手背コンパートメントの解剖学と関連症状

コンパートメント(Compartment)とは、「区画」を意味しています。

手背コンパートメントは手首の手背にあるコンパートメントであり、6つのコンパートメントがあります。

本記事では手背コンパートメントの解剖学と関連症状について解説してあります。

解剖学

手首の背側には6つのコンパートメントがあります(下図)。もっとも外側にあるのが、第1コンパートメントであり、長母指外転筋と短母指伸筋が含まれています。

また、そのすぐ内側にあるのが第2コンパートメントです。

ここには、長橈側手根伸筋と短橈側手根伸筋があります。これら二つのコンパートメントはおよそ60°の角度で交差しています。  

コンパートメント
1 長母指外転筋、短母指伸筋
2 短橈側手根伸筋、長橈側手根伸筋
3 長母指伸筋
4 示指伸筋、総指伸筋
5 小指伸筋
6 尺側手根伸筋

 

長母指外転筋

起始;尺骨(骨間縁)、前腕骨間膜、橈骨(後面中央)

停止;第1中手骨底

作用;母指の外転

神経支配;橈骨神経(深枝)、C6-C8

 

短母指伸筋

起始;橈骨後面(遠位)、前腕骨間膜

停止;第1基節骨底

作用;母指・中手指節関節の伸展、母指の外転

神経支配;橈骨神経(深枝)、C6-C8

 

短橈側手根伸筋

起始;外側上顆、橈骨輪状靭帯

停止;第3中手骨底

作用;手関節の伸展

神経支配;橈骨神経(深枝)、C6-C8

長橈側手根伸筋

起始;外側上顆、外側上腕筋間中隔

停止;第2中手骨底

作用;手関節の伸展

神経支配;橈骨神経(深枝)、C6-C8

 

長母指伸筋

起始;尺骨内側後面(中央部)、前腕骨間膜

停止;第1末節骨底

作用;手関節の伸展

神経支配;橈骨神経(深枝)、C6-C8

 

示指伸筋

起始;尺骨後面(遠位)、前腕骨間膜、尺側手根伸筋の筋膜

停止;指背腱膜(示指)

作用;示指の伸展

神経支配;橈骨神経(深枝)、C6-C8

 

総指伸筋

起始;外側上顆

停止;第2~5中節骨底、第2~5末節骨底

作用;手関節の伸展、第2~5指の伸展

神経支配;橈骨神経(深枝)、C6-C8

 

小指伸筋

起始;外側上顆

停止;指背腱膜

作用;小指の伸展

神経支配;橈骨神経(深枝)、C6-C8

 

尺側手根伸筋

起始;上腕頭:外側上顆、内側側副靭帯
   尺骨頭:尺骨後面

停止;第5中手骨底

作用;手関節の尺屈

神経支配;橈骨神経(深枝)、C6-C8

 

関連症状

ド・ケルバン腱鞘炎

ド・ケルバン腱鞘炎は、スイス人外科医(Fritz de Quervainにより1895年に命名されました。

狭窄性腱鞘炎とも呼ばれ、腱鞘炎の一種です。母指の付け根に鋭い痛みが現れます。

手首をひねったり(回内または回外)、物を掴んだりすると痛みが増悪します。

ド・ケルバン腱鞘炎の症状は以下の通りです。

痛みは母指の付け根に局在していることが多いですが、症状の悪化に伴い前腕にかけて広がる場合もあります(下の写真)。

  • 母指側手首(母指の付け根)の痛み
  • 橈骨茎状突起周辺の腫脹
  • 母指の運動(物を掴んだり、広げたりなど)に伴う痛みや捻髪音

インターセクション症候群

インターセクション症候群は腱交叉症候群(けんこうさしょうこうぐん)とも呼ばれています。

インターセクション症候群は、1842年にVelpeauによって初めて提唱されました。

手首の屈曲/伸展を反復することで発症します。 リスター結節(橈骨茎状突起から4~8㎝近位)における局所的な鋭い痛み、捻髪音、腫脹が特徴的な症状です(下の写真)。

指や手首の屈曲/伸展によって症状の増悪が起こります。痛みはリスター結節を中心に手首近位に局在しています。また手首から前腕に広がっている場合もあります。

リスター結節を中心に手首近位に広がる  

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