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 外側上顆炎は1873年にRungeによって初めて報告された症状ですが、『テニス肘』という言葉は1883年にMajorによって初めて使われました。

 テニス肘とも呼ばれており、肘関節の痛みで最も多い症状です。患者の多くは30歳以上であり、全人口の1%から3%の人に影響しています(https://goo.gl/jb3AGt)。しかし、テニスによってテニス肘になる人の割合は5%から10%程度であり、殆どの患者は運動ではなく日々の生活習慣が原因の一部になっています(https://goo.gl/WU2s78)。

症状

 主な症状は肘外側の痛みです。局所的な鋭い痛みが特徴であり、しばしば前腕外側の関連痛を引き起こします。また、握力の低下や手で物を掴んで持ち上げる動作の時に痛みの増悪を訴えるケースが多いです。

 外側上顆炎の併発症状に橈骨管症候群と腕橈関節の後外方回旋不安定性(PLRI=Posterolateral rotatory instability)があります。橈骨管症候群では、肘外側から前腕外側、手背にかけて関連痛が現れます。肘外側において後骨間神経(橈骨神経の分枝)が圧迫されています。また、腕橈関節のPLRIでは外側側副靭帯複合体の機能低下が主要因であると言われています。

原因

 この疾患の病態は、『外側上顆に起始を持つ筋肉の腱症』であり、腱炎ではありません(腱症とは腱の変性のことです)。発生機序はどちらも反復刺激ですが、腱症ではコラーゲン線維の破壊と線維化、腱炎ではマイクロトラウマと炎症反応が起こります(表1)

表1 腱症と腱炎の比較

 腱に伸張負荷が加わるとコラーゲンの線維化(線維形成)が起こります。線維化によって拘縮した腱にさらに伸長負荷が加わることでマイクロトラウマ(微細外傷)が生じ、それが腱の変性へと進行します。この状態が腱症です。

組織学的にはタイプⅢコラーゲン線維(未成熟)の増加(健康な腱にはタイプⅠコラーゲン線維(成熟)が多く占めています)が生じています。また、コラーゲン線維の破壊に伴い、腱が伸張負荷に対して脆弱になり、血流の減少も起こります(血流の減少は組織の著しい回復遅延の原因になります)。

 痛みの原因構造には、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、回外筋、肘筋、総指伸筋などがあります。特に短橈側手根伸筋は外側上顆炎の好発部位となっています(図1)。これらの筋肉に反復負荷(運動、マウス操作、タイピングなど)が加わることで発症します。また、肥満や喫煙もリスク要因と言われています。

図1 前腕の伸筋群

検査

 外側上顆炎の整形外科的検査には様々なものがあります。ミルズテスト(Mill's test))やコーゼンテスト(Cozen's test)は、その代表的なものです。中指伸展抵抗テストは短橈側手根伸筋腱に特化した検査であり、陽性の場合、外側上顆付近に鋭い局所痛が現れます。

写真1 中指伸展抵抗テスト
中指に屈曲方向の抵抗負荷をかける
写真2 チェアテスト
椅子の背もたれを両手で持ち手首を伸展させる

触診では外側上顆の遠位1~2㎝の範囲に鋭い圧痛が生じます(写真3)。また、この領域の持続圧もしくはタッピングにより前腕後面から手背にかけて関連痛が現れる場合、橈骨管症候群の可能性があります。また、中指伸展抵抗テストで同じ領域に関連痛が現れる場合も同様です。

写真3 外側上顆炎の圧痛点
外側上顆の遠位1~2㎝に鋭い圧痛が触診される

治療

 前腕伸筋腱の癒着と線維化の改善の方法の一つにミルズマニピュレーションがあります。ミルズマニピュレーションは以下の手順で行います。

  1. 背もたれによりかかって椅子に座ってもらう。
  2. 患者の肩関節を伸展位+内旋位に維持する(肘関節はやや屈曲位)。
  3. 次に患者の手首を完全屈曲位、前腕を回内位に維持する。
  4. 患者の外側上顆に母指先端で接触し、もう一方の手で患者の手首をつかむ。
  5. 患者の肘関節を伸展させながらスラストを加える。

