猫背というのは、背骨の胸椎といわれる部分が大きく後に丸くなった状態です。
背骨には胸椎以外に頸椎、腰椎、仙骨(+尾骨)があり、横から見ると前後に弯曲しています(下図)。
正常な人でも胸椎は後ろに弯曲(後弯曲)していますが、猫背の人の場合、胸椎の後弯曲が過剰になってしまっています(胸椎の過剰後弯曲)。
従って、猫背を治すには、胸椎の過剰後弯曲を治す必要があります。具体的な改善法(治し方)にはついては、こちらの記事で解説してありますのでご一読いただければと思います。
本記事では、「猫背の原因」と猫背を放置した場合に起こるリスク「猫背による影響」について解説してあります。
それでは、最初に猫背の原因からお話していきましょう。
猫背の原因
猫背の原因には、大きく分けて以下の3つがあります。
- 遺伝
- 生活習慣
- 側弯症
- 性格(精神状態)
これら4つの中で私たちがコントロールできるものは、2番目の生活習慣と4番目の性格(精神状態)になります。
側弯症は年齢にもよりますが、何とかなることもあります(多くの側弯症は完全にまっすぐな脊椎に戻らないことが多い)。
従って、猫背の改善のためには生活習慣を変えることがもっとも効果的です。
それでは、異常3つの原因について解説していきます。
遺伝
猫背の遺伝への影響は無視できません。これは、残念ながら避けられないことです。
しかし、両親が猫背だからと言って、100%自分も猫背になるというわけではありません。
なぜなら、猫背は遺伝的要因だけでは発症せず、後天的要因である生活習慣が加わることで発症するからです(生活習慣については以下のセクションで解説してあります)。
生活習慣
生活習慣の影響はとても大きいです。
遺伝的に猫背の家系であったとしても、生活習慣が整っていれば猫背になることはありません。
従って、現在猫背になっている人は、長年の生活習慣の積み重ねが原因となっています。
具体的には以下のようなことになります。
- 座っているときの姿勢
- 立っているときの姿勢
- 反復動作(仕事やスポーツ)
側弯症
側弯症というのは、背骨が左右に弯曲してしまう状態のことを言います。
側弯症がある場合、セットで猫背にもなっています。これは、脊椎のバイオメカニクス(関節運動学)から必ずそうなるのです。
そして、ほとんどの側弯症患者の場合、背中の右側の方により強く猫背が表れています。
側弯症も遺伝性が強いです。両親が側弯症の場合、子供の50%は側弯症となると言われています。
しかし、遺伝だけでは側弯症は発症しません。後天的な要因、つまりこれも生活習慣が大きな影響を及ぼしています。
側弯症については、以下の記事で解説してありますので、興味のある方はぜひご参考にしてください。
性格(精神状態)
猫背になるとうつ状態に陥りやすいという研究データがあります。
このことから、うつ傾向にある人は猫背になりやすい可能性があります。
猫背による悪影響
猫背は様々な体調不良の原因となります。具体的には以下のようなものがあります。
- 腰痛
- 頭痛
- 呼吸
- 老化
- うつ病
それでは、それぞれについて解説していきます。
猫背は腰痛を引き起こす
猫背になると胸椎が過剰後弯曲になると同時に、腰椎(腰の骨)にも姿勢の問題が代償的に発生します。具体的には以下のような問題になります。
- 反り腰
- フラット化
反り腰
反り腰とは読んでそのままの意味です。つまり、腰が反っている状態です。
反り腰では背骨と背骨の間にある関節が圧迫されてしまうため、それが痛み(腰痛)の原因になります。よって、この場合の痛みの原因は腰椎の関節が圧迫されることによるものです。
痛みは局所的で鋭い傾向があります。腰を反るとさらに鋭い痛みが現れます。
フラット化
腰椎のフラット化では反り腰の真逆のことが起こっています。
腰椎は前側に弯曲(前弯曲)しています(上図参照)が、腰椎がフラット化するとこの前弯曲が減少してしまいます。
脊柱は前後に弯曲することによって、縦方向の衝撃(重力)を吸収しているのですが、フラット化してしまうとその働きが弱くなります。
そうなると、脊柱にかかった負荷は、どこで吸収されるかと言うと椎間板です。椎間板に過剰な負荷が何度もかかることで、最終的には椎間板ヘルニアに至ります。
つまり、腰椎のフラット化が起こっている場合、椎間板ヘルニアのリスクが高くなるということです。
椎間板ヘルニアについては、以下の記事で解説してあります。併せてご確認ください。
猫背は頭痛の原因になる
猫背の人の場合、頭が前側に変位してしまっています。このような頭のポジションを頭部前突位と言い、顎が上がった姿勢になっています。
頭部が前突位になると、首と後頭骨の付け根が詰まった状態になるため、それが原因で頭痛の症状が現れやすくなります。
猫背は呼吸を浅くする
猫背だと大胸筋が縮んでいるため、胸が閉じた状態です。
胸が閉じた状態では、息を吸っても肺の奥まで入っていきません。
この後、うつ病のところで解説しますが、呼吸と精神状態はとても密接な関係を持っています。
端的に言えば、呼吸が浅いと精神的にも不安定な状態に陥りやすくなります(不安な状態のときの呼吸を思い出してみてください)。
猫背は見た目を10歳老けさせる
これは、明らかですね。猫背で前かがみの姿勢の人と、背中がまっすぐ伸びている人が横に並んだら、一目瞭然です。
猫背は身体的にも精神的にも悪影響を及ぼしますが、見た目でも損をします。
猫背はうつ病の元
「悪い姿勢を意図的に維持した場合の精神に及ぼす影響について」検証した実験があります(この実験では悪い姿勢を猫背とは表現していませんが、ほぼ同じことと思われます)。
それによると、悪い姿勢を維持した場合、精神的にも落ち込みがちであったと報告されています。
つまり、猫背は精神的にもネガティブな影響を及ぼしていることになります。
まとめ
- 脊椎は頸椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨に分類される。
- 猫背では胸椎の過剰後弯曲が生じている。
- 猫背の原因
- 遺伝
- 生活習慣
- 側弯症
- 性格(精神状態)
- 猫背の影響
- 腰痛
- 頭痛
- 呼吸
- 老化
- うつ病
関連記事
側弯症では脊椎に側屈と回旋、また特に胸椎には後弯が加わっています。脊椎で生じる変位により、胸郭にも捻れが生じます。 通常、側屈凹側(側屈側)の胸郭が後方に隆起し幅が狭くなり、側屈凸側(側屈の反対側)の胸郭は幅が広くなってい[…]
腰椎には5つの椎骨(L1~L5)があります。それぞれの椎骨の間には椎間板があり、衝撃吸収の役割を持っています。 椎間板は線維輪と髄核の2つの構造によって構成されています(図1)。髄核はジェル状の構造で周囲を線維輪によって覆[…]
猫背を治したいと切実に思っている人は多いと思います。最近は特にスマホのやり過ぎにより、姿勢が悪くなっている人が激増しています。 猫背は筋トレやストレッチなどのエクササイズにより、ある程度改善させることが可能ですが、年齢や猫背の程度によ[…]
脊柱管狭窄症は、1954年にVerbiestによって初めて報告されました (Verbiest H, 1954)。脊柱管の狭窄により神経や周辺組織の圧迫によって引き起こされる症状のことです。 脊柱管狭窄症でもっとも多い原因は[…]