猫背を治したいと切実に思っている人は多いと思います。最近は特にスマホのやり過ぎにより、姿勢が悪くなっている人が激増しています。
猫背は筋トレやストレッチなどのエクササイズにより、ある程度改善させることが可能ですが、年齢や猫背の程度によっては限界があります。
しかし、そのまま放置した場合、現状維持もしくは悪化のどちからです。猫背気味の方はぜひとも改善できるように頑張ってみてください。
猫背を改善するための2つのポイント
猫背を改善するためのポイントには2つあります。
- 筋肉のバランスを整える
- 背骨の姿勢を整える
筋肉のバランスを整える
猫背の人の筋肉のバランスには特徴的な問題があります。
特に猫背に大きな影響を及ぼしているのが、大胸筋と中・下部僧帽筋です。
図にも示してあるように、大胸筋が縮み(拘縮)し、中・下部僧帽筋が伸張(弱化)してしまっています。
このような筋肉のアンバランスが生じることで、猫背が悪化してしまうのです。
よって、猫背の改善には以下の2点がポイントとなります。
- 大胸筋の縮み(拘縮)の改善
- 中・下部僧帽筋の伸張(弱化)の改善
大胸筋の縮みの改善ではストレッチを行い、中・下部僧帽筋の伸張の改善では筋トレ(ベントオーバーローイング)を行います。
背骨の姿勢を整える
背骨は上から頸椎、胸椎、腰椎、仙骨(+尾骨)で構成されています。
胸椎は首の付け根から腰の上(肋骨の一番下)までの12個の背骨のことを指します。
また、胸椎は後ろ側(背中側)に凸の弯曲(後弯曲)を形成しているのですが、猫背の人の場合、この後弯曲が過剰になっています(過剰後弯曲)。
従って、猫背の改善には胸椎の過剰後弯曲の改善がとても大切になります。
具体的な改善法については、以下の猫背改善のための運動メニューのセクションに解説してあります。
猫背改善のための運動メニュー
猫背改善のためには、上で説明したように「筋肉のバランスを整える」ことと、「背骨のバランスを整える」ことの2点がもっとも大切です。
以下にご紹介する運動メニューは、これら2点に特にフォーカスしてあります。
- 大胸筋のストレッチ
- 胸椎伸展エクササイズ①
- 胸椎伸展エクササイズ②
- 頭部前突・後退エクササイズ
- ベントオーバーローイング
筋肉のバランスを整えるためのエクササイズは、「大胸筋のストレッチ」と「ベントオーバーローイング」の2つです。
一方、背骨のバランスを整えるためのエクササイズは、残りの「胸椎伸展エクササイズ①、②」と「頭部前突・後退エクササイズ」の2つです。
これらを全て行ったとしても、およそ10分程度しかかかりません。1日わずか10分です。ぜひ続けてみてください。
大胸筋のストレッチ
大胸筋が縮む(拘縮する)と肩が前側に引っ張られるので、猫背になります。
大胸筋は大きな筋肉であり力も強いので、姿勢への影響も大きいです。また、猫背の人の大胸筋はほぼ縮んでいます。
従って、大胸筋のストレッチは猫背の改善のためには、必須のエクササイズとなります。

2.片手を壁に置きます(手は身体の後上方に置く)
3.身体全体を前側に重心移動させていきます
4.大胸筋がもっともストレッチされたところで静止しま
5.この状態を30秒以上維持します
起始
鎖骨部:鎖骨の内側1/2
胸肋部: 胸骨および第2~7肋軟骨の前面
腹部:腹直筋鞘前葉
停止
上腕骨の大結節稜
作用
鎖骨部:肩関節の屈曲、内転,内旋
神経支配
内・外側胸筋神経、 C5~8、T1
胸椎伸展エクササイズ
先ほど書いたように、猫背の改善には胸椎の過剰後弯曲の改善がとても大切になります。従って、ここでは胸椎の過剰後弯曲改善のためのエクササイズ法について解説していきます。
胸椎伸展エクササイズには2種類あります。どちらか一方を選んで行っても構いませんし、2つともやっていただいてもかまいません。
ちなみに、以下にご紹介する胸椎伸展エクササイズの内、2つ目のストレッチポールを使う方が難しいかもしれません。
