インターセクション症候群 (Intersection syndrome)【手首の痛み】

インターセクション症候群は腱交叉症候群(けんこうさしょうこうぐん)とも呼ばれています。

インターセクション症候群は、1842年にVelpeauによって初めて提唱されました。手首の屈曲/伸展を反復することで発症します。

発症率は0.2%から0.37%(1. Descatha A, 2008, https://bit.ly/2GNUgGN)であり、ド・ケルバン病(腱鞘炎)と比べそれほど見られない疾患と言えます。

しかし、42人のスキー選手を調査したところ、11.9%にインターセクション症候群が認められたとする報告があります(2. Stern PJ, 1990, https://bit.ly/2Io360j)。

また、別の研究報告によると、テニス選手の2%にインターセクション症候群が認められています(3.Tagliafico AS, 2009, https://bit.ly/2TaQ0b3)。

症状

リスター結節(橈骨茎状突起から4~8㎝近位)における局所的な鋭い痛み、捻髪音、腫脹が特徴的な症状です。

指や手首の屈曲/伸展によって症状の増悪が起こります。痛みはリスター結節を中心に手首近位に局在しています(図1)。また手首から前腕に広がっている場合もあります。

図1 インターセクション症候群で現れる痛みの領域

鑑別診断

インターセクション症候群とよく似た症状にド・ケルバン腱鞘炎があります。共に手首の腱鞘炎ですが、原因構造が異なります。

【インターセクション症候群の原因構造】
  第1と第2コンパートメントの腱(近位インターセクション症候群)
  長母趾伸筋腱(遠位インターセクション症候群)
【ド・ケルバン腱鞘炎の原因構造】
  長母指外転筋腱、短母指伸筋腱

従って、痛みが現れる場所がやや異なります。インターセクション症候群では、母指の付け根外側付近に痛みが現れるのに対し、ド・ケルバン腱鞘炎では母指付け根のやや背側に痛みが現れます。

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原因

手首の背側には6つのコンパートメントがあります(図2、表1)。もっとも外側にあるのが、第1コンパートメントであり、長母指外転筋と短母指伸筋が含まれています。

また、そのすぐ内側にあるのが第2コンパートメントです。ここには、長橈側手根伸筋と短橈側手根伸筋があります。これら二つのコンパートメントはおよそ60°の角度で交差しています。

インターセクション症候群には、近位インターセクション症候群と遠位インターセクション症候群があります。

図2 手首背側にある6つのコンパートメント

 

コンパートメント
1 長母指外転筋、短母指伸筋
2 短橈側手根伸筋、長橈側手根伸筋
3 長母指伸筋
4 示指伸筋、総指伸筋
5 小指伸筋
6 尺側手根伸筋

表1 各コンパートメントを走行している腱

近位インターセクション症候群(Proximal Intersection Syndrome

近位インターセクション症候群の発症メカニズムには、二つの仮説があります。一つ目は、「第1コンパートメント(長母指外転筋と短母指伸筋)と第2コンパートメント(長橈側手根伸筋と短橈側手根伸筋)の間の摩擦によって発症する」という仮説です。

摩擦は第1コンパートメントの筋腹と第二コンパートメントの腱鞘の間で発生すると考えられます(図3)。

図3 第1コンパートメントと第2コンパートメントの交差部位
第1コンパートメントと第2コンパートメントの交差部位(赤矢印)において、インターセクション症候群は発生する

 

また、これら二つの構造の交差部位は、リスター結節か4㎝から8㎝のところにあります。二つ目は「第2コンパートメントの腱鞘の狭窄によって発症する」という仮説です。

これらの仮説は全て、手首の過剰な反復動作によって発症します。特に手首の伸展/屈曲の反復動作が原因となり、タイピングやテニス、卓球などがその具体例となります。

第1コンパートメントと第2コンパートメントの間の摩擦によって発症第2コンパートメントの腱と腱症との間の狭窄によって発症

遠位インターセクション症候群(Distal Intersection Syndrome)

遠位インターセクション症候群は、長母指伸筋の腱鞘炎のことを指します。長母指伸筋腱(第3コンパートメント)と第2コンパートメント(短橈側手根伸筋腱と長橈側手根伸筋腱)の交差部位における摩擦が、発症のメカニズムです(図4)。

図4 遠位インターセクション症候群の発生部位

遠位インターセクション症候群は長母指伸筋の腱鞘炎のこと

検査

触診検査

リスター結節(橈骨茎状突起から約4㎝近位)に圧痛が触診されます。痛みは局所的で鋭い場合が多いです。炎症がある場合、腫脹や熱感が触診されます。また、指や手首の動きに伴い捻髪音が生じることもあります。

運動検査

近位インターセクション症候群の場合、指・手首の伸展方向への自動的運動または抵抗運動、自動的または他動的屈曲運動で痛みの増悪が認められます。

また遠位インターセクション症候群では長母指外転筋腱に炎症が生じているため、母指の自動的運動または抵抗運動、もしくは自動的または他動的内転運動で痛みの増悪が起こります。

治療

インターセクション症候群では、患部において癒着・線維化が生じている可能性があります。従って、患部の癒着・線維化除去を行うことで症状の軽減を狙います。症状に応じて、治療部位は以下の4か所になります。

  1. 第1コンパートメントと第2コンパートメントの交差部位
  2. 長橈側手根伸筋腱(腱鞘)
  3. 短橈側手根伸筋腱(腱鞘)
  4. 長母指伸筋腱(腱鞘)

参考文献

  1. Descatha A, Leproust H, Roure P, Ronan,Colette, Roquelaure Y. Is the intersection syndrome is an occupational disease? Joint Bone Spine 2008; 75: 329-331
  2. Stern PJ. Tendinitis, overuse syndromes, and tendon injuries. Hand Clin 1990; 6: 467-476
  3. Tagliafico AS, Ameri P, Michaud J, Derchi LE, Sormani MP, Martinoli C. Wrist injuries in nonprofessional tennis players: relationships with different grips. Am J Sports Med 2009; 37: 760-767

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