脊柱管狭窄症(Lumbar spinal stenosis)の原因、症状、検査法、治療法について

脊柱管狭窄症は、1954年にVerbiestによって初めて報告されました (Verbiest H, 1954)。脊柱管の狭窄により神経や周辺組織の圧迫によって引き起こされる症状のことです。

脊柱管狭窄症でもっとも多い原因は、変性によるものです。従って、必然的に患者は中年(40歳代以上)以降の年齢が多くなります。腰椎(特に椎間関節)や椎間板が変性することにより、脊柱管に狭窄が生じます。

症状

脊柱管狭窄症の特徴的な症状は、間欠性跛行です。腰椎伸展位において症状が悪化し、屈曲位において改善するのが、間欠性跛行の特徴です。また、長時間の立位姿勢や歩行によって症状が悪化し、上半身を丸めて(腰椎屈曲位)座っていると改善するのも特徴的なサインです。

主訴は下肢への関連痛です。でん部、鼡径部、大腿後面から下腿部、足にかけての知覚異常(痛み、痺れ、感覚鈍麻など)が現れます。腰痛が伴う場合もありますが、下肢への関連痛の方が強い場合が多いです。

また、就寝中の下腿部筋肉の痙攣(こむら返り)や膀胱障害(頻尿や排尿時の痛みなど)が現れることもあります (Inui Y, 2004)。

しかし、排尿や排便などの内臓に影響が出ている場合、馬尾症候群の可能性があるため、早急に専門医による精密検査を受ける必要があります。

原因

脊柱管狭窄症の原因は、先天性と後天性に分類されます (Ciricillo SF, 1993)。後天性の脊柱管狭窄症の主な要因は、加齢や反復負荷に伴う腰椎(椎体、椎間関節)や椎間板の変性です。また、珍しいですが、局所的な感染症、傷害、手術などが原因の場合もあります。

変性椎間板疾患

椎間板の変性は、変性(変形性)椎間板疾患(Degenerative Disc Disease=DDD)と呼ばれています。椎間板の変性に伴い委縮することで、椎間板厚が徐々に減少、さらに椎間板の衝撃吸収機能が低下します。

それにより、椎体や椎間関節への負荷が増加し骨棘が形成されます。骨棘の形成される部位によっては、脊柱管の狭窄が発生します。

椎間孔の狭窄

椎間孔の狭窄は、椎間板厚の減少や椎間板ヘルニア、椎間関節からの骨棘、黄色靱帯や関節包の肥厚(変性)、椎体からの骨棘などが原因となります (Jenis LG, 2000)。また、L5-S1の椎間孔に占める神経根の割合が大きいため、L5神経根の圧迫が好発します(Jenis LG, 2000)。

神経根の周りには多くの靱帯が存在していますが、特に黄色靱帯の肥厚が神経根を刺激・圧迫する可能性が高いです。黄色靱帯への反復性の機械的な負荷により、この靭帯の変性(肥厚)、そして椎間孔の狭窄が起こります。

 

  1. 黄色靱帯
  2. 椎間孔内靭帯
  3. 上経椎間孔靭帯
  4. 中経椎間孔靭帯
  5. 下経椎間孔靭帯
  6. 上椎弓根体靭帯 (Superior corporopedicular ligament)
  7. 下椎弓根体靭帯 (Inferior corporopedicular ligament)

神経根圧迫の仮説

神経根圧迫の原因には、いくつかの仮説が提唱されています。主なものは以下の3つです。

  1. 馬尾神経へ血液を供給している動脈の直接的な圧迫 (Cooke TD, 1968)
  2. 姿勢による脊髄液圧の変化 (Hanai K, 1985)
  3. 神経根の直接的な圧迫 (Brish A, 1964)

脊柱管狭窄症の機能的要因

脊柱管の断面積は、圧迫と伸展によって減少し、牽引と屈曲によって増加します (Schönström N, 1989)。また、椎間孔の断面積は、伸展により15%減少し、屈曲により12%増加します (Inufusa A, 1996)。

従って、椎間板の変性により脊柱(特に腰椎)の姿勢が変化(弯曲、回旋、側屈)し、脊柱管の狭窄を引き起こすことがあります。

脊柱管狭窄症の病生理学的要因

脊柱管狭窄症のもっとも重要な病生理学的要因は、馬尾神経への血流量の減少です (Porter RW, 1992)。

これは、馬尾神経の神経根に適度な圧迫を加えたところ、馬尾神経へ向かう血流量が減少したとする研究報告からも明らかです (Jespersen SM, 1995; Mao GP, 1998)。