猫背がきつい人にとっては、このエクササイズは痛みが伴うかもしれませんので、その場合は無理せず1つ目の椅子を使う胸椎伸展エクササイズを行ってください。
そして、ある程度慣れてきたらストレッチポールで行う胸椎伸展エクササイズに挑戦してみてください。
- 椅子の背もたれに両手を置きます
- 重心を後にずらします(背骨がストレッチされた状態)
- 両手の間に頭を入れます
- 胸椎の真ん中を意識して背骨を反ります(腰を反りすぎないように注意)
- 4番を小刻みに行います
- ストレッチポールの上に身体が直交するように仰向けに寝ます(このとき、ストレッチポールが腰のすぐ上(胸椎の一番下)にくるようにする)
- 1番の状態で5秒維持します
- 身体を下にずらし、同じように5秒維持します
- ストレッチポールが肩甲骨のところに当たるところまで、再び身体を下にずらし5秒維持します
- 1番身体を下に4番を繰り返します
頭部前突・後退エクササイズ
猫背の人の特徴に「頭部の前突」があります。これは頭が正常よりも前側に変位してしまっている状態のことです。
別の表現をすると、「顎が上がった状態」になります。
このような姿勢になると、首の上側(後頭骨のすぐ下)が詰まった状態になるため、首こり、肩こり、頭痛などを引き起こします。
従って、頭部前突・後退エクササイズでは、特に首の姿勢を改善することを目的としています。
1.顎を引きます
2.1番の状態を維持したまま頭を床と水平に後ろに動かします
3.2番の状態で2,3秒維持します
4.頭を前方へ動かします
5.1番から4番を繰り返します
ベントオーバーローイング
ベントオーバーローイングは広背筋を鍛えるための筋トレエクササイズです。
猫背の人の場合、広背筋を強化することも大切なのですが、ここでは中・下部僧帽筋にフォーカスしてベントオーバーローイングをやってみましょう。
なぜなら、中・下部僧帽筋は肩甲骨を内側に引き寄せる働きがあるからです。
つまり、これらの筋肉を強化することで肩甲骨を内側に引き寄せ、猫背の姿勢を改善させるというわけです。

2.背骨を反ったまま、やや前傾姿勢になります
3.太ももの上をなぞるようにダンベルを下腹部に引き寄せます
4.同時に左右の肩甲骨を内側に寄せていきます
5.トップポジションで1秒静止します
6.ダンベルをゆっくりと戻します
7.3番から6番を繰り返します【注意】2番で前傾姿勢になったとき、ダンベルが膝と股関節の中間に来るようにします。
僧帽筋の解剖学
上項線内側1/3,外後頭隆起,項靱帯,C7-Th12の棘突起と棘上靭帯停止
鎖骨外側1/3,肩峰,肩甲棘
神経支配
脊髄副神経(第11脳神経),C3,C4
胸鎖関節挙上,肩甲骨挙上・内転・上方回旋
- 大胸筋のストレッチ
- 胸椎伸展エクササイズ①
- 胸椎伸展エクササイズ②
- 頭部前突・後退エクササイズ
- ベントオーバーローイング
動画で解説
こちらの動画に上で説明した運動メニューを解説してあります。
こちらも併せてご利用ください。
関連記事
側弯症では脊椎に側屈と回旋、また特に胸椎には後弯が加わっています。脊椎で生じる変位により、胸郭にも捻れが生じます。 通常、側屈凹側(側屈側)の胸郭が後方に隆起し幅が狭くなり、側屈凸側(側屈の反対側)の胸郭は幅が広くなってい[…]
脊柱管狭窄症は、1954年にVerbiestによって初めて報告されました (Verbiest H, 1954)。脊柱管の狭窄により神経や周辺組織の圧迫によって引き起こされる症状のことです。 脊柱管狭窄症でもっとも多い原因は[…]
猫背というのは、背骨の胸椎といわれる部分が大きく後に丸くなった状態です。 背骨には胸椎以外に頸椎、腰椎、仙骨(+尾骨)があり、横から見ると前後に弯曲しています(下図)。 正常な人でも胸椎は後ろに弯曲(後弯曲)していますが[…]