腸脛靭帯症候群(Iliotibial band syndrome)の原因、症状、検査法、治療法について

腸脛靭帯症候群は1975年にRennelによって初めて定義されました(Renne JW., 1975, http://bit.ly/2vhMxwo)。

反復傷害であり、膝の痛みとして最も多い原因と言われています。特にサッカーやバスケットボールの選手、ランナーなどに好発します。

腸脛靭帯は腸骨稜を起始に持ち、大腿筋膜張筋と大殿筋に癒合しています(大殿筋との癒合の方が強力です)。停止はGerdy結節(脛骨の前外側)、腓骨頭、外側広筋、大腿骨外側上顆、外側膝蓋支帯、膝蓋骨、膝蓋靭帯にあります。

腸脛靭帯の停止
Gerdy結節
大腿骨外側上顆
腓骨頭
膝蓋骨
外側広筋
外側膝蓋支帯
膝蓋靭帯

症状

主症状は膝関節外側の痛みです(下図)。初期段階では痛みの領域は不明瞭ですが、症状の進行に伴い鋭い局所痛へと変化していきます。

下り坂での歩行やランニングで膝外側の鋭い痛みを訴えるケースは非常に多いです。また長時間の座位から立ち上がる瞬間に痛みが現れることもあります。

膝外側痛の鑑別診断
腸脛靭帯症候群
大腿二頭筋腱炎
外側側副靭帯損傷
外側半月板損傷
膝窩筋腱炎
膝蓋大腿関節痛
腓骨頭のサブラクセーション

原因

膝関節が30°屈曲位の時、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆は重なります。従って、膝関節が30°屈曲位を通過するたびに腸脛靭帯と大腿骨外側上顆の間で摩擦が生じます。

摩擦頻度が過剰になったり(マラソンや登山など)、摩擦負荷が増大した場合に腸脛靭帯症候群の発症リスクが高くなります。

これまでは摩擦により腸脛靭帯に炎症が生じることで膝外側の痛みになると考えられていましたが、最近は腸脛靭帯の直下にある脂肪体の炎症が痛みの原因と考えられています(図1)。この脂肪体にはパチーニ小体(圧変化、振動)が密に存在しています。

図1 右膝前面図

 

股関節外転筋の機能低下

股関節外転筋の機能低下により、股関節は内転位に保持されるようになります。それに伴い腸脛靭帯が伸張され直下にある脂肪体への圧迫が増加します。この傾向は荷重位(スタンスフェーズ)においてより顕著になります。

腸脛靭帯の過緊張

腸脛靭帯の過緊張も、脂肪体への圧迫が増加します(腸脛靭帯の硬さの検査にOber’sテストがあります。検査の項参照)。

長時間の同じ姿勢(座位や立位)、同じ動作の反復(ランニングなど)により腸脛靭帯は拘縮します。また、疲労の蓄積も同様です。

踵骨の外反変位

踵骨の外反に伴い脛骨と大腿骨は内旋します(膝関節のQアングルは増加)。大腿骨の内旋には内転が伴うため、腸脛靭帯は伸長されます。

 

検査

腸脛靭帯症候群の代表的な整形外科的テストには、Noble圧迫テストとOber’sテストがあります(表2)。

検査名 方法 陽性反応
Noble圧迫テスト 仰臥位において膝関節を30°屈曲位にする大腿骨外側上顆を圧迫 大腿骨外側上顆の鋭い圧痛
Ober’sテスト 側臥位(検査側を上)において上側下肢を保持し、股関節をやや伸展位にするもう一方の手で骨盤を固定し、下肢をテーブルに向かって下ろす 足がテーブルまで下りなかった場合

表2 腸脛靭帯症候群の整形外科的テスト

 

Noble圧迫テストにおいて膝関節を30°屈曲位にするのは、この角度で腸脛靭帯と大腿骨外側上顆が重なるからです。

またOber’sテストが陽性の場合は「腸脛靭帯の硬さ」のみを示唆しており、必ずしも腸脛靭帯症候群というわけではありません。

 触診では大腿骨外側上顆周辺だけではなく、腸脛靭帯の停止まで診るようにします。Gerdy結節周辺の圧痛もしばしば触診されます。

治療

腸脛靭帯の筋膜リリースは治療法の一つです。また腸脛靭帯は近位部において大殿筋、大腿筋膜張筋と癒合しているので、これらの筋肉周辺の筋膜リリースも有効です。

また股関節外転筋(特に中殿筋)の機能低下が腸脛靭帯症候群の原因の一つとも言われています。

よって、中殿筋の機能改善も有効な方法の一つです。Fredericsonsは股関節外転の筋力強化により、腸脛靭帯症候群の症状が劇的に改善したと報告しています(Fredericson M, 2000, http://bit.ly/2Kpv74C)。

中殿筋の機能改善エクササイズ

  1. 側臥位になり下側下肢は体幹と揃えて真っすぐにする
  2. 上側下肢の膝を屈曲させ足を反対側下肢の膝窩に置く
  3. 上側下肢の膝を自動的に挙上する

ホームエクササイズとして、腰方形筋、大腿筋膜張筋、中殿筋、腸脛靭帯のストレッチが推奨されます。これらの筋群のストレッチ法は、以下の通りです(以下は右側のストレッチ法)。

  1. 立位で右手を壁に置く
  2. 左下肢が前側になるように両下肢を交差
  3. 右側に重心を移動させ体幹部で屈曲させる
  4. 上記の状態で30秒から1分程度保持する

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【ボディビル歴33年】大学入学と同時にボディビルを開始。その後、現在までウエイトトレーニングを続けている。国内・海外でのボディビル大会での優勝・入賞歴多数。
【瞑想歴19年】33歳の時、インドに3か月滞在。1日12時間のヴィパッサナー瞑想を行う。それ以来、朝晩の瞑想は欠かしていない。
【カイロプラクティック歴22年】大学卒業と同時に渡米。カリフォルニア州のカイロプラクティック免許を取得しLAにて10年臨床経験を積む。オリンピック帯同経験あり。2007年に帰国。プロフィール詳細はこちら

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