足根管症候群 (Tarsal tunnel syndrome) の原因・症状・検査法・治療法について

足根管症候群は足根管における脛骨神経の圧迫(絞扼)が原因です。足首の内側から足裏のしびれや痛み、感覚麻痺(鈍麻)などが主な症状です(文献によっては後脛骨神経と書かれてあることがありますが、脛骨神経のことです)。

足根管は、屈筋支帯によって覆われたトンネル構造となっています。屈筋支帯は踵骨と内果(脛骨)の間の硬い靭帯様の軟部組織であり、その下には脛骨神経の他に後脛動静脈、後脛骨筋腱、長母趾屈筋腱、長趾屈筋腱が走行しています。

足根管を走行している軟部組織

  • 脛骨神経
  • 後脛動静脈
  • 後脛骨筋腱
  • 長母趾屈筋腱
  • 長趾屈筋腱

原因

足根管症候群は、足根管の狭窄に伴い脛骨神経が絞扼・圧迫・刺激されることが原因です。それにより、足内側から足底にかけて知覚異常が現れます。

内側足底神経と外側足底神経は、足根管遠位部の母趾外転筋の下側において分岐します。また、内側踵骨枝は足根管の手前において分岐していることが多く、踵骨後内側と脂肪体への知覚支配を持ちます。

足根管における狭窄の原因には、傷害、腫瘍、足部関節の機能障害(扁平足や過剰回内障害)などさまざまなものがあります(Lau JTC, 1999, http://bit.ly/2YsZKka)。

構造的要因

足根管が狭窄される原因にはさまざまなものがあります。構造的要因には、静脈瘤、ガングリオン、脂肪腫、神経鞘腫、副母趾外転筋 (accessory abductor hallucis muscle)、副長趾屈筋 (flexor digitorum accessorius longus)、長母趾屈筋腱の部分断裂、慢性静脈炎 (chronic phlebitis)、腫脹などがあります。

また、脛骨神経や屈筋支帯、長母趾屈筋腱の変性(線維化)も狭窄の原因になります (Riazi S, 2012, http://bit.ly/2KyL8G8)。変性は、加齢や過剰な反復負荷、手術などによって生じます。

足根管症候群の構造的要因

  • 静脈瘤
  • ガングリオン
  • 脂肪腫
  • 神経鞘腫
  • 副母趾外転筋 (accessory abductor hallucis muscle)
  • 副長趾屈筋 (flexor digitorum accessorius longus)
  • 長母趾屈筋腱の部分断裂
  • 慢性静脈炎 (chronic phlebitis)
  • 腫脹

近位足根管症候群と遠位足根管症候群

近位足根管症候群では、足根管近位において屈筋支帯による脛骨神経の絞扼障害が起こっています (Heimkes B, 1987, http://bit.ly/31rY47s)。一方、足根管遠位において脛骨神経が絞扼される場合、遠位足根管症候群と呼ばれています。

遠位足根管症候群による脛骨神経絞扼障害では、2つの構造が原因となります。1つ目は母趾外転筋の筋膜です。この構造は、足根管遠位部において足根管の”内側の壁”となっています。2つ目は、踵骨内側から母趾外転筋の筋膜にかけて伸びる軟部組織の内側筋間中隔 (medial intermuscular septum)です。

TN=脛骨神経、mpn=内側足底神経、lpn=外側足底神経、icn=バクスター神経、cbbn=バクスター神経踵骨枝、ms=内側筋間中隔 (Simone M, 2019, http://bit.ly/2KAIHmC)

 

機能的要因

足根管狭窄の機能的要因には、足関節の過剰回内障害があります。足関節の過剰回内により、踵骨は過剰に外反しています。それに伴い、屈筋支帯は伸張され足根管の狭窄が起こります。

この傾向は特に荷重位(ジャンプ、ダッシュ、ランニングなど)において顕著になります。また、足関節に背屈制限があるとき、代償的に踵骨にはより大きな外反が生じます。

足関節の過剰回内により足根管の狭窄が生じる

病理的要因

足根管症候群の病理的要因には、関節リュウマチ、硬直性脊椎炎、滑膜骨軟骨腫症 (synovial osteochondromatosis)などがあります。これらは全て炎症性疾患であり、滑膜炎を誘発し、それが足根管の狭窄を引き起こします。

滑膜骨軟骨腫症
滑膜骨軟骨腫症では、関節腔内に軟骨の腫瘍組織(良性)が形成されます。膝関節や股関節に好発します。患者は30代から40代の男性に散見されます。症状は関節の痛みとこわばり感(可動域制限)です。変形性関節症と症状が似ているため誤診されるケースが多いです。

症状

足根管症候群の症状は、影響を受ける構造(以下)によって異なります。

  1. 脛骨神経
  2. 後脛骨動静脈
  3. 屈筋腱

脛骨神経

脛骨神経は、内側足底神経、外側足底神経、内側踵骨枝、バクスター神経(下踵骨神経)に分岐しています。

バクスター神経は外側足底神経から分岐する1本目の神経です。小趾外転筋への運動支配を持っています。また、内側足底神経と外側足底神経は、足底の知覚支配と足底部の筋肉の運動支配を持っています。

