棘上筋の解剖学(起始・停止・作用・神経支配)と関連症状

棘上筋の以下の項目について解説していきます。

  1. 解剖学
  2. 肩関節の安定化
  3. クリティカルゾーン
  4. 関連症状

解剖学(起始・停止・作用・神経支配)

起始:棘上窩

停止:大結節

作用:肩関節の外転、肩関節の安定化

神経支配:肩甲上神経

肩関節の安定化

棘上筋の重要な機能の一つに肩関節の安定化があります。特に上肢挙上の初動時(~20°)において機能しています。

また棘上筋は関節包と癒合部位をもっており、これら2つの構造には相互作用があります。

関節包には固有受容器が密に存在しており、肩関節の位置覚にとって重要な役割を担っています。

  1. 棘上筋と関節包の癒合
  2. 固有受容器
  3. 上肢外転の初動

棘上筋と関節包の癒合

棘上筋と関節包は癒合しています。また、他のローテーターカフ(棘下筋、小円筋、肩甲下筋)も全て関節包と癒合しています。

従って、棘上筋の状態は関節包に直接的な影響を与えます。

固有受容器

肩関節の関節包や棘上筋腱には固有受容器が発達しています。

固有受容器は関節の位置覚(ポジションセンス)をコントロールしています。位置覚が正常に機能することで、肩関節の安定性が維持され、関節可動域が正常に保たれます。

つまり、棘上筋や関節包が正常であることは、肩関節の安定性にとって大変重要なことになります。

上肢外転の初動

棘上筋による肩関節の安定化は、上肢挙上の初動(~20°)で特に大きな影響を持っています。

従って、棘上筋の機能低下がある場合、特に上肢挙上の初動時に肩関節の不安定性が現れます。

クリティカルゾーン

棘上筋の筋腱部をクリティカルゾーンと言います。

通常、筋腹には豊富に血液供給がありますが(血管が発達)、腱への血液供給は貧弱です。従って、筋腱移行部は血液供給が極端に減少(虚血)します。

そのため、クリティカルゾーンは変性の好発部位となるため、棘上筋筋腱の断裂がしばしば起こります。

棘上筋の関連症状

棘上筋の関連症状には以下の2つがあります。

  1. インピンジメント症候群
  2. 棘上筋腱断裂

インピンジメント症候群

インピンジメント症候群は肩関節の運動障害です。インピンジメント(Impingement)とは「衝突」を意味します。

上肢を挙上(外転、屈曲)するとき、上腕骨頭の大結節と烏口突起や烏口肩峰靱帯が衝突することが発症のメカニズムになります。

正常な肩関節では、これらの構造は衝突(インピンジメント)が起こりません。インピンジメント症候群では、上肢挙上に伴い上腕骨頭が上方に変位を起こすため衝突が起こります。

その際、棘上筋腱や上腕二頭筋長頭腱が挟み込まれるため、これらの構造の炎症が肩関節の痛みの原因となります。

棘上筋腱断裂

棘上筋腱断裂は筋腱部(クリティカルゾーン)の変性が進行することで起こります。通常60歳以上の高齢者に見られる症状です。

棘上筋が完全断裂した場合の主訴は以下の3つです。

  1. 肩の鋭い痛み
  2. 肩関節の可動域制限
  3. 肩関節の不安定性

肩の鋭い痛みは、肩関節の前上部に現れます。また、痛みと不安定性のために可動域制限が起こります。不安定性は筋力低下にもつながります。

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