葉酸はビタミンB9とも呼ばれていて、遺伝子の材料の一部になるとても大切な栄養素です。
葉酸は胎児の脳の形成に大きな影響を及ぼすので、特に妊娠中の女性(妊婦)は不足しないように注意しなければなりません。
また、赤血球の産生や聴覚の機能にとっても大切です。
本記事では、特に妊娠中の女性向けに葉酸の重要性、さらに摂り方などについて解説してあります。
葉酸とは
最初に葉酸がどのような働きをするのか、列挙してみます。
- DNAやRNAの合成
- 細胞の分裂と成長
- 脳の健康な発達
- 聴覚の機能
特に妊娠中の女性にとって葉酸はとても重要な栄養素です。
妊娠中に十分な葉酸がない場合、胎児の脳の発育に障害が生じることがあります(二分脊椎症や無脳症など)。
また、妊娠中だけでなく、妊娠する前も十分な葉酸が必要です。
そうすることで、胎児の奇形や流産のリスクを低くすることができます。
それでは、葉酸についてもう少し詳しく解説していきます。
葉酸は神経管欠損症のリスクを低減
妊娠初期に葉酸不足だと神経管欠損症になるリスクがあります。
神経管というのは、脳から伸びる脊髄が入るスペースであり、生まれた後は脊柱管と呼ばれる部分です。
従って、神経管欠損症になると中枢神経系(脳や脊髄)に障害が発生します (Cordero AM, 2015, http://bit.ly/2nWjzih)。
一方、妊娠中に十分な葉酸を摂っていた場合、これらの障害が発生するリスクは著しく低下します (Wilson RD, 2015, http://bit.ly/2o14bkU)。
癌(がん)の予防
葉酸を高用量で摂取することで、特定の癌(乳がん、すい臓がん、肺がんなど)の予防に効果がある可能性があります (Chen P, 2014, http://bit.ly/2mBjKiT)。
おそらく、これは葉酸が遺伝子の発現に影響を及ぼしているからかもしれません。
つまり、葉酸が不足することで遺伝子の異常が発現しやすくなると考えられます (Krista SC, 2012, http://bit.ly/2mxDK5X)。
また、葉酸不足はDNAの破壊を促すことも、癌の発症リスクを高めている原因かもしれません (Berger SH, 2008, http://bit.ly/2lQcfUO)。
しかし、葉酸は癌が発生リスクを低減させる働きはあるかもしれませんが、癌患者が葉酸を摂取すると癌細胞を増殖させる可能性があるので注意が必要です (Kim YI, 2004, http://bit.ly/2o6Nc0D)。
ホモシスチンレベルの低減
葉酸の摂取により体内のホモシスチン濃度が減少することがわかっています。
ホモシスチンは炎症を引き起こす物質であり、心臓病の原因になると言われています。
葉酸とホモシスチンが反応することで、体内でメチオニンが生成されます。
従って、葉酸が不十分な場合、体内のホモシスチン濃度が上がり、メチオニン濃度が下がることになります。
葉酸の多い食べ物
葉酸が豊富に含まれている食品は以下の通りです。
- 肝臓
- 枝豆
- ヒラ豆(レンズ豆)
- アスパラガス
- オクラ
- ほうれん草
- ブロッコリー
葉酸の1日必要量
葉酸を妊娠する前から妊娠中にかけて十分に摂っていた場合、子供が奇形や障害を持って生まれてくる割合が著しく低いことがわかっています (Wilson RD, 2015, http://bit.ly/2o14bkU)。
90%以上の女性は、葉酸の摂取量が不十分であると言われています。
これから妊娠を計画している、または妊娠中の女性は、1日最低でも400mcgの葉酸を摂る必要があります (Dietrich M, 2005, http://bit.ly/2lR3SZ8)。
妊娠する前から妊娠初期から中期(12週目)までは一日400mcgの葉酸を摂るようにしましょう。
なぜなら、妊娠12週目までに胎児の脊柱が形成されるからです(特に妊娠初期の3週目までは重要です)。
おすすめの葉酸サプリ
葉酸のサプリにはいろいろなものがありますが、その中でもメチル化された葉酸サプリ(メチルフォーレート)が特におすすめです。
なぜなら、メチルフォーレートは活性化された葉酸であり、摂取したらダイレクトに吸収・利用されるからです。
Solgar, Folic Acid, 400 mcg, 250 Tablets
葉酸の摂取は妊婦にとって重要です。また、心臓の健康のためにも大切な栄養素です。葉酸は赤血球の健康にも重要な役割を果たし、健康な神経系のサポートもします。
葉酸不足のサイン
腸内環境が悪化している場合(潰瘍性大腸炎やクローン病など)、喫煙者、お酒(アルコール)をよく飲む場合などは、葉酸が不足していることがあります。
葉酸が不足しているときに現れるサインは以下の通りです。
- ホモシスチンの血中濃度が上昇
- 巨赤芽球性貧血(巨赤芽球が産生される貧血)
- 慢性疲労
- 脱力感
- イライラ
- 浅い呼吸
葉酸の副作用
葉酸は水溶性のビタミンなので、過剰摂取yによる副作用の心配は余りありません。
しかし、特殊な状況(持病など)によっては副作用が現れる可能性もありますので、注意が必要です。
ビタミンB12の不足
巨赤芽球性貧血は葉酸欠乏症のサインでもありますが、ビタミンB12欠乏症のサインでもあります。