また、橈骨頭の運動障害の有無を確認し必要ならば対応します。特に慢性的な外側上顆炎にPLRIは併発していることが多いので要注意です。

ホームエクササイズは前腕伸筋群に対して伸張性収縮運動を行うように指示します。また、患部は冷やすのではなく温めるようにします(外側上顆炎では炎症反応が生じていない)。温めることで変性部位の血流量を増加させ組織の再生を促すのが目的です。

 イブプロフェンや非ステロイド系抗炎症薬による治療は、コラーゲン線維の修復を阻害すると言われており、腱症の治療には不適切と考えられます。また、コルチコステロイド注射も腱断裂のリスクを高めることが示唆されています。

 1872年にDuplayによって“関節周囲炎”という言葉が初めて使われた後、1934年にはCodmanによって“五十肩(Frozen shoulder)”と命名されました。“癒着性関節包炎”は1945年にNeviaserにより付けられた疾患名です。

症状

 癒着性関節包炎の症状の特徴は、肩関節の痛みと可動域制限です。痛みは鋭い深部痛であることが多く、上腕外側から肘にかけて関連痛が現れることもあります。発症初期の頃は夜間痛(痛みのために就寝中に目が覚める)を訴えるケースもあります。癒着性関節包炎の症状の進行には、以下の3段階があります。

  1. 凍結期
  2. 拘縮期
  3. 融解期

 凍結期は症状(痛みと硬さ)が最も強く現れます。そのため、服の袖に腕を通したり、髪の毛を洗ったりなどの日常生活に支障をきたします。その次は拘縮期になります。拘縮期では痛みが徐々に和らいでいきますが、症状の進行に伴い関節包の線維化が悪化するため、肩関節の可動域制限が顕著となります。最後の融解期は痛みも硬さも徐々に和らいでいき、症状は改善へ向かいます。しかし、肩関節にやや硬さが残ることがあります(日常生活に支障はきたさない程度)。表1にそれぞれのステージにおける症状の特徴と持続期間をまとめておきます。

表1  癒着性関節包炎の各ステージの症状と持続期間

 また、癒着性関節包炎の患者の多くに肩峰下包炎、三角筋下包炎(図1)が併発(約45%の患者)しており、肩関節の可動域制限や動作痛の原因になっています(表2)。

図1 三角筋下包と肩峰下包

肩関節の関節包で発生した炎症物質が、三角筋下包や肩峰下包へと伝搬され二次性に炎症反応を引き起こします。

癒着性関節包炎に併発している症状
肩峰下包炎、三角筋下包炎(45%)肩甲上腕関節の腫脹(35%)ローテーターカフ腱炎(15%)棘上筋腱の石灰化(2.5%)
参考文献;https://goo.gl/eqT3j7 

原因

 癒着性関節包炎の原因は不明ですが、病生理学的な機序は次第に明らかになってきています。糖尿病や甲状腺機能異常、デュピュイトラン拘縮(Dupuytren's contracture)*、免疫機能が低下しているケースでは、癒着性関節包炎を併発している割合が高いことがわかっています(糖尿病患者は非糖尿病患者の約5倍のリスク)。これらの症状に共通しているのが『慢性炎症』です。慢性炎症が関節包の炎症を引き起こしている可能性もあります。

デュピュイトラン拘縮(Dupuytren's contracture)*  
デュピュイトラン拘縮は、手掌腱膜の線維化により指(特に尺側)が屈曲位に拘縮してしまう疾患です。原因は不明ですが、遺伝による影響が大きいと言われています。

癒着性関節包炎では、肩関節の関節包の一部に癒着や炎症、変性(肥厚、拘縮など)が起こっています。また、ローテーターカフ腱(特に棘上筋腱)の石灰化が肩関節の痛みと可動域制限を引き起こしているケースもあります。癒着の好発部位は、棘上筋と肩甲下筋の間隙の腱板疎部(RI=Rotator interval)と呼ばれる領域です(図2)。

