菱形筋の解剖学と関連症状

菱形筋には大菱形筋と小菱形筋によって構成されています。

肩甲骨と脊椎の間にある筋肉であり、肩甲骨の安定性や脊椎の姿勢にとって重要な筋肉です。

本記事では菱形筋の解剖学と関連症状について解説してあります。

解剖学

大菱形筋

起始;T1-T4の棘突起

停止;肩甲骨の内側縁

作用;肩甲骨の内転、挙上、下方回旋

神経支配;肩甲背神経(C4, C5, C6)

 

小菱形筋

起始;C6-C7の棘突起

停止;肩甲骨の内側縁(上部)

作用;肩甲骨の内転、挙上、下方回旋

神経支配;肩甲背神経(C4, C5, C6)

 

関連症状

肩甲背神経絞扼症候群

肩甲背神経が中斜角筋において絞扼を受けることで現れる症状が、肩甲背神経絞扼症候群です。

肩甲背神経が絞扼されることにより、上記で解説した3つの筋肉(肩甲挙筋、小菱形筋、大菱形筋)の機能低下が起こります。

そのため、肩甲骨が外方に変位(上方回旋変位)します、また、肩甲骨の不安定性が生じることで翼状肩甲骨が生じることもあります。

また、症状が慢性化すると菱形筋の委縮が起こります(気づかれないことが多い)。

肩甲背神経に知覚機能はありませんが、肩甲背神経の絞扼により中背部(肩甲骨内側)や頚部~上肢にかけて痛みが現れることがあります(下図)。

 

 

また、比較的稀ですが胸部に痛みが現れることもあります。

翼状肩甲骨症

翼状肩甲骨とは、肩甲骨内側縁が胸郭から離れ後方に突出した状態のことです(下の写真)。

翼状肩甲骨症の原因には主に以下の3つがあります。

  1. 長胸神経障害
  2. 肩甲背神経障害
  3. 副神経障害

長胸神経障害により前鋸筋の機能低下が起こります。

また、肩甲背神経障害では菱形筋、副神経障害では僧帽筋の機能低下により翼状肩甲骨症が引き起こされます。

翼状肩甲骨症によって以下のような症状が現れます。

  • 肩関節の不安定性(肩の下制)
  • 肩、首、上背部の痛み
  • 上肢の運動に伴う捻髪音
  • 疲労感

 

関連動画

 

 

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