葉酸サプリによって貧血が改善するかもしれませんが、ビタミンB12の慢性的な欠乏により神経系障害が引き起こされる可能性があります。
癌細胞を増殖させる可能性
葉酸の摂取により癌細胞を増殖させる可能性があります。
特に癌患者が葉酸を摂取する場合は、注意が必要です。
免疫機能と脳機能の低下
葉酸を摂取してから活性化された状態に変換されるまでタイムラグがあります。
葉酸の血中濃度が上がることで、免疫機能や脳機能の低下が起こると言われているため、過剰摂取には注意してください。
ただし、活性型の葉酸サプリ(メチルフォーレート)であれば問題ありません。
まとめ
葉酸は遺伝子の材料となるとても重要な栄養素です。
よって、妊活中の女性、そして妊娠中の女性は、葉酸が不足しないように注意しなければなりません。
妊娠中に葉酸を十分に摂っていない場合、胎児の正常な発育に影響を及ぼします。
妊娠中の女性の場合、一日最低でも400mcgの葉酸摂取を推奨します。
また、お酒を頻繁に飲む習慣のある人、喫煙習慣のある人も葉酸が不足しがちです。
葉酸は体内において活性型葉酸であるメチルフォーレートに転換されます。
よって、おすすめの葉酸サプリは、メチル化された葉酸、メチルフォーレートです。
当然ながら、メチルフォーレートは、葉酸よりも体内での利用効率が高くなります。
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参考文献
- Cordero AM, Crider KS, Rogers LM, Cannon MJ, Berry RJ: Optimal serum and red blood cell folate concentrations in women of reproductive age for prevention of neural tube defects: World Health Organization guidelines. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2015 Apr 24;64(15):421-3 (http://bit.ly/2nWjzih).
- Wilson RD, Audibert F, Brock JA, Carroll J: Pre-conception Folic Acid and Multivitamin Supplementation for the Primary and Secondary Prevention of Neural Tube Defects and Other Folic Acid-Sensitive Congenital Anomalies. J Obstet Gynaecol Can. 2015 Jun;37(6):534-52 (http://bit.ly/2o14bkU).
- Chen P, Li C, Li X, Li J, Chu R, Wang H: Higher dietary folate intake reduces the breast cancer risk: a systematic review and meta-analysis. Br J Cancer. 2014 Apr 29;110(9):2327-38 (http://bit.ly/2mBjKiT).
- Krista SC, Thomas PY, Robert JB, Lynn BB: Folate and DNA Methylation: A Review of Molecular Mechanisms and the Evidence for Folate’s Role. Adv Nutr. 2012 Jan; 3(1): 21–38 (http://bit.ly/2mxDK5X).
- Berger SH, Pittman DL, Wyatt MD: Uracil in DNA: consequences for carcinogenesis and chemotherapy. Biochem Pharmacol. 2008 Sep 15;76(6):697-706 (http://bit.ly/2lQcfUO).
- Kim YI: Will mandatory folic acid fortification prevent or promote cancer? Am J Clin Nutr. 2004 Nov;80(5):1123-8 (http://bit.ly/2o6Nc0D).
- Dietrich M, Brown CJ, Block G: The effect of folate fortification of cereal-grain products on blood folate status, dietary folate intake, and dietary folate sources among adult non-supplement users in the United States. J Am Coll Nutr. 2005 Aug;24(4):266-74 (http://bit.ly/2lR3SZ8).