シンスプリント (Shin sprint)の原因、症状、検査法、治療法について

  • 2019年6月28日
  • 2019年8月16日
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シンスプリントは脛骨過労性骨膜炎(Medial tibial stress syndrome)とも呼ばれています。

「脛骨過労性骨膜炎」という疾患名は、1982年にMubarakによって命名されました。当時はアスリートに特有の骨膜炎と考えられていました (Mubarak SJ, 1982)。

それ以前は、下腿筋群の捻挫や断裂、または機械的負荷による骨膜炎、腱鞘炎、筋腹の炎症、また骨間膜炎と考えられていました (Slocum DB, 1967)。

症状

痛みは、脛骨後内側の遠位1/3付近に局在しています。初期段階では、運動開始と共に徐々に痛みが増悪し、運動の中止によりすぐに治まります。

また症状の進行と共に運動開始直後からでも痛みが現れるようになり、痛みが軽減するまで時間がかかるようになります。

原因

ランニングやジャンプなどの反復運動により、下腿部の筋肉には疲労が蓄積していきます。

それに伴い、筋肉の衝撃吸収能力の低下が起こり、代償的に骨への負荷が高まり骨膜炎が引き起こされます (Clement DB, 1974)。

骨膜炎による痛みにより、廃用性の筋委縮(または筋力低下)が進行します。このサイクルが繰り返されると、脛骨の疲労骨折のリスクが高まっていきます(図1)。

図1 過剰な負荷が脛骨の疲労骨折に至るメカニズム

シンスプリントの発症率は、男性に比べて女性が1.5倍から3.5倍ほど高い傾向があります (Dugan S, 2007; Brunet M, 1990)。

女性アスリートの三主徴(female athlete triad, FAT)にもある通り、女性は骨密度の低下(骨粗しょう症)が、シンスプリントの発症率を高めている可能性があります (Dugan S, 2007; Brunet M, 1990; Yates B, 2004)。

Michaelらの研究によると、シンスプリント患者のヒラメ筋の起始周辺において骨膜炎が認められています (Michael RH, 1985)。

また生検によっても、ヒラメ筋の起始に強い炎症反応が生じていたことがわかっています。このことから、下腿部への強い負荷(もしくは反復負荷)により、ヒラメ筋起始の剥離が生じていると考えられます。

このとき、骨膜も同時に剥離します。剥離した骨膜は、痛みに対して非常に敏感であり、これがシンスプリントの慢性的な痛みの原因になっていると考えられます。また剥離した骨膜の下層には、脂肪細胞の嵌入が認められています (Demer DE, 1986)。

シンスプリントは痛みの部位によって、下腿前外側痛と下腿後内側痛2つに分類されます。

前外側痛は、痛みの原因構造により筋肉・腱性、骨性、血管性の3つに分類され、後内側痛では、タイプⅠ、タイプⅡ、タイプⅢの3つに分類されます。

タイプⅠは脛骨に局所的な負荷がかかることによって発生し、脛骨の疲労骨折のことになります。

タイプⅡは骨膜炎、タイプⅢは深後部コンパートメント症候群です。シンスプリント(または脛骨過労性骨膜炎)はタイプⅡに該当します。

運動(反復動作)による下腿部痛の原因

ランニングフォームの問題不適切なシューズ足の形状とバイオメカニクス下肢の構造的疾患筋肉の過緊張や不均衡肥満不十分なウォームアップ不適切な運動フォーム地面の形状食事

検査

触診検査

後脛骨筋、長母趾屈筋、ヒラメ筋の起始を触診し、圧痛の有無を確認します。鋭い圧痛が触診されます。

運動検査

足関節底屈の自動的運動、抵抗運動(長母趾屈筋の場合、母趾の底屈も加える)で痛みの増悪が認められることがあります。また、足関節背屈の他動的運動によっても(長母趾屈筋の場合は、母趾の背屈も加える)、痛みの増悪が起こることがあります。

画像検査

治療後の症状改善が思わしくない場合、画像検査の実施を考慮する必要があります(通常、シンスプリントの診断に画像検査は必要ありません)。

しかし、発症から2~3週間内は、レントゲン検査はネガティブとなります (Mellion M, 2002)。症状が慢性化している場合、骨膜性外骨腫(periosteal exostoses)が認められる場合があります。

軟部組織の傷害には、MRIによる画像検査が適しています。症状の進行度合い、骨膜や骨髄の状態などの詳細を知ることができます。

またMRI所見により、シンスプリントの症状を段階分けすることが可能です(表1)(Fredericson M, 1995)。

グレード 所見
1 骨膜の腫脹(骨膜炎)
2-3 骨膜・骨髄の腫脹
4 疲労骨折

表1  MRI所見による分類

 

鑑別診断

シンスプリントとしばしば併発するのが、脛骨の疲労骨折です。脛骨の疲労骨折は、脛骨前部の局所痛が特徴的な症状です (Dugan S, 2007; Stanitski C, 1978)。

