TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷の原因・症状・治療法

TFCCはTriangular Fibrocartilage Complexの頭文字を取って作られました。

  • Triangular=三角
  • Fibrocartilage=線維軟骨
  • Complex=複合体

それぞれ上記のような意味を持ちますので、TFCCは日本語で三角線維軟骨複合体のことです。

本記事ではTFCC損傷の原因・症状・治療法について解説してあります。

解剖学

三角線維軟骨複合体(以下TFCC)は尺骨の茎状突起周辺にある構造の総称です。

TFCCは手関節(特に尺側)の安定性と可動性の一部を担っており、手首への衝撃を吸収する役割を持っています。

TFCCは以下の構造により構成されています(下図)。

  1. 三角線維軟骨
  2. 橈尺靭帯
  3. 内側側副靭帯

 

原因

TFCC損傷の原因には、傷害性のものと非傷害性のものがあります。

傷害性の原因には、手関節伸展位で手を付いて転倒、手首の急激な捻り動作などがあります。

また、非傷害性の原因にはTFCCの変性があります。変性は長期間(数年単位)に渡りTFCCに負荷を加え続けることが発症のメカニズムです。

リスク要因

+Ulnar varianceの場合、TFCC損傷のリスクが高くなります。

Ulnar varianceは以下の3つに分類されます。

  1. +Ulnar variance
  2. -Ulnar variance
  3. ±Ulnar variance

+Ulnar variance

尺骨遠位端が橈骨遠位端よりも長い状態を+Ulnar varianceと言います。

-Ulnar variance

尺骨遠位端が橈骨遠位端に比べ短い場合を-Ulnar varianceと言います。

 

±Ulnar variance

尺骨遠位端と橈骨遠位端の高さが同じ場合を±Ulnar varianceと言います。

症状

TFCC損傷の症状は、手首尺側の痛みや捻髪音です。

また、前腕の回内・回外や手首の尺屈によって手首尺側の痛みは増悪します。

検査法

触診検査

橈尺靭帯と内側側副靭帯の触診を行い、圧痛の有無を確認します。

整形外科的テスト

尺骨頭ストレステスト

  1. 手関節を尺屈位に維持し、前腕の回内、回外を行う
  2. 痛みの増悪が認められれば陽性

X線検査

X線検査でUlnar varianceを確認することができます。

鑑別診断

TFCC損傷の鑑別診断には以下のものがあります。

  • 変性を伴う遠位橈尺関節のサブラクゼーション
  • 尺骨手根骨インピンジメント
  • 豆状骨手根骨関節炎
  • 尺側手根伸筋腱のサブラクゼーション/腱炎

治療法

筋膜リリース

  • 橈尺靭帯
  • 内側側副靭帯

アジャスメント

  • 遠位尺骨
  • 豆状骨

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