TFCCはTriangular Fibrocartilage Complexの頭文字を取って作られました。
- Triangular=三角
- Fibrocartilage=線維軟骨
- Complex=複合体
それぞれ上記のような意味を持ちますので、TFCCは日本語で三角線維軟骨複合体のことです。
本記事ではTFCC損傷の原因・症状・治療法について解説してあります。
解剖学
三角線維軟骨複合体(以下TFCC)は尺骨の茎状突起周辺にある構造の総称です。
TFCCは手関節(特に尺側)の安定性と可動性の一部を担っており、手首への衝撃を吸収する役割を持っています。
TFCCは以下の構造により構成されています(下図)。
- 三角線維軟骨
- 橈尺靭帯
- 内側側副靭帯
原因
TFCC損傷の原因には、傷害性のものと非傷害性のものがあります。
傷害性の原因には、手関節伸展位で手を付いて転倒、手首の急激な捻り動作などがあります。
また、非傷害性の原因にはTFCCの変性があります。変性は長期間(数年単位)に渡りTFCCに負荷を加え続けることが発症のメカニズムです。
リスク要因
+Ulnar varianceの場合、TFCC損傷のリスクが高くなります。
Ulnar varianceは以下の3つに分類されます。
- +Ulnar variance
- -Ulnar variance
- ±Ulnar variance
+Ulnar variance
尺骨遠位端が橈骨遠位端よりも長い状態を+Ulnar varianceと言います。
-Ulnar variance
尺骨遠位端が橈骨遠位端に比べ短い場合を-Ulnar varianceと言います。
±Ulnar variance
尺骨遠位端と橈骨遠位端の高さが同じ場合を±Ulnar varianceと言います。
症状
TFCC損傷の症状は、手首尺側の痛みや捻髪音です。
また、前腕の回内・回外や手首の尺屈によって手首尺側の痛みは増悪します。
検査法
触診検査
橈尺靭帯と内側側副靭帯の触診を行い、圧痛の有無を確認します。
整形外科的テスト
尺骨頭ストレステスト
- 手関節を尺屈位に維持し、前腕の回内、回外を行う
- 痛みの増悪が認められれば陽性
X線検査
X線検査でUlnar varianceを確認することができます。
鑑別診断
TFCC損傷の鑑別診断には以下のものがあります。
- 変性を伴う遠位橈尺関節のサブラクゼーション
- 尺骨手根骨インピンジメント
- 豆状骨手根骨関節炎
- 尺側手根伸筋腱のサブラクゼーション/腱炎
治療法
筋膜リリース
- 橈尺靭帯
- 内側側副靭帯
アジャスメント
- 遠位尺骨
- 豆状骨
整形外科関連のおすすめ書籍
丁寧なビジュアライズで、運動器の構造・機能も、
骨折、変形性関節症など多彩な整形外科疾患も、この1冊だけでしっかりみえる!
運動器・整形外科テキストの新スタンダード!
- 2,000点以上のイラスト・図表・画像で、運動器の解剖・生理から病態まで、余すことなくビジュアル化!
- 検査、保存療法、手術療法などの重要ポイントもコンパクトに解説!
- QRコードを使って、全身骨格、関節運動などの3D骨格コンテンツがスマホ上で動かせる!
医学生、看護師、PT・OT、柔道整復師などの医療従事者の方々はもちろん、スポーツ・トレーニング関係の皆さまにもおすすめしたい一冊です(アマゾンより)
関連動画
関連記事
尺側手根屈筋は前腕最大の筋肉であり、解剖学的に尺骨神経と密接な関わりを持っています。本記事では尺側手根屈筋の解剖学に加え、肘部管症候群や内側上顆炎についても解説してあります。
解剖学(起始・停止・作用・神経支配) 起始;内側上顆(上腕頭)、尺骨近位1/2(尺骨頭) 停止;豆状骨、有鈎骨、第5中手骨底 作用;手関節の屈曲 神経支配;尺骨神経、C8/T1 […]
尺骨神経はC8/T1脊髄神経から起こります。腕神経叢の内側神経束から分岐した後、尺骨神経となります。
走行 尺骨神経はC8/T1脊髄神経から起こります。腕神経叢の内側神経束から分岐した後、尺骨神経となります。 腋窩 尺骨神経は腋窩において、烏口腕筋の内側、腋窩動脈の外側を走行しています。 上腕 上腕の近位1/3では、烏口腕[…]
正中神経はC4-T1脊髄神経由来の神経です。腕神経叢の内側神経束と外側神経束が合流した後、上腕部で正中神経となります。その後、前腕部を下行し前骨間神経と正中神経掌枝に分岐します。前骨間神経は方形回内筋に終始しています。一方、正中神経掌枝は手掌部の皮枝となります。
走行 正中神経はC4-T1脊髄神経由来の神経です。 腕神経叢の内側神経束と外側神経束が合流した後、上腕部で正中神経となります。 その後、前腕部を下行し前骨間神経と正中神経掌枝に分岐します。 前骨間神経は方形回内筋に終始し[…]
外側上顆炎の主な症状は肘外側の痛みです。局所的な鋭い痛みが特徴であり、しばしば前腕外側の関連痛を引き起こします。また、握力の低下や手で物を掴んで持ち上げる動作の時に痛みの増悪を訴えるケースが多いです。
外側上顆炎は1873年にRungeによって初めて報告された症状ですが、『テニス肘』という言葉は1883年にMajorによって初めて使われました。 テニス肘とも呼ばれており、肘関節の痛みで最も多い症状です。患者の多くは30歳[…]