従って、足根管において脛骨神経の絞扼障害が起こると、踵骨内側から足底にかけての知覚異常(疼痛、知覚鈍麻など)が現れます。

また慢性的な踵の痛みを訴えるケースにおいて、88%の割合で足根管における内側踵骨枝の絞扼障害が認められています(Rose JD, 2003, http://bit.ly/2KDSkAG)。

脛骨神経の4つの分岐

  • 内側足底神経
  • 外側足底神経
  • 内側踵骨枝
  • バクスター神経

後脛骨動静脈

足根管の狭窄により後脛骨動静脈が影響を受けた場合、足のむくみや足底の知覚異常が現れます。足底の知覚異常は、散在的に現れます(脛骨神経の絞扼障害とは異なる)。

屈筋腱

屈筋腱が影響を受けた場合は、踵骨内側の局所的な痛みが主症状になります。長母趾屈筋腱や後脛骨筋腱が好発部位となります。

検査法

触診検査

足根管を走行している構造(長母趾屈筋腱、後脛骨筋腱、長趾屈筋腱、脛骨神経)の触診を行い、圧痛や関連痛の有無を確認します。

また、後脛骨動脈の脈診も行い、脈の減弱の有無を確認します。わかりにくい場合は、健側との比較をすると良いでしょう。

ティネル兆候

足根管を指先でタッピングします。それにより、足底部の知覚異常が増悪した場合、陽性反応となり、足根管における脛骨神経の絞扼障害が疑われます。

また、足関節中立位において陰性であった場合、踵骨外反位において同様にタッピングを行ってみてください。踵骨を外反位にすることで、屈筋支帯が伸張され足根管の狭窄が協調されるため、陽性反応が出やすくなります。

治療法

足根管症候群は徒手療法などの保存的方法により、十分改善が可能な症候群です。手術は徒手療法による治療で効果が現れなかった場合の最終手段と考えてください。

治療法は原因によって異なります。ここでは、特に機能的要因に対する治療法について解説していきます。

アジャスメント

足関節で過剰回内が生じると、足部の関節では以下のようなサブラクセーション(変位)が生じています。

  • 踵骨の外反
  • 舟状骨の内旋
  • 第1MP関節の伸展

従って、踵骨は内反方向、舟状骨は外旋方向、第1MP関節は屈曲方向へアジャスメントを行います。

筋膜リリース

後脛骨筋腱、長母趾屈筋腱、長趾屈筋腱を触診し、癒着部位(圧痛個所)に対して筋膜リリースを行います。筋膜リリースにより、線維化を破壊し、さらに線維の走行を整えることで症状の改善を狙います。

近位足根管症候群では屈筋支帯のリリースを行います。また、遠位足根管症候群では母趾外転筋の筋膜と内側筋間中隔のリリースを行います。

固有感覚受容器の再教育

固有感覚受容器の機能低下により、関節の位置覚(ポジションセンス)に問題が生じます。足関節の過剰回内がある場合、回内方向へ不安定性があると考えられるため、固有感覚受容器の再教育によって不安定性を改善させます。

基本的には、バランスパッドやバランスボール、TRXなどを利用してバランストレーニングを行います。反復回数を多め(20回以上)に、さらに1レップ毎の動作を正確に行うことが重要です。

参考文献

  1. Lau JTC, Daniels TR. Tarsal tunnel syndrome: a review of the literature. Foot Ankle Int 1999;20:201—9 (http://bit.ly/2YsZKka).
  2. Riazi S, Bril V, Perkins BA, Abbas S, Chan VW, Ngo M, Lovblom LE, El-Beheiry H, Brull R, Can ultrasound of the tibial nerve detect diabetic peripheral neuropathy? A cross-sectional study. Diabetes Care 2012, 35(12):2575–2579 (http://bit.ly/2KyL8G8).
  3. Simone M, Alejandro FG, Marit Z, Gabriel CN, Rubén M, José S, Teresa V, Marko K, Ultrasound-guided decompression surgery of the distal tarsal tunnel: a novel technique for the distal tarsal tunnel syndrome—part III, Surg Radiol Anat. 2019; 41(3): 313-321 (http://bit.ly/2KAIHmC).
  4. Heimkes B, Posel P, Stotz S, Wolf K, The proximal and distal tarsal tunnel syndromes. An natomical study. Int Orthop, 1987, 11(3):193–196 (http://bit.ly/31rY47s).
  5. Rose JD, Malay DS, Sorrento DL, Neurosensory testing of the medial calcaneal and medial plantar nerves in patients with plantar heel pain. J Foot Ankle Surg, 2003, 42(4):173–177 (http://bit.ly/2KDSkAG).

 

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【ボディビル歴33年】大学入学と同時にボディビルを開始。その後、現在までウエイトトレーニングを続けている。国内・海外でのボディビル大会での優勝・入賞歴多数。
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