図2腱板疎部(RI) 棘上筋腱と肩甲下筋腱の間隙領域は腱板疎部と呼ばれています。腱板疎部には、烏口上腕靱帯、上肩甲上腕靱帯、肩甲上腕関節の関節包があります。


癒着性関節包炎は、一次性と二次性の2つに分類されます。一次性癒着性関節包炎では、徐々に症状の増悪が起こり原因は不明です(一次性癒着性関節包炎は特発性癒着性関節包炎とも呼ばれています)。二次性癒着性関節包炎は、発症のタイプによってさらに3つに分類されます。

一次性癒着性関節包炎に比べ二次性癒着性関節包炎の方が、予後経過(治療への反応)が思わしくない傾向があります(https://goo.gl/UKhjQF)。各類の詳細は表3を参照ください。

癒着性関節包炎の分類
一次性(特発性)癒着性関節包炎  
自覚症状の引き金になるような疾患や原因は不明

二次性癒着性関節包炎
1. 内因性
ローテーターカフ腱障害(腱の炎症や部分/完全断裂など)、上腕二頭筋長頭腱障害(腱の炎症や石灰化など)
2. 外因性
胸部の手術歴、頚椎ヘルニア、脳血管障害歴、骨折歴(上腕骨、肩甲骨、鎖骨など)
3.全身性疾患、糖尿病、甲状腺機能障害(低下症または亢進症)、腎不全など

検査

 肩甲上腕関節の関節包全体の触診検査を行います。特に関節包前部に圧痛や癒着、拘縮が触診される傾向があります。また、三角筋停止部(三角筋粗面)周辺や三角筋前部線維束と上腕二頭筋長頭の境界領域にも圧痛が触診されることがあります。

 癒着性関節包炎では、可動域制限の現れ方に特徴があります。特に外旋の可動域制限が強く現れます。その次に制限されるのが外転と屈曲、殆ど影響を受けないのが伸展と内転です。このような可動域制限は『関節包パターン』と呼ばれています。

肩関節の関節包パターン
1.外旋
2.外転
3.屈曲

注1)外旋>外転>屈曲の順番で可動域制限が強く現れる
注2)伸展と内転は殆ど制限されない

 関節包の拘縮による関節の可動域制限は、関節包の拘縮部位によって変化します(拘縮部位が伸張される方向に可動域制限が起こります)。例えば、肩関節の関節包前部に拘縮がある場合、外旋制限が強く現れます(肩関節外旋時に上腕骨頭には前方滑りが起こります)。一方、関節包後部に拘縮がある場合、内旋制限が顕著になります。

肩関節の関節包パターン

治療

 癒着性関節包炎では肩関節の関節包に拘縮や癒着、線維化が生じることで、痛みや可動域制限などの症状が現れます。従って、徒手的には関節包に生じているこれらの問題を改善させることが目標になります。関節包の問題が改善されるに伴い、患者の自覚症状(動作痛と可動域制限)も改善されていきます。

 また、『慢性炎症』への対応も必要です。これは主に食事によってコントロールすると良いでしょう。基本的には抗炎症作用のある栄養成分の摂取を心がけます。代表的なものは以下の通りです。

  1. オメガ3脂肪酸
  2. リコピン
  3. ターメリック

 オメガ3脂肪酸はサーモンやアーモンドに多く含まれています。またリコピンはトマトやピーマン、かぼちゃなどの野菜類、ターメリックはカレーなどに使われる香辛料です。これらはサプリメントによって摂取することもできます。また腸内環境の悪化は炎症物質の産生を高める可能性があるため、腸内フローラを良好に保っておくことも大切です。そのために、ヨーグルトや納豆、甘酒などの発酵食品を積極的に摂取すると良いでしょう。また消化酵素やプロバイオティクス(乳酸菌、ビフィズス菌など)、プレバイオティクス(食物繊維、オリゴ糖など)のサプリメントの摂取も推奨されます。

