手根管は手首の前側にあるトンネル構造です。
トンネルの床(下側)は手根骨、天井(上側)は屈筋支帯によって覆われています。
手根管には正中神経と9本の屈筋腱が走行しています。
正中神経はC4-T1脊髄神経由来の神経です。腕神経叢の内側神経束と外側神経束が合流した後、上腕部で正中神経となります。
その後、前腕前面の真ん中を下行し、いくつかの分岐を経て手根管を遠位に向かって走行しています。
原因
手根管症候群は、手根管における正中神経の絞扼障害です。男性に比べ女性が手根管症候群に罹患する可能性は3倍です。おそらく、男性に比べ女性の手根管が狭いからだと思われます。
具体的には以下のような原因(メカニズム)があります。
- タイピングなど手首の屈曲・伸展を繰り返す運動
- 甲状腺機能低下症、肥満、リューマチ、糖尿病
- 妊娠
症状
手根管症候群の主症状は、正中神経の知覚支配領域における手の痺れや痛み、感覚鈍麻です(下図)。
手の痛みや感覚鈍麻は徐々に悪化するケースが多いです。基本的には上図に示した正中神経の知覚支配領域に症状が現れます。
稀に前腕の方まで関連痛が広がることもあります。
夜間痛を訴えるケースもあります(寝ている時に症状が増悪して起きてしまう)。夜間痛は神経絞扼ではしばしば現れる症状です。
症状の進行とともに日中でも手に痛みや痺れを訴えるようになります。また、握力の低下や筋肉の痙攣などが現れることもあります。
手根管症候群が慢性化すると、母指球筋の委縮が起こります(下の写真)。
検査法
触診検査
手根管周辺にある軟部組織の触診を行い、圧痛や硬結などの有無を確認します。具体的には以下の構造です。
- 屈筋支帯
- 正中神経
- 屈筋腱
整形外科的テスト
手根管症候群の整形外科的テストにはティネル兆候があります。
手根管の上でタッピングを行い、手の症状(痺れや痛み)が増悪すれば陽性となります(下の写真)。
治療法
筋膜リリース
手根管(屈筋支帯)と屈筋腱のリリースを行います。
神経リリース
正中神経自体が症状に影響を及ぼしていることがあります。その場合、正中神経のリリースを行います。
アジャスメント
以下の部位に可動域制限(フィクセーション)が認められる場合、アジャスメントを行います。
- 豆状骨
- 舟状骨
- 橈骨遠位端
ホームエクササイズ
正中神経のモビリゼーションエクササイズを行います。
- 肘を完全伸展位に保つ
- 手首を背屈位にする
- 上記のポジション(最大ストレッチポジション)で30秒程度維持する
正中神経の絞扼障害
正中神経の絞扼障害は、手根管以外においても発生します。
- 内側二頭筋溝
- 円回内筋
- 浅指屈筋と深指屈筋の間
- 手根管
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