原因
アキレス腱炎は、ジャンプやランニングなどの反復動作によって発症します。
アキレス腱炎による痛みの原因は、アキレス腱や長母趾屈筋腱によるものです。
メカニズム
ランニングやジャンプなどの反復動作により、アキレス腱にはマイクロトラウマ(微細外傷)が生じます。
マイクロトラウマによる線維に傷が付き、線維化が発生します。これが、腱の変性、すなわち腱症で起こっていることです。
アキレス腱の線維化により、周辺組織との間に癒着が生じています。
症状
アキレス腱の鋭い局所痛と腫脹が主症状になります。
痛みは踵骨の停止部から近位約2㎝から6㎝付近に局在しています。
初期症状では、朝起きた時に痛みやこわばり感などの症状が強く、身体を動かすと症状が軽減していく傾向があります。
しかし、症状の進行とともに常に痛みを感じるようになり、歩行やランニングなどによって悪化します。
検査
触診検査
触診検査では以下の2つの構造の圧痛を確認します。
- アキレス腱
- 長母趾屈筋腱
特にアキレス腱と長母趾屈筋腱の交差部位に圧痛が触診される傾向があります。
運動検査
アキレス腱炎では、以下の3つの運動検査において症状(痛み)の増悪が認められます。
- 足関節の他動的背屈
- 足関節の自動的底屈
- 足関節底屈の抵抗運動
整形外科的テスト
アキレス腱炎に特化した整形外科的テストはありませんが、アキレス腱断裂との鑑別のための検査としてトムソンテストがあります。
トムソンテストは以下の通りに行います。
- 患者腹臥位
- 下腿部の筋肉(腓腹筋、ヒラメ筋)を掴む
- 足関節の底屈が起こらなければアキレス腱断裂陽性
治療法
徒手療法
アジャスメント
アキレス腱炎では、足関節の背屈制限が併発している場合が多いです。従って、以下の関節の可動性検査を行い、必要ならばアジャスメントを行います。
- 距腿関節
- 距骨下関節
筋膜リリース
基本的に触診検査において圧痛が認められた構造に対して筋膜リリースを行います。以下のような構造を診ると良いでしょう。
- アキレス腱
- 長母趾屈筋
- 腓腹筋
- ヒラメ筋
エクササイズ
伸張性収縮エクササイズ
つま先を台の上に乗せ、ゆっくりと踵を下ろしていきます(5秒以上かける)。これを15レップス反復します。
1日3セットを一日置きに行います。
ストレッチ
アキレス腱のストレッチを行います。壁に両手を付き、ストレッチする側の足を後ろに置くことでアキレス腱をストレッチします(膝関節は伸展位)。
最大ストレッチポジションにおいて30秒から60秒ほど維持します。これを1日3回繰り返します。
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