寛骨の関節運動学と関連症状

 

解剖学

寛骨は腸骨、坐骨、恥骨の3つの骨が癒合して形成されています(下図)。

腸骨、坐骨、恥骨

  1. 腸骨
  2. 坐骨
  3. 恥骨

 

関節運動学

寛骨の運動には以下の4方向があります。

  1. 前方回旋・後方回旋(AS/PI)
  2. 内方・外方(IN/EX)
  3. 外転・内転(AB/AD)
  4. 上方・下方(S/I)

上記は全てPSISの変位を示しています。

それぞれの運動について解説していきます。

前方回旋・後方回旋(AS/PI)

前方回旋(AS)

寛骨の前方回旋ではPSISが前上方へ変位しています(下図)。

寛骨のAS

後方回旋(PI)

寛骨の後方回旋ではPSISが後下方へ変位しています(下図)。

 

内方・外方(IN/EX)

寛骨が内方または外方へ変位すると、仙腸関節や股関節、周辺軟部組織への負荷増加が生じ、痛みや違和感の原因となります。

また、アジャスメントによって改善がおもわしくない場合、IN/EXが内在していることが多い

INもしくはEXがある場合、これらを治療することで、他の混在するサブラクセーションも同時に改善する場合があります。

内方(IN)

寛骨の内方変位では、PSISが内方へ変位しています(下図)。

 

外方(EX)

寛骨の外方変位では、PSISが外方へ変位しています(下図)。

 

外転・内転(AB/AD)

外転(AB)

寛骨の外転変位では、PSISが外転しています(下図)。

この時、仙腸関節の上部は離解、下部は圧迫されています。

内転(AD)

寛骨の内転変位では、PSISが内転しています(下図)。

この時、仙腸関節の上部は圧迫、下部は離解しています。

上方・下方(S/I)

寛骨の上方または下方への変位は、寛骨のサブラクセーション全体の10%から20%程度の割合で発生します。

AS/PIまたはIN/EXと混在していることがありまs。

上方(S)

寛骨の上方変位では、PSISが上方に変位しています(下図)。

寛骨の上方変位は、下肢伸展位での着地、でん部から転倒などで発生します。

また同側の腰方形筋、広背筋、大腰筋、外腹斜筋、内腹斜筋の過緊張が併発していることもあります。

下方(I)

寛骨の下方変位では、PSISが下方に変位しています(下図)。

寛骨の下方変位は稀なサブラクセーションです。

下肢に強い牽引の力が加わることで発生します。

関連症状

仙腸関節障害

仙腸関節障害では仙腸関節のサブラクセーションが起こっています。

症状は仙腸関節における鋭い局所痛です。また、でん部から下肢にかけて関連痛が広がる場合もあります(下図)。

 

恥骨結合炎

恥骨結合炎の原因には、感染症やスポーツ障害(傷害)、妊娠(産後)などがあります。

症状は恥骨結合の局所的な鋭い痛みです。

ダッシュやスクワットなどで痛みが増悪します。またサッカーでボールを蹴る瞬間に恥骨結合に鋭い痛みが現れる場合もあります。

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