メカニズム
インピンジメント症候群では肩関節の運動障害が起こっています。
肩関節の挙上(外転、屈曲)では、上腕骨頭に上方回転と下方滑りという2つの運動が起こっています(下図)。
しかし、インピンジメント症候群では下方滑りに対して上方回転がより大きな割合で起こっています。そのため、肩の挙上に伴い上腕骨頭の上方変位が生じます。
肩挙上に伴う過剰な上腕骨頭の上方変位は、烏口肩峰下スペースの狭窄を引き起こします。
インピンジメント症候群では、上腕骨の大結節が肩峰や烏口肩峰靱帯と間接的に衝突(インピンジメント)しています。
その際、棘上筋腱や上腕二頭筋長頭腱が挟み込まれることで、これらの軟部組織に炎症が起こっています。
原因
インピンジメント症候群の原因にはいくつか考えられますが、ここでは代表的な原因について解説してあります。
ローテーターカフの機能低下
ローテーターカフ(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)は、肩関節を安定化させる重要な機能を担っています。
従って、ローテーターカフの機能低下は直接的に肩関節の不安定性を引き起こします。そして、肩関節の不安定性はインピンジメント症候群のリスクを高めます。
固有受容感覚の異常
固有受容器は関節の位置覚(ポジションセンス)をコントロールしています。
固有受容器が正常に機能していなければ、関節は正確なポジションを把握することができず不安定性が生じることになります。
肩関節周辺にある靭帯、腱(ローテーターカフ)、関節包には固有受容器が密に発達しています。
従って、これらの構造に何らかの問題(損傷や癒着)が生じれば、肩関節の不安定性が増悪し、それがインピンジメント症候群を引き起こすことになります。
症状
インピンジメント症候群では、肩の痛みと可動域制限が特徴的な症状になります。
肩の痛み
インピンジメント症候群の肩の痛みは、肩前部から上部にかけて現れます。肩前部の痛みの原因構造には以下のようなものがあります。
- 棘上筋腱
- 上腕二頭筋長頭腱
- 関節包前部
- 肩峰下包
特に棘上筋腱と上腕二頭筋長頭腱は好発部位となっています。
関節包前部は拘縮していることがあります。それにより、上腕骨頭は前方に変位します。
また、肩峰下包の炎症(肩峰下包炎)は、針で刺したようなチクチクした痛みが特徴です。
肩の可動域制限
肩の可動域制限は、動作痛による影響が大きいです。
インピンジメント症候群の動作痛には特徴があります。それはペインフルアークと呼ばれています(下図)。
肩の外転60°から120°で痛みが発生するとペインフルアーク陽性となります。一方、0°から60°、120°から180°では無痛領域となります。
これが、インピンジメント症候群の動作痛の特徴です。
治療法
インピンジメント症候群の治療法には、徒手療法とエクササイズがあります。
徒手療法
徒手療法ではアジャスメントと軟部組織のリリースにフォーカスします。
- アジャスメント
- 軟部組織のリリース
アジャスメント
インピンジメント症候群の改善に特に大切なのが、肩関節と脊椎のアジャスメントです。
そして肩関節では、上腕骨頭と鎖骨(肩鎖関節)のアジャスメントが特に重要です。
また、脊椎では胸椎にフォーカスします。インピンジメント症候群の患者の胸椎は、過剰後弯曲している場合が多いです。
ホームエクササイズ
ホームエクササイズではストレッチを行うと良いでしょう。
- 大胸筋
- 関節包
大胸筋のストレッチ
大胸筋をストレッチすることで、胸椎過剰後弯曲(猫背)を改善させることができます。
関節包のストレッチ
インピンジメント症候群の患者では、特に関節包前部に拘縮が起こっています。従って、この部位のストレッチを行うようにしましょう。
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