僧帽筋の解剖学と関連症状

僧帽筋は頭頚部から胸椎、肩甲骨、鎖骨にかけて伸びる大きな筋肉です。

部位により、上部、中部、下部に分けることができます。

主に肩や首の動きに影響を与えます。

本記事では僧帽筋の解剖学と関連症状について解説してあります。

解剖学

起始;上部僧帽筋-後頭骨、項靭帯、中部僧帽筋-C7-T4(棘突起)、下部僧帽筋-T5-T12(棘突起)

停止;鎖骨遠位1/3、肩峰、肩甲棘

作用;肩甲骨の挙上、下方回旋、内転

神経支配;脊髄副神経、C2-C4

 

関連症状

翼状肩甲骨症

翼状肩甲骨とは、肩甲骨内側縁が胸郭から離れ後方に突出した状態のことです(下の写真)。

翼状肩甲骨症の原因には主に以下の3つがあります。

  1. 長胸神経障害
  2. 肩甲背神経障害
  3. 副神経障害

長胸神経障害により前鋸筋の機能低下が起こります。

また、肩甲背神経障害では菱形筋、副神経障害では僧帽筋の機能低下により翼状肩甲骨症が引き起こされます。

翼状肩甲骨症によって以下のような症状が現れます。

  • 肩関節の不安定性(肩の下制)
  • 肩、首、上背部の痛み
  • 上肢の運動に伴う捻髪音
  • 疲労感

インピンジメント症候群

肩関節の挙上(外転、屈曲)では、上腕骨頭に上方回転と下方滑りという2つの運動が起こっています(下図)。

しかし、インピンジメント症候群では下方滑りに対して上方回転がより大きな割合で起こっています。そのため、肩の挙上に伴い上腕骨頭の上方変位が生じます。

肩挙上に伴う過剰な上腕骨頭の上方変位は、烏口肩峰下スペースの狭窄を引き起こします。

上部僧帽筋が短縮することで、肩甲骨は下方内旋します。

 

 

その際、肩甲骨の関節窩は下向きになります。

そのため、上肢挙上に伴い上腕骨の大結節と烏口肩峰アーチにインピンジメント(烏口肩峰下スペースの狭窄)が発生します。

インピンジメント症候群については以下の記事で詳細をご確認ください。

関連記事

メカニズム インピンジメント症候群では肩関節の運動障害が起こっています。 肩関節の挙上(外転、屈曲)では、上腕骨頭に上方回転と下方滑りという2つの運動が起こっています(下図)。 しかし、インピンジメント症候群では下方滑[…]

関連動画

 

 

解剖学の勉強に必須の書籍

イラストの美しさと解剖学的正確さで世界的に定評のある『ネッター解剖学アトラス』の第6版。 今改訂では図の追加・入れ替えに加え、各章末に主要な筋の起始・停止などをまとめた表が掲載。

これまで以上により深い知識を得ることができるようになった。また、前版で好評であった学習サイトStudent Consult(英語版)も引き続き閲覧可能。

学生、研究者からすべての医療従事者に支持される解剖学アトラスの決定版(アマゾンより)

 

大好評のプロメテウス解剖学アトラス、解剖学総論/運動器系が待望の改訂。美麗なイラストに的確な解説文を組み合わせた従来の良さ・強みを残したまま、図版の配置や解説文の推敲を重ね、さらなるわかりやすさを追求している。医師・医学生にとどまらず、全ての医療職の方々から支持される理由は、手に取れば自ずと理解されるだろう。さらに洗練された解剖学アトラスの最高峰。プロメテウスの進化は止まらない(アマゾンより)。

関連記事

菱形筋には大菱形筋と小菱形筋によって構成されています。肩甲骨と脊椎の間にある筋肉であり、肩甲骨の安定性や脊椎の姿勢にとって重要な筋肉です。本記事では菱形筋の解剖学と関連症状について解説してあります。

関連記事

菱形筋には大菱形筋と小菱形筋によって構成されています。 肩甲骨と脊椎の間にある筋肉であり、肩甲骨の安定性や脊椎の姿勢にとって重要な筋肉です。 本記事では菱形筋の解剖学と関連症状について解説してあります。 解剖学 大菱形筋 […]

 

むち打ち症の主訴は頚部痛ですが、頭痛や吐き気、重度の肩こり、上肢への関連痛などが伴うこともあります。

関連記事

『むち打ち症』という言葉は1928年に初めて使われました。ケベックタスクフォース(QTF)によるむち打ち症は、「主に自動車事故において後方もしくは横から追突されることによって生じる骨または軟部組織の傷害であり、急激な加減速メカニズムによ[…]

 

肩甲挙筋は頚椎から肩甲骨(上角)に向かって伸びている筋肉です。肩甲挙筋のコンディションは、頚椎の姿勢や肩関節の運動に影響を及ぼします。また上背部の痛みを引き起こすこともあります。本記事では肩甲挙筋の解剖学と関連症状について解説してあります。

関連記事

肩甲挙筋は頚椎から肩甲骨(上角)に向かって伸びている筋肉です。 肩甲挙筋のコンディションは、頚椎の姿勢や肩関節の運動に影響を及ぼします。また上背部の痛みを引き起こすこともあります。 本記事では肩甲挙筋の解剖学と関連症状について解[…]

 

斜角筋のコンディションは、頚椎の姿勢や呼吸に影響を及ぼします。また上肢の痺れなどの症状の原因にもなります。本記事では斜角筋の解剖学、バイオメカニクス、関連症状について解説してあります。

関連記事

斜角筋には前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋の3種類あります。全て頚椎から肋骨(第1・2肋骨)に向かって伸びている筋肉です。 斜角筋のコンディションは、頚椎の姿勢や呼吸に影響を及ぼします。また上肢の痺れなどの症状の原因にもなります。 […]

記事はいかがでしたか?

こちらには記事を読んでいただいた方にもっとも適した広告が表示されます。

最新情報をチェックしよう!