腕骨頭からの負荷(圧迫や摩擦)がかかりやすい領域でもあります。以上のことから、棘上筋の筋腱部が断裂の好発部位となっていると思われます。また、クリティカルゾーンは変性の好発部位にもなっています。
断裂は転倒時に手を付いた時など、急激に負荷がかかり損傷するケースがあります。しかし、変性の進行により靭帯がもろくなり断裂してしまうケースが多いです。
クリティカルゾーンは棘上筋の筋腱部にあり、血液供給が急激に減少(虚血)しているため、損傷や変性の好発部位となっています。
検査
棘上筋腱に損傷がある場合、エンプティカンテストにおいて陽性となります。また、肩甲下筋腱の場合、リフトオフテストで陽性となります。これらの検査ではいすれも筋力低下と痛みの増悪が陽性反応となります。
棘上筋腱の触診検査では、肩関節伸展位において肩鎖関節の直下に鋭い局所痛が触診されます(図2)。
図2
また肩甲下筋腱は、小結節内側(停止)および三角筋胸筋三角(肩関節中立位)において圧痛が触診されます(図3)。
図3
棘上筋の筋腱部は肩関節伸展位において、肩鎖関節の直下で触察が可能となります。
肩甲下筋の筋腱部は三角筋胸筋三角において触察可能です。
治療
部分断裂の場合、最初に他動的可動域の改善を行います。その後、自動的可動域の改善へと治療を進めていきます。
インピンジメント症候群が伴っている場合、肩鎖関節、さらに肩甲胸郭関節の運動障害を診るようにします。
肩鎖関節では、上肢挙上時における鎖骨遠位端の後方回旋が制限されていることが多く、肩甲胸郭関節では肩甲骨の不安定性が認められることが多いです。
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