肩甲背神経はC5頚神経から分岐した後、菱形筋の下層を肩甲骨内側縁に沿って下行しています。(下図)。
肩甲骨の挙上と外転をコントロールしています。
本記事では肩甲背神経の走行や絞扼箇所などについて解説してあります。
走行
肩甲背神経は、C5頚神経(前枝)から分岐(75%)した後、前斜角筋の下を中斜角筋に向かって走行しています。
(参考文献;Surgical anatomy of the dorsal scapular nerve.)
中斜角筋の筋腹を貫通(74%)した後、肩甲挙筋の下を下行します。この時、肩甲挙筋に向かって分岐があります。
その後、肩甲骨内側縁に沿って下行し菱形筋に終止しています。
機能
知覚
肩甲背神経には知覚機能はありません。
運動
肩甲背神経の支配筋は以下の通りです。
- 肩甲挙筋
- 小円筋
- 大円筋
肩甲背神経が肩甲挙筋にのみ支配を持つケースがおよそ48%、また肩甲挙筋と菱形筋に支配を持つケースは52%です(参考文献)。
絞扼箇所
肩甲挙筋の絞扼箇所は以下の通りです。
- 中斜角筋
- 肩甲挙筋
- 菱形筋
上記3か所の中で特に中斜角筋による絞扼が好発します。
関連症状
肩甲背神経絞扼症候群
肩甲背神経が中斜角筋において絞扼を受けることで現れる症状が、肩甲背神経絞扼症候群です。
肩甲背神経が絞扼されることにより、上記で解説した3つの筋肉(肩甲挙筋、小菱形筋、大菱形筋)の機能低下が起こります。
そのため、肩甲骨が外方に変位(上方回旋変位)します、また、肩甲骨の不安定性が生じることで翼状肩甲骨が生じることもあります。
また、症状が慢性化すると菱形筋の委縮が起こります(気づかれないことが多い)。
肩甲背神経に知覚機能はありませんが、肩甲背神経の絞扼により中背部(肩甲骨内側)や頚部~上肢にかけて痛みが現れることがあります(下図)。
また、比較的稀ですが胸部に痛みが現れることもあります。
胸郭出口症候群
肩甲背神経絞扼の好発部位は中斜角筋です。
そのため、肩甲背神経絞扼症候群には胸郭出口症候群(特に斜角筋症候群)が併発していることがあります。
斜角筋症候群では、前斜角筋と中斜角筋の間で腕神経叢や鎖骨下動静脈が絞扼されます。上肢の痛みや痺れ、感覚鈍麻などが特徴的な症状です。
胸郭出口症候群は腕神経叢や鎖骨下動静脈の絞扼症候群です。頚部から肩にかけての領域で絞扼されることで、上肢の痛みや痺れ、感覚鈍麻などの症状を引き起こします。 こちらがLindgrenらによる胸郭出口症候群の定義です。 上肢に痛み、感覚[…]
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