膝窩筋腱炎(Popliteus tendinitis)の原因、症状、検査法、治療法について

膝窩筋の起始は、大腿骨外側顆、腓骨頭、外側半月後角の3か所にあります。

これらの中で大腿骨外側顆の付着がもっとも強く、また外側半月後角に付着していないケースも多いです(Tria AJ, J Bone Joint Surg Am. 1989 Jun;71(5):714-6. http://bit.ly/2IZyyxx)。

膝窩筋腱は外側側副靭帯の下側を斜めに横切り、停止は脛骨後面のヒラメ筋線の上側(脛骨近位部の後面)にあります。

膝窩筋の機能は膝関節の屈曲と内旋です。この筋肉には筋紡錘が密に存在しており、脛骨が過剰に外旋するのを防ぎ、膝関節を安定化する役割を持っています。

膝窩筋の起始は①大腿骨外側顆、②外側半月、③腓骨頭の3か所にあります。腓骨頭への付着は膝窩筋腱から伸びる膝窩腓骨靭帯を介しています。

膝窩筋の起始
1.大腿骨外側顆
2.腓骨等
3.外側半月後角

症状

膝関節外側に鋭い局所的な痛みが現れます。痛みは荷重位における下肢の捻り動作や下り坂での歩行などで誘発されることが多いです。長時間の座位の後、立ち上げる瞬間に鋭い痛みを訴える場合もあります。

また、腱だけではなく筋腹にも違和感を訴えていることもあります。その場合の筋腹の痛みは、鈍痛もしくは不明確な痛みですが、触診による圧痛は鋭いことが多いです。

腸脛靭帯(ITB)症候群と症状が似ているため、誤診されることが多いのも特徴です。

関連記事

腸脛靭帯症候群は1975年にRennelによって初めて定義されました(Renne JW., 1975, http://bit.ly/2vhMxwo)。 反復傷害であり、膝の痛みとして最も多い原因と言われています。特にサッカ[…]

原因

  1. 下り坂での歩行やダッシュ
  2. 膝関節のひねり動作の反復
  3. 長時間の座位
  4. 内反膝
  5. 反張膝

膝窩筋腱炎は、下り坂でのダッシュ、荷重位での下肢の捻り動作などの膝関節の反復動作によって引き起こされることが多いです。下り坂でのランニングでは、大腿骨に前方滑りの力が加わるため、膝窩筋には大きな負荷がかかることになります(Michaud T., 2012, http://bit.ly/2yV12YY)。

また、長時間の座位(膝関節90°屈曲位)も膝窩筋の拘縮を引き起こすことがあるため、膝窩筋腱炎のリスク要因となります。

その他のリスク要因には、内反膝と反張膝があります。内反膝に股関節外転筋の機能低下が伴う場合、膝窩筋腱には大きな負荷がかかります。

また反張膝(ハムストリングや腓腹筋の機能低下が伴うことが多い)においても膝窩筋腱炎の損傷リスクが高くなります。

反張膝と脛骨顆の傾斜

通常、脛骨顆はやや後傾しているため、膝関には屈曲方向へ負荷が加わりやすくなっています(下図)。

一方、脛骨顆が平坦または前傾していることがあり、その場合反張膝となる傾向があります(図2B)。特に反張膝の場合、ランニングのミッドスタンスにおいて、膝窩筋には大きな負荷が加わります。

膝窩筋は膝関節が屈曲位から伸展方向へ動く際、大腿骨が(脛骨に対して)前方滑りを起こすのを防いでいます。

検査

膝窩筋の抵抗運動検査

  1. 患者は腹臥位になる
  2. 検査側の膝関節を30°屈曲位に維持する
  3. 検査者は患者の踵の外側を固定し母趾の内側に手を置く
  4. 患者に母趾内側に置いた手を足で押してもらう(アイソメトリック)

