胸郭痛の鑑別診断

胸郭は胸椎、肋骨、胸骨によって構成されています(下図)。肋骨は胸椎と胸骨を連結しており、胸郭の外郭を形成しています。

胸郭には2つの役割があります。

1つは心臓や肺、肝臓などの臓器の保護です。

もう一つは呼吸です。胸郭は呼吸に伴い、拡張と収縮を繰り返しています。従って、胸郭の運動に問題があると、呼吸障害が起こります。

胸郭痛には様々な原因が考えられます。本記事では主に以下の6つの胸郭痛の原因について解説してあります。

  1. 肋骨
  2. 神経
  3. 筋肉
  4. 下部頚椎
  5. 肩関節
  6. 横隔膜
  7. 内臓からの関連痛

肋骨

肋骨は背側で胸椎、腹側で胸骨と連結しています。背側には肋横突関節と肋椎関節、腹側には胸肋関節、肋骨肋軟骨結合があります(下図)。

 

 

背側と腹側で各々2つずつ関節がありますが、これらの中で胸肋関節だけが可動性を持っていません。

他の3つの関節には可動性があり、運動障害が発生します。

症状

特に肋横突関節と肋骨肋軟骨結合は障害の好発部位です。

これらの関節(結合)においてフィクセーションが起こると、局所的な鋭い痛みが現れます。

痛みは体幹の動作(回旋、側屈、屈曲、伸展)により増悪します。

 

神経

胸郭痛の原因となり得る神経には、肋間神経と肩甲背神経があります。肋間神経は文字通り肋骨の間を走行している神経です。

また、肩甲背神経はC5頚神経から分岐した後、肩甲骨内側を下行し菱形筋に終止しています。

肋間神経

肋間神経は背側、外側、腹側で分岐があり、それぞれ筋膜孔を通過した後、皮下に出ます。筋膜孔において肋間神経は絞扼されることがあります(下図)。

肩甲背神経

一方、肩甲背神経はC5頚神経から分岐した後、前斜角筋と中斜角筋の間、肩甲挙筋の深層を走行しています。その後、菱形筋に向かって下行しています(下図)。

 

 

筋肉

胸郭痛の原因となる筋肉には肋間筋があります。肋間筋は浅層から深層に向かって、外肋間筋、内肋間筋、最内肋間筋の三層構造となっています。肋間筋起因の胸郭痛は、鋭い局所痛となります。

 

下部頚椎

下部頚椎の椎間関節の関連痛領域は、上背部にあります。下部頚椎は姿勢による影響を受けやすい部位です。

上位交差性症候群では、頚部前後の筋肉バランスの不均衡により頭部が前突位に変位します。それに伴い、下部頚椎は屈曲位になっています。

 

 

肩関節

肩には肩甲上腕関節、肩鎖関節、胸鎖関節、肩甲胸郭関節がありますが、これらの関節の中でもっとも胸郭痛の原因となるのが、肩甲胸郭関節です。

肩甲胸郭関節は肩甲骨と胸郭の間にできる生理学的関節です。肩甲骨の運動は、周辺筋群からの影響を直接的に受けます。

肩甲胸郭関節の運動障害によって引き起こされる症状に、肩甲骨轢音症があります。肩甲骨轢音症では、肩を動かした時、肩甲骨と胸郭(肋骨)が衝突(インピンジメント)しています。

その際、肩甲骨と胸郭の間にある滑液包が圧迫されることで痛みやクレピタス(音)が発生します。肩甲骨周辺の滑液包は、上角から下角にかけての内側縁にあります(下図)。

 

 

横隔膜

横隔膜は呼吸筋の一つであり、胸郭の運動に直接的な影響を及ぼしています。従って、横隔膜の機能障害は、呼吸に伴う胸郭の運動障害を引き起こし、胸郭の痛みの原因になります。

 

 

横隔膜は前側の胸郭下縁から触診することが可能です。横隔膜の触診では、圧痛と硬結を探してみてください。

横隔膜の関連痛領域

横隔膜の関連痛領域は首の周囲とわき腹にあります(図参照)。

 

呼気において症状は増悪することが多いです(吸気で症状増悪する場合もあります)。

症状

横隔膜に由来する症状には、上記で解説したわき腹の関連痛以外に以下の2つがあります。

  1. 運動中のわき腹の痛み
  2. 呼吸障害

運動中のわき腹の痛みは、関連痛とは異なり深部の鋭い痛みです(関連痛は表面的な痛み)。

また、呼吸障害の代表は過呼吸です。過呼吸は自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスに問題がある時に現れます。ストレスなども原因になります。

内臓

内臓疾患により胸郭痛が現れることがあります(下図参照)。

 

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