 ホームエクササイズでは、関節包のストレッチが推奨されます。関節包の拘縮部位に応じてストレッチ法を変えます。以下に肩関節の関節包前部と後部のストレッチ法についてまとめておきます。

関節包前部のストレッチ

  1. 仰臥位において肘関節を90°屈曲位、肩関節は90°外転位に維持する。
  2. 上記の姿勢を維持したまま、ゆっくりと肩関節を外旋させる。
  3. 最大外旋位において5分から10分程度維持する(2kgから5kg程度のウエイトを手に持って行うことでより強いストレッチが可能になります)。

関節包後部のストレッチ

  1. 立位(または座位)において肘関節を90°屈曲位、肩関節は90°屈曲位に維持する。
  2. もう一方の手と肘をそれぞれ、反対側の肘と手の上に置く。
  3. 患側の肘を支点にして上側の肘で下側の手を下方へ押す。
  4. 最大内旋位で30秒から1分程度維持する。

 オスグッド・シュラッター病は、アメリカ人の整形外科医Robert Osgood (1873-1956)とスイス人の外科医Carl Schlatter (1864-1934)の2人の名前から命名されました。

 この疾患は小学生から高校生にしばしば見られる脛骨粗面の骨軟骨炎(成長骨端炎)です。ジャンプ動作やランニングの反復などで症状が悪化することが多いため、何らかの運動を行っている小中高生(男子は12歳から15歳、女子は8歳から12歳)に好発します。また、女子よりも男子に多く認められる傾向がありますが、昨今は女子の運動参加率が上昇しているため、男女比は拮抗しています。

症状

 主訴は脛骨粗面(膝前側)の鋭い局所痛です。痛みは階段の上り下りやジャンプ、ランニングなどの反復動作により徐々に悪化していきます。脛骨粗面の肥大が認められることもあります。片側にのみ症状が現れているケースが多いですが、両側に症状を訴える場合もあります。また、休息時に痛みは自覚されないことが多いですが、炎症反応が強い場合、その限りではありません。膝関節のロッキングや突発的な脱力などの症状は稀です。症状の程度は、痛みの持続時間によって3つに分類されています(以下参照)。

オスグッド・シュラッター病の症状の程度
グレード1;運動後に痛みの増悪が起こるが24時間以内に無痛になる
グレード2;運動中または運動後に痛みの増悪が起こり、24時間以上持続する グレード3;常時痛みがあり、運動や日常生活に支障をきたしている

原因

 オスグッド・シュラッター病では、脛骨粗面に繰り返し牽引負荷が加わることが発症のメカニズムとなります。

 大腿四頭筋腱は膝蓋骨に付着しており、膝蓋靭帯を介して脛骨粗面に停止部を持っています(図1)。従って、膝関節の屈曲・伸展が反復されることにより大腿四頭筋の伸縮が起こり、脛骨粗面には牽引負荷が加わります。

1 膝の周辺構造

 膝蓋靭帯は膝蓋骨尖(膝蓋骨下端)から脛骨粗面に伸びています。大腿四頭筋腱は膝蓋骨底(膝蓋骨上端)に付着しており、大腿四頭筋で発生したエネルギーは膝蓋靭帯を介して脛骨粗面まで伝達されます。

 患者が成長期の場合、脛骨粗面の骨端はまだ閉じておらず構造的に脆弱になっています。そのため、この部分に牽引負荷が加わることで、炎症反応が引き起こされます。また、過剰な負荷が加わることにより骨端の剥離骨折が生じることもあります。

 脛骨近位端には、近位脛骨骨端と脛骨粗面の2つの骨化中心があり、これらの骨化中心は軟骨橋によって区切られています(図2)。骨化前の脛骨粗面は線維軟骨(牽引負荷に対して強い抵抗力を示す)がその主構成成分ですが、骨化に伴い脆弱な軟骨細胞に置き換わります。そのため、この時期において脛骨粗面は剥離骨折のリスクがより高いと考えられます。

