第1肋骨症候群は、第1肋骨が通常の位置からずれてしまう状態(サブラクセーション)です。
第1肋骨は背側で胸椎、腹側で胸骨と連結しています。従って、背側には肋椎関節と肋横突関節があり、腹側には胸肋関節と肋骨肋軟骨結合があります。
- 肋椎関節
- 肋横突関節
- 胸肋関節
- 肋骨肋軟骨結合
上の4つの関節の中で胸肋関節には可動性がありません。
本記事では、第1肋骨症候群について解説してあります。
原因
第1肋骨症候群では、肋骨肋軟骨結合においてサブラクセーションが発生しています。
発症のメカニズムにはいくつかあります。
むち打ちやうつぶせ寝が、第1肋骨症候群の引き金になることがあります。また、テニスやバレーボールのサーブなどのオーバーヘッドモーションも原因になります。
さらに、上部僧帽筋の拘縮がこの症候群に大きく影響していることもわかっています。特に上位交差性症候群の患者に多く認められます。
- 上位交差性症候群の患者に見られる
- 上部僧帽筋の拘縮が大きく影響
- 寝ている時の姿勢(うつぶせ寝)
- むち打ち症に併発
- オーバーヘッドモーション(テニスやバレーボールのサーブ)
症状
第1肋骨症候群では、肋横突関節にサブラクセーションが発生しています。
従って、この関節の関節包には部分的に拘縮が起こっており、それが痛みとして自覚されるようになります。肋横突関節の痛みは、鋭い局所痛になります。
また頭頚部の運動に伴う痛み(動作痛)や頭頚部そのものの痛み頻繁に認められる症状です。
第1肋骨症候群では上位交差性症候群が併発していることが多いため、それによる頭痛や頚部痛、上・中背部痛、さらに上部僧帽筋の拘縮による極度のコリなども現れます。
第1肋骨のサブラクセーションにより影響を受ける構造
第1肋骨の肋横突関節と肋椎関節の近隣には、以下の構造が走行しています。
- 交感神経節
- T1神経前枝
- 腕神経叢の下神経幹
- 第1肋間神経
- 鎖骨下動脈
従って、第1肋骨のサブラクセーションは、これらの構造に対し機械的負荷を与え炎症を引き起こし頭頚部から上肢にかけての症状を引き起こします。
また、第1肋骨のサブラクセーションは、胸郭出口症候群(肋鎖症候群)やRSD(Reflex sympathetic dystrophy;反射性交感神経性ジストロフィー)の原因にもなり得ます。
- 肋横突関節痛
- 呼吸に伴う痛み
- 頚椎の運動に伴う痛み
- 上部僧帽筋、前斜角筋の圧痛
- 上部僧帽筋の拘縮
- 頚部痛
- 頭痛
- 肩痛
- 上肢痛
- 顎関節痛
- 上・中背部痛
- 胸部痛
検査
触診
関節
肋横突関節の上部に鋭い圧痛が触診されます。また、稀に胸肋関節にも圧痛が触診されることがあります。
筋肉
以下の筋肉に圧痛が触診されることがあります。
- 前斜角筋
- 胸鎖乳突筋
- 棘下筋
- 上部僧帽筋
モーションパルペーション
- ポンプハンドル
示指を第1肋骨と第2肋骨の間に置き、患者に深呼吸をしてもらう - バケツハンドル
示指を胸骨から5㎝外側に置き、患者に深呼吸をしてもらう
整形外科的テスト
スプリングテスト
- 頚部の屈曲+回旋(反対側)+側屈
- 第1肋骨に接触し下方へ圧迫
- 抵抗感を触診
治療法
治療法にはアジャスメントと神経リリースの2通りがあります。
アジャスメント
第1肋骨フィクセーション症候群の原因は、第1肋横突靭帯のサブラクセーションです。従って、この部位のアジャスメントを行います。
また、必要なら同じレベルの胸肋関節、さらに頚椎・胸椎のアジャスメントも行うようにします。
筋膜リリース
以下の筋肉の触診を行い、癒着が確認されたらリリースを行います。
- 前斜角筋
- 胸鎖乳突筋
- 棘下筋
- 上部僧帽筋
関連症状
胸郭出口症候群
胸郭出口症候群は腕神経叢や鎖骨下動静脈の絞扼症候群です。頚部から肩にかけての領域で絞扼されることで、上肢の痛みや痺れ、感覚鈍麻などの症状を引き起こします。
胸郭出口症候群には以下の4種類があります。
- 斜角筋症候群
- 頚肋症候群
- 肋鎖症候群
- 小胸筋症候群
第1肋骨フィクセーション症候群と関連性が強いのは肋鎖症候群です。
肋鎖症候群では腕神経叢や鎖骨下動静脈が、鎖骨と第1肋骨の間(肋鎖)で絞扼されることが原因となります。
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上位交差性症候群
上位交差性症候群では、上半身の前後筋肉のバランスに問題が生じています。
このような筋肉のバランスの問題により、脊柱のアライメントには以下の3つの問題が起こります。
- 胸椎の過剰後弯曲
- 頭部の前突
- 上腕骨頭の前方変位
これらの症状に伴い上部僧帽筋の拘縮が起こり、第1肋骨フィクセーション症候群が誘発されます。
原因 上位交差性症候群では、上半身の前後筋肉のバランスに問題が生じています(下図)。 頚部屈筋群には、胸鎖乳突筋や斜角筋があります。また後頭下筋群には、上頭斜筋、下頭斜筋、大後頭直筋、小後[…]
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