内側広筋の解剖学と関連症状

内側広筋は大腿四頭筋の一部です。

大腿四頭筋には大腿直筋、外側広筋、内側広筋、中間広筋の4つの筋肉があります。

内側広筋の一部にはVMOと呼ばれる部位があり、膝蓋骨の運動に多大な影響を与えます。

本記事では内側広筋の解剖学と関連症状について解説してあります。

  1. 大腿直筋
  2. 外側広筋
  3. 内側広筋
  4. 中間広筋

解剖学(起始・停止・作用・神経支配)

起始:大腿骨粗線

停止:膝蓋骨底、脛骨粗面(膝蓋靭帯を介して)

作用:膝関節の伸展

神経支配:大腿神経、L2-L4

膝関節の安定化

大腿四頭筋の停止は膝蓋骨底、そして膝蓋靭帯を介して脛骨粗面にあります。

従って、膝蓋骨の運動にダイレクトに影響を及ぼします。

大腿四頭筋の中でも特に内側広筋は膝蓋骨の運動に影響を与えると言われています。

膝蓋骨の運動への影響

最初に大腿四頭筋全体が膝蓋骨に対してどのような力学的影響を与えているかについて解説します。

大腿四頭筋のそれぞれの筋線維の走行(青矢印)を考慮すると、膝蓋骨に対してはやや外方(赤矢印)にベクトルが向いています。

従って、膝関節を伸展させていくと、膝蓋骨はやや外方向へ向かって上方に変位します。

VMOの解剖と機能

VMOは”Vastus medialis obliquus”の頭文字を取っています。日本語では、「内側広筋斜線維束」となります。

VMOの解剖

VMOは内側広筋の遠位部(膝蓋骨の近位部)にある筋線維束のことです(下図)。

VMOは解剖学的な部位ではなく、生理学的な部位です。従って、筋線維が他の部位と分かれているわけではありません。

VMOの機能

VMOは膝蓋骨の運動を安定化する機能があります。

従って、膝蓋骨の運動障害が認められる場合、VMOの機能低下が起こっている可能性があります(膝蓋骨の運動障害の改善のためには、VMOの機能改善がカギになります)。

関連症状

大腿四頭筋の関連症状には以下の2つがあります。

  1. 膝蓋大腿関節(膝蓋骨)の運動障害
  2. ジャンパー膝
  3. 骨化性筋炎
  4. 内転筋管(ハンター管)症候群

膝蓋大腿関節(膝蓋骨)の運動障害

内側広筋(VMO)は機能低下が起こりやすい傾向があります。

その一方で外側広筋は過緊張状態になりやすいです。

従って、膝蓋骨は外方へ強く牽引されることで、運動障害が引き起こされます(下図)。

膝蓋骨の運動障害により、膝蓋大腿関節の関節軟骨の一部により強い圧迫負荷がかかるため、関節軟骨の摩耗(変性)が起こります(下図)。

 

ジャンパー膝

ジャンパー膝はオスグッド病の成人版です。

膝蓋靭帯炎であり、膝蓋靭帯の膝蓋骨側の付着部に痛みが現れます(下図)。

ジャンパー膝内転筋管(ハンター管)症候群

内転筋管は大腿近位の内側、内側広筋の内側にある、腱様の軟部組織で覆われたトンネル構造のことです。ハンター管とも呼ばれています。

内転筋管には大腿動脈、大腿静脈、伏在神経が走行しています。

内転筋管症候群は、内転筋管における伏在神経の絞扼症候群のことです。伏在神経は内転筋管を出た後、膝蓋下枝と内側下腿皮枝に分岐しています。

内転筋管症候群の症状は、膝内側から下腿内側にかけての痺れや痛みなどの知覚異常です。

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