図2 脛骨遠位端にある二つの骨化中心

軟骨橋によって、近位脛骨骨端と脛骨粗面は区分されています。

脛骨粗面の剥離骨折の6分類

脛骨粗面の剥離骨折には大きく6つに分類されます。タイプⅠは軽度の剥離骨折であり、患者は膝関節の伸展可動域は正常に保たれていることもありますが、タイプⅡ(中度)、またはタイプⅢ(重度)では荷重位において膝関節の伸展に伴い強い痛みが現れます。特にタイプⅢでは、関節内において出血が伴っている場合があり、出血による関節の腫脹が認められるようになります。

図3 剥離骨折の6分類

タイプⅠ(軽度):剥離骨折は脛骨粗面にある骨化中心の遠位部において生じている。
タイプⅡ(中度):骨折線が軟骨橋まで及んでいるが、関節軟骨には損傷がない。
タイプⅢ(重度):骨折線が軟骨橋と骨端線にまで広がっている(関節内骨折)。

検査

 触診検査では脛骨粗面における炎症反応(熱感、腫脹、発赤)の有無を確認します。次に脛骨粗面の膝蓋靭帯付着部位における圧痛を触診します。その際、脛骨粗面の上内側、上側、上外側の3か所において触診を行い、それぞれの箇所における圧痛の程度を(患者に聞いて)判断します(それぞれ図4A、B、C)。

図4A 脛骨粗面上内側の触診
図4B 脛骨粗面上側の触診
図5C 脛骨粗面上外側の触診

 脛骨粗面の触診では脛骨粗面の近位に接触し、A~Cの3つの方向に圧迫して行います。矢印は圧迫方向を示します。

 次に膝関節伸展の自動的または抵抗運動(アイソメトリック)検査を行います。抵抗運動検査では膝関節を①30度屈曲位、②90度屈曲位、③完全屈曲位の3つのポジションにおいて行うようにします。陽性反応は症状(痛み)の増悪です。膝関節の屈曲角度を大きくすると、膝蓋靭帯が伸張されるため、抵抗運動検査ではより痛みの増悪が現れやすくなります。従って、上記の3つのポジションにおいて抵抗運動検査を行うことで症状の程度を推察することができます(症状の程度は①重度、②中度、③軽度となります)。

 炎症反応が強く表れている場合、膝関節の他動的屈曲検査においても陽性反応が現れます。この場合、膝関節の屈曲角度が大きくなるに従い、痛みの増悪が起こります。

 オスグッド・シュラッター病と脛骨粗面の剥離骨折の鑑別診断は、荷重位における患者の反応を見るようにします。通常、剥離骨折の場合、強い痛みのために荷重位が困難です。一方、オスグッド・シュラッター病の場合、荷重位において若干の痛みの増悪が起こり得ますが問題ありません。また、剥離骨折では急激に痛みが現れるのに対し、オスグッド・シュラッター病では徐々に痛みの増悪が起こるという違いもあります。

 剥離骨折以外の鑑別診断にはジャンパー膝、膝蓋大腿関節痛症候群(Patellofemoral pain syndrome)、膝蓋下脂肪体炎があります。これら4つの症状は、痛み(または圧痛)が生じる部位によってある程度鑑別することが可能です(図6)。オスグッド・シュラッター病と膝蓋大腿関節痛症候群では、それぞれ痛みは脛骨粗面と膝蓋骨尖に局在化しています。一方、膝蓋大腿関節痛症候群と膝蓋下脂肪体炎では、痛みは散在化しています。

図6A
図6B
図6C
図6D

 オスグッド・シュラッター病では、痛みは脛骨粗面に局在(A)していますが、ジャンパー膝では膝蓋骨尖に痛みが現れます。また、膝蓋大腿関節痛症候群では膝蓋骨または大腿骨の関節軟骨に痛みが広がっており(C)、膝蓋下脂肪体炎では膝蓋靭帯の直下に痛みが広がっています(D)。