触診

最初に外側側副靭帯を見つけます。外側側副靭帯は大腿骨外側上顆から腓骨頭に縦に走行しているので、比較的容易に見つけることができます。

次に外側側副靭帯の下側を横切っている膝窩筋腱を触診します。膝窩筋腱は膝関節の後下部から前上部に向かって斜め方向に走行しています。

膝窩筋腱炎の好発部位は、外側側副靭帯の前後の領域です(下図)。その部位を特に念入りに触診し圧痛個所を特定していきます。

 

治療

膝窩筋腱のリリースを行います。膝窩筋腱の圧痛が強い場合、フリクションクロスによって痛みを軽減させてからリリースを行うようにします。また筋腹も同様にリリースすると良いでしょう。

膝窩筋の拘縮が強い場合、特に膝関節の外旋が制限される傾向があります。その場合、スクリューホームメカニズムが機能していない可能性があります。

膝関節伸展の最終可動域(150°~)の脛骨の外旋制限に対するマニピュレーションを行います。

おすすめの書籍

丁寧なビジュアライズで、運動器の構造・機能も、
骨折、変形性関節症など多彩な整形外科疾患も、この1冊だけでしっかりみえる!
運動器・整形外科テキストの新スタンダード!

◆2,000点以上のイラスト・図表・画像で、運動器の解剖・生理から病態まで、余すことなくビジュアル化!
◆検査、保存療法、手術療法などの重要ポイントもコンパクトに解説!
◆QRコードを使って、全身骨格、関節運動などの3D骨格コンテンツがスマホ上で動かせる!

医学生、看護師、PT・OT、柔道整復師などの医療従事者の方々はもちろん、スポーツ・トレーニング関係の皆さまにもおすすめしたい一冊です(アマゾンより)

関連動画

 

関連記事

膝窩筋の機能は膝関節の屈曲と内旋です。この筋肉には筋紡錘が密に存在しており、脛骨が過剰に外旋するのを防ぎ、膝関節を安定化する役割を持っています。

関連記事

解剖学(起始・停止・作用・神経支配) 起始;大腿骨外側上顆、腓骨頭、外側半月後角 停止;脛骨の後面(ヒラメ筋線の上側) 作用;膝関節の屈曲、内旋 神経支配;脛骨神経、L4-S1 膝窩筋の起始は、大腿骨外側顆、腓骨頭、外[…]

 

大腿脛骨関節では、主に屈曲と伸展の運動が生じます。また、屈曲・伸展に伴い、回旋(内旋・外旋)と内反・外反(内転・外転)の副次的運動(カップリングモーション)も生じています。

関連記事

膝関節は大腿骨、脛骨、膝蓋骨の3つの骨によって構成されており、大腿脛骨関節と膝蓋大腿関節の2つの関節があります。 大腿脛骨関節は大腿骨遠位部と脛骨近位部によって、また膝蓋大腿関節は膝蓋骨後面と大腿骨遠位部前面によって形成されています。[…]

スクリューホームメカニズム

 

腸脛靭帯症候群の主症状は膝関節外側の痛みです。初期段階では痛みの領域は不明瞭ですが、症状の進行に伴い鋭い局所痛へと変化していきます。

関連記事

腸脛靭帯症候群は1975年にRennelによって初めて定義されました(Renne JW., 1975, http://bit.ly/2vhMxwo)。 反復傷害であり、膝の痛みとして最も多い原因と言われています。特にサッカ[…]

 

 

【ボディビル歴33年】大学入学と同時にボディビルを開始。その後、現在までウエイトトレーニングを続けている。国内・海外でのボディビル大会での優勝・入賞歴多数。
【瞑想歴19年】33歳の時、インドに3か月滞在。1日12時間のヴィパッサナー瞑想を行う。それ以来、朝晩の瞑想は欠かしていない。
【カイロプラクティック歴22年】大学卒業と同時に渡米。カリフォルニア州のカイロプラクティック免許を取得しLAにて10年臨床経験を積む。オリンピック帯同経験あり。2007年に帰国。医学博士。

記事はいかがでしたか?

こちらには記事を読んでいただいた方にもっとも適した広告が表示されます。

最新情報をチェックしよう!