前方頚椎症候群の原因・症状・治療法

前方頚椎症候群では、下部頚椎の運動障害が起こっています。

また、上位交差性症候群、頚神経根障害、胸郭出口症候群、テニス肘、ゴルフ肘、手根管症候群などの症状が併発していることが多く、それにより頭頚部痛や上肢への関連痛などが自覚症状として現れます。

このように、前方頚椎症候群は様々な症状を引き起こすにも関わらず、見過ごされていることが多いです。

本記事では前方頚椎症候群の検査法や治療法について解説してあります。

  1. 上位交差性症候群
  2. 頚神経根障害
  3. 胸郭出口症候群
  4. テニス肘
  5. ゴルフ肘
  6. 手根管症候群

原因

前方頚椎症候群の原因は、猫背(胸椎過剰後弯曲)による代償性の下部頚椎前方変位によるものです。

猫背により、下部頚椎は屈曲(または前方回旋)変位が生じます。

下部頚椎の屈曲(または前方回旋)が様々な自覚症状を引き起こします。

症状

前方頚椎症候群の特徴の一つが『頭部前突位』です(下図)。

頭部が前突位になると、下部頚椎は屈曲し上部頚椎は伸展します。

下部頚椎の屈曲により、肩こりや首の痛み、さらに胸郭出口症候群に伴う上肢痛(痺れや痛みなどの感覚異常)が現れます。

上部頚椎の伸展により、後頭下筋群の拘縮が起こるため後頭下筋群の拘縮、後頭下にある神経(大後頭神経、小後頭神経、第三後頭神経など)の絞扼、椎骨動脈の血流障害などが起こり、それが後頭下痛や頭痛を引き起こすようになります。

また、前方頚椎症候群には第1肋骨症候群が併発していることも多いです。第1肋骨症候群では第1肋骨のサブラクセーション、上部僧帽筋の過緊張が起こっています。これも肩こり、頚部痛、上肢痛の原因になります。

頭部前突位は外側翼突筋を伸張させます。外側翼突筋は顎関節の関節円板前部に付着しているため、この筋肉が伸張されることで、関節円板は前方に変位を起こします。

正常な顎関節では、口を開けた時に関節円板は前方滑りします。そのため、頭部前突位の患者では開口時に関節円板が過剰に前方滑りを起こし、それが顎関節症を引き起こします。

  • 頚部痛
  • 顎関節痛
  • 上背部痛
  • 肩痛
  • 腕痛
  • 上肢の筋力低下

検査

静的触診検査(スタティックパルペーション)

頚椎横突起の前側を触診し圧痛の有無を確認します。横突起の前側に鋭い圧痛が触診される場合、前方に変位(屈曲または前方回旋)している可能性があります。

また、第1肋骨にも圧痛が触診されます。第1肋骨の肋骨角(前側)を触診し圧痛の有無を確認します。

軟部組織では大胸筋や小胸筋、後頭下筋群、上部僧帽筋、肩甲挙筋などに圧痛が触診されます。

  • 頚椎の横突起前部
  • 第1肋骨(肋骨角)
  • 大胸筋
  • 小胸筋
  • 後頭下筋群
  • 上部僧帽筋
  • 肩甲挙筋

動的触診検査(モーションパルペーション)

下部頚椎の横突起前側に接触し、後方に引きます。

この時の硬さを触診します。

治療法

アジャスメント

  • 下部頚椎の回旋または屈曲変位
  • 第1肋骨の内旋変位

筋膜リリース

  • 大胸筋
  • 小胸筋
  • 後頭下筋群(大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋)
  • 上部僧帽筋
  • 肩甲挙筋
  • 前頚部中間層筋膜
  • 前頚部深層筋膜

神経リリース

  • 舌下神経

関連症状

胸郭出口症候群

胸郭出口症候群は腕神経叢や鎖骨下動静脈の絞扼症候群です。頚部から肩にかけての領域で絞扼されることで、上肢の痛みや痺れ、感覚鈍麻などの症状を引き起こします。

胸郭出口症候群には以下の4種類があります。

  1. 斜角筋症候群
  2. 頚肋症候群
  3. 肋鎖症候群
  4. 小胸筋症候群

第1肋骨フィクセーション症候群と関連性が強いのは肋鎖症候群です。

肋鎖症候群では腕神経叢や鎖骨下動静脈が、鎖骨と第1肋骨の間(肋鎖)で絞扼されることが原因となります。

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上位交差性症候群

上位交差性症候群では、上半身の前後筋肉のバランスに問題が生じています(下図)。

このような筋肉のバランスの問題により、脊柱のアライメントには以下の3つの問題が起こります。

  1. 胸椎の過剰後弯曲
  2. 頭部の前突
  3. 上腕骨頭の前方変位

これらの症状に伴い上部僧帽筋の拘縮が起こり、第1肋骨フィクセーション症候群が誘発されます。

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