また、コンパートメント症候群はシンスプリントと症状が似ており、誤診されやすいので注意が必要です。

運動に伴い下腿部の痛みが増悪し、さらに知覚や運動障害が伴う場合、コンパートメント症候群の可能性があります。また、糖尿病も下腿部から足にかけての痛みや感覚鈍麻が起こります。

上記以外には、下腿部筋肉の肉離れ(断裂)、筋筋膜性疼痛症候群、感染症、腫瘍、静脈瘤、腓骨神経絞扼症候群、膝窩動脈絞扼症候群などがあります。

シンスプリントの鑑別診断

疲労骨折
コンパートメント症候群
糖尿病
肉離れ
筋筋膜性疼痛症候群
感染症
腫瘍
静脈瘤
腓骨神経絞扼症候群
膝窩動脈絞扼症候群

治療

軟部組織

シンスプリントの痛みの原因となる筋肉には、後脛骨筋、長母趾屈筋、ヒラメ筋があります。

これらの筋肉の起始は、全て脛骨後面にあります(図1)。シンスプリントでは、これらの筋肉に急激(もしくは反復)な伸縮によって、骨膜炎や筋膜炎が生じています。

また、症状の慢性化に伴い筋膜の線維化が起こります。従って、治療では筋膜リリースにより線維化の改善を狙います。

図1 ヒラメ筋、後脛骨筋、長母趾屈筋の起始(下腿後面)

 

関節

シンスプリントの患者にしばしば認められる関節の運動障害には、足関節の過剰回内があります。

足関節の過剰回内では、主に踵骨の内反、舟状骨の下制、第1中足骨の伸展が生じています。

従って、距骨下関節、横足根関節(距舟関節)、第1MP関節のアジャスメントにより各関節の機能が改善され、症状の軽減が期待されます。

インソール(またはテーピング)

インソールまたはテーピングにより踵骨の内反、足関節の過剰回内を補正することで、足底アーチ(内側縦足弓)を改善させることが可能です。

それに伴い、後脛骨筋や長母趾屈筋への負荷が軽減し、症状の改善が期待されます。

固有受容器

固有受容器のトレーニングにより、神経筋機能の再教育を促します。バランスボード(またはパッド)やバランスボールなどを使ったトレーニングにより、関節周辺の筋肉(腱)や靭帯、関節包にある固有受容器を刺激し機能の改善が可能です。

参考文献

  1. Mubarak SJ, Gould RN, Lee YF et al, The medial tibial stress syndrome: a cause of shin splints. Am J Sports Med, 1982;10:201 (http://bit.ly/2PGcLz6).
  2. Slocum DB, The shin splint syndrome: medial aspects and different diagnosis. Am J Surg, 1967; 114:875 (http://bit.ly/2V9wcX8).
  3. Dugan S, Weber K. Stress fracture and rehabilitation. Phys Med Rehabil Clin N Am. 2007;18(3):401–16 (http://bit.ly/2VVdjGS).
  4. Brunet M, Cook S, Brinker M, Dickson J. A survey of running injuries in 1505 competitive and recreational runners. J Sports Med Phys Fitness. 1990;30(3):307–15 (http://bit.ly/2vHm6xE).
  5. Yates B, White S. The incidence and risk factors in the development of medial tibial stress syndrome among naval recruits. Am J Sports Med. 2004;32(3):772–80 (http://bit.ly/2H9XvH5).
  6. Clement DB, Tibial stress syndrome in athletes. J Sports Med, 1974,;2:81 (http://bit.ly/2JccnHw).
  7. Demer DE, Chronic shin splints: classification and management of medial tibial stress syndrome. Sports Med, 1986;3:436 (http://bit.ly/300okG6).
  8. Mellion M, Walsh W, Madden C, Putukian M, Shelton G. The team physician’s handbook. 3rd ed. Philadelphia, PA: Hanley & Belfus; 2002. p. 517, 583 (https://amzn.to/2VjUWfv).
  9. Fredericson M, Bergman G, Hoffman K, Dillingham M. Tibial stress reaction in runners: correlation of clinical symptoms and scintigraphy with a new magnetic resonance imaging grading system. Am J Sports Med. 1995;23:427–81 (http://bit.ly/2LBwTUS).
  10. Stanitski C, McMaster J, Scranton P. On the nature of stress fractures. Am J Sports Med. 1978;6(6):391–6 (http://bit.ly/2vRnygJ).
  11. Michael RH, Holder LE, The soleus syndrome: a cause of medial tibial stress (shin splints). Am J Sports Med, 1985;13:87 (http://bit.ly/2JdIWVF).

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【カイロプラクティック歴22年】大学卒業と同時に渡米。カリフォルニア州のカイロプラクティック免許を取得しLAにて10年臨床経験を積む。オリンピック帯同経験あり。2007年に帰国。プロフィール詳細はこちら

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