脊柱管狭窄症の遺伝的要因

また、最近はDDDと脊柱管狭窄症の遺伝的要因にも注目が集まっています (De Graaf I, 2006; Gevirtz C. 2010)。

コラーゲン線維の形成に異常を引き起こす遺伝形質があり、それが椎間板の衝撃吸収機能を弱めている可能性があります (Marini J, 2001; Modic M, 2007)。

検査

触診検査

腰椎棘突起先端を圧迫してみます。椎間板ヘルニアがある場合、棘突起先端の鋭い圧痛や下肢への関連痛(坐骨神経痛)の増悪が認められることがあります。

また、坐骨神経の走行に沿って触診を行い、圧痛や関連痛の有無を確認します(特に大坐骨孔、梨状筋下縁、坐骨結節外側、大腿後面)。

運動検査

腰椎の可動域検査を行います。特に、屈曲に比べ伸展がやや制限されていることが多いです (Johnsson KE,1993; Turner JA, 1992)。また、仙腸関節の可動域検査も行います。

神経検査

腰椎または仙骨の神経根が刺激・圧迫されている場合、対応する皮膚分節領域に痛みや感覚鈍麻などの知覚異常が現れます。

一方、脊髄や馬尾神経に影響が及んでいる場合、両下肢に知覚異常が現れます。上記のような症状がある場合、バルサルバマヌーバー、またはケンプテストで陽性となります。

画像検査

腰椎のX線検査(PA、外側)により、腫瘍、側弯症、感染症などを鑑別します。また、下肢への関連痛を訴えている場合に限り、MRIまたはCTによる検査を行います。共に脊髄、馬尾神経、神経根の状態を検査するには最適な画像検査です。

鑑別診断

馬尾症候群

椎間板ヘルニアや腫瘍などにより、馬尾神経が圧迫を受けることがあります。馬尾症候群では、発症から48時間以内に対処(外科手術)することが望ましいと言われています。

発症からの時間の経過とともに予後経過の悪化(膀胱障害、坐骨神経痛、運動障害など)が認められています。従って、馬尾症候群の疑いがある場合、早急に専門家による精密検査を勧めるようにしてください。

梨状筋症候群

梨状筋症候群では、梨状筋の起始付近(大坐骨孔)、または梨状筋と坐骨神経が交差する部位(梨状筋下縁)に鋭い圧痛が触診されます。

また、同じ部位の持続圧により下肢への関連痛(坐骨神経痛)が引き起こされます。

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治療

軟部組織

腰方形筋、大腰筋、多裂筋など、腰椎の姿勢に大きな影響を及ぼす筋肉の治療を行います。

また腸腰靭帯、後仙腸靭帯、仙結節靭帯などの治療を行うことで、それぞれ腰仙関節、仙腸関節の機能を改善させます。

さらに、腰椎の椎間関節に圧痛や動作痛がある場合、関節包の治療も併せて行うようにします。

関節

腰椎の椎間関節、腰仙関節、仙腸関節のアジャスメントを行い、脊柱(特に腰椎)の姿勢を改善させます。

特に下部腰椎に過伸展が認められる場合、胸腰椎部の可動域制限(特に伸展制限)を改善させます。

関連動画

こちらの動画は脊柱管狭窄症の原因・症状・治療法について、基本的なことを簡潔にまとめてあります。こちらも併せてご利用ください。

 

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参考文献

  1. Inui Y, Doita M, Ouchi K, Tsukuda M, Fujita N, Kurosaka M, Clinical and radiologic features of lumbar spinal stenosis and disc herniation with neuropathic bladder. Spine 2004 :15;29(8):869–73 (http://bit.ly/2Yhw7hx).
  2. Verbiest H, A radicular syndrome from developmental narrowing of the lumbar vertebral canal. J Bone Joint Surg Br 1954;36-B(2):230–7 (http://bit.ly/2xk6ukg).
  3. Ciricillo SF, Weinstein PR, Lumbar spinal stenosis. West J Med 1993 ;158(2):171–7 (http://bit.ly/2LvvtcC).
  4. Jenis LG, An HS, Spine update. Lumbar foraminal stenosis. Spine 2000;25(3):389–94 (http://bit.ly/2RGLPAq).
  5. Schönström N, Lindahl S, Willén J, Hansson T, Dynamic changes in the dimensions of the lumbar spinal canal: an experimental study in vitro. Journal of orthopaedic research 1989;7(1):115–21 (http://bit.ly/320R56S).
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  7. Porter RW, Ward D, Cauda equina dysfunction. The significance of two-level pathology. Spine 1992;17(1):9–15 (http://bit.ly/2xfGMxl).
  8. Jespersen SM, Hansen ES, Høy K, Christensen KO, Lindblad BE, Ahrensberg JJ, et al., Two-level spinal stenosis in minipigs. Hemodynamic effects of exercise. Spine 1995;20(24):2765–73 (http://bit.ly/2Ntje3g).
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