治療

 脛骨粗面の構造的問題については徒手的には対応不可能です。従って、膝関節の機能的問題を改善させていくことになります。機能的問題では脛骨粗面への負荷が増加する原因を考察します。

 一つ目は膝蓋大腿関節の運動障害です。膝蓋骨と脛骨粗面は膝蓋靭帯によって繋がっています。従って、この関節に運動障害がある場合、脛骨粗面への負荷に影響を及ぼすようになります。また、膝蓋骨は大腿四頭筋からの影響を受けやすいため、ホームエクササイズは大腿四頭筋のストレッチを行ってもらうようにします。

 二つ目は大腿脛骨関節の運動障害です。膝関節伸展の最終可動域において脛骨には外旋が起こります。これはスクリューホームメカニズムと言われています(逆に屈曲の初動では脛骨は内旋します)。スクリューホームメカニズムの障害により、膝蓋靭帯へかかる負荷には変化が生じます。従って、大腿脛骨関節の屈曲・伸展に伴う内旋・外旋の運動障害の有無を検査し、異常があれば治療するようにします。また、脛骨の外旋制限が強い場合、膝窩筋の硬縮(短縮)が原因となっていることがあります。

 腱板(ローテーターカフ)は棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉で構成される筋群の総称です。肩関節の安定性にとって非常に重要な役割を果たしており、これらの筋肉の機能低下は直接的に肩関節の不安定性を引き起こします。

 腱板断裂は変性の進行が潜在的要因となっているケースが多く、そのため40代以上に多発します。

症状

痛みは肩関節の前上部に局在し、上肢の挙上に伴い鋭い痛みが現れます。また肩関節の不安定感や力が入りにくい感覚(筋力低下)を訴える場合もあります。特に棘上筋腱の完全断裂では筋力低下は顕著となり、上肢の挙上そのものがほぼ不可能であることもあります。

原因

ローテーターカフ断裂の好発部位は棘上筋です。断裂部位は以下の2か所が考えられます。

  1. 停止部
  2. 筋腱部

これら2か所の内、筋腱部においてより断裂が生じやすい傾向があります。棘上筋の筋腱部はクリティカルゾーンと呼ばれており、この領域では急激に血液供給が減少しています(図1)。さらに、肩関節の動きに伴い上腕骨頭からの負荷(圧迫や摩擦)がかかりやすい領域でもあります。以上のことから、棘上筋の筋腱部が断裂の好発部位となっていると思われます。また、クリティカルゾーンは変性の好発部位にもなっています。

断裂は転倒時に手を付いた時など、急激に負荷がかかり損傷するケースがあります。しかし、変性の進行により靭帯がもろくなり断裂してしまうケースが多いです。

図1 右上肢上面図

クリティカルゾーンは棘上筋の筋腱部にあり、血液供給が急激に減少(虚血)しているため、損傷や変性の好発部位となっています。

検査

 棘上筋腱に損傷がある場合、エンプティカンテストにおいて陽性となります。また、肩甲下筋腱の場合、リフトオフテストで陽性となります。これらの検査ではいすれも筋力低下と痛みの増悪が陽性反応となります。

 棘上筋腱の触診検査では、肩関節伸展位において肩鎖関節の直下に鋭い局所痛が触診されます(図2)。また肩甲下筋腱は、小結節内側(停止)および三角筋胸筋三角(肩関節中立位)において圧痛が触診されます(図3)。

図2

 

棘上筋の筋腱部は肩関節伸展位において、肩鎖関節の直下で触察が可能となります。

図3

肩甲下筋の筋腱部は三角筋胸筋三角において触察可能です。

治療

 部分断裂の場合、最初に他動的可動域の改善を行います。その後、自動的可動域の改善へと治療を進めていきます。インピンジメント症候群が伴っている場合、肩鎖関節、さらに肩甲胸郭関節の運動障害を診るようにします。肩鎖関節では、上肢挙上時における鎖骨遠位端の後方回旋が制限されていることが多く、肩甲胸郭関節では肩甲骨の不安定性が認められることが多いです。