仙腸関節障害の原因・症状・治療法

仙腸関節は左右の寛骨との間にある関節です(下図)。

歩いたり、何か物を持ち上げたりするときに衝撃を吸収する役割があります。

仙腸関節障害はギックリ腰などの原因になっていることもあります。可動域が非常に狭い関節であり、比較的不安定化しやすいため障害の好発部位となっています。

本記事では仙腸関節障害の原因・症状・治療法について解説してあります。

仙腸関節を補強している靭帯

仙腸関節を補強している靭帯には以下の5つがあります。

  1. 骨間仙腸靭帯
  2. 後仙腸靭帯
  3. 仙結節靭帯
  4. 仙棘靱帯
  5. 前仙腸靭帯

 

 

仙腸関節をもっとも強力に補強している靭帯は、骨間仙腸靭帯です。この靭帯は人間の身体の中でもっとも強度が高く、仙骨が前下方へ変位するのを防いでいます。

後仙腸靭帯はPSISからS3/4付近の間を走行しています。この靭帯はカウンターニューテーションに対して抵抗(伸張)します。

また、後仙腸靭帯の遠位部では仙結節靭帯と癒合しています。仙結節靭帯はニューテーションに対して抵抗します。

仙棘靱帯は仙結節靭帯の前側を交差しています。仙棘靱帯は坐骨棘から仙骨外側へ向かって走行しており、大坐骨孔と小坐骨孔を形成しています。ニューテーションに対して抵抗します。これら2つの靭帯は仙骨に対する寛骨の屈曲と回旋を制限します。

また、仙結節靭帯と仙棘靱帯の間には陰部神経が走行しており、これらの靭帯の間で絞扼されることがあります(下図)。また、陰部神経は陰部神経管においても絞扼されることがあります。いずれの場合も、会陰部の知覚異常が主症状です。

前仙腸靭帯は、仙腸関節前下部の関節包が肥厚したものであり、境界が明確ではありません。前仙腸靭帯はもっとも薄い靭帯であり、傷害の好発部位となっています。

  1. 骨間仙腸靭帯
  2. 後仙腸靭帯
  3. 仙結節靭帯
  4. 仙棘靱帯
  5. 前仙腸靭帯

原因・メカニズム

仙腸関節障害では、仙腸関節におけるサブラクセーションが起こっています。

仙腸関節面は凹凸状になっています(仙骨側の関節面はL字型になっており耳状面と呼ばれる(下図))。

そのため、サブラクセーションが起こると仙腸関節にロッキングが生じます。

この状態で仙腸関節に負荷がかかると、通常よりも大きな摩擦力がかかり、様々な症状を引き起こすようになります。ギックリ腰の原因の一部にもなっています。

仙骨の運動軸と変位

仙骨の運動軸は5本あります(3本の横軸と2本の斜軸)。

これらの軸を中心とした回転運動が起こります。

症状

仙腸関節障害では、仙腸関節の局所的な鋭い痛みが特徴的です。

また、関連痛がでん部から大腿後面、下腿後面にかけて広がることもあります(この場合、坐骨神経痛との鑑別が必要)。

検査

触診検査

以下の構造の圧痛を触診によって確認します。

  • 仙腸関節(後仙腸靭帯)
  • 仙結節靭帯
  • 仙棘靭帯
  • 腸腰靭帯
  • 梨状筋
  • 大殿筋
  • ハムストリング

治療法

アジャスメント

以下の部位に対してアジャスメントを行います。

  1. 仙骨
  2. 寛骨
  3. L5

筋膜リリース

仙腸関節の状態に影響を及ぼす軟部組織には、以下のようなものがあります。

  • 後仙腸靭帯
  • 仙結節靭帯
  • 仙棘靭帯
  • 腸腰靭帯
  • 梨状筋
  • 大殿筋
  • ハムストリング

これらの組織に対して(必要に応じて)リリースを行います。

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