肝臓の機能

肝臓の働き

肝臓は右側横隔膜の直下にあります。人間の身体の中でもっとも大きな臓器です。肝臓の働きには、様々なものがありますが、それらを3つに分類すると以下のようになります。

  1. 胆汁の合成
  2. 代謝と貯蔵
    コレステロールの合成・分泌
    糖質の代謝
    ホルモン(インスリンやエストロゲン)の分解
    中性脂肪の分泌
    タンパク質(血液凝固因子)の合成
    ヘモグロビンの分解(クッパー細胞(Kupffer cell)=肝臓のマクロファージ)
    ビタミンD3をヒドロキシル化しカルシフェジオール (25-hydroxyvitamine D3) に変換
    B12、ビタミンD3、鉄、銅の貯蔵
  3. 解毒作用
    アンモニアを尿に変換

胆汁の合成

肝臓は一日に250㏄から1500㏄程度の胆汁を分泌しています。胆汁は肝細胞においてコレステロールを材料に産生されます。主に脂質の乳化とタンパク質の分解を促す作用があります。

普段は胆嚢に蓄えられていますが、脂質の摂取に伴い、胆汁は胆嚢管、総胆管を通り胆汁の圧によりオッディ括約筋が開き、ファーター乳頭から十二指腸へと流れ出ます。

十二指腸へ流出した胆汁はおよそ20%程度しか利用されません。残りの80%は再吸収され肝臓へと送られます(腸肝循環)。

胆汁は以下の3つの成分で構成されています。

  1. 胆汁酸
  2. ビリルビン
  3. コレステロール

ビリルビンは赤血球中のヘム(ヘモグロビンの抗生物質”鉄”)が代謝されてできた黄色の物質です。肝機能障害(肝硬変など)により、しばしば観察される黄疸はビリルビンによるものです。

オッディ括約筋

肝細胞
肝臓には300億個の肝細胞があります。これは肝臓全体の80%を占めているため、肝臓はほぼ肝細胞の塊と言えます。肝細胞の寿命は300日から500日程度です。肝細胞では、タンパク質(アルブミンやフィブリノゲンなどの血液凝固因子)の合成、毒物の除去、グリコーゲンの貯蔵などが行われています。

代謝と貯蔵

コレステロールの合成・分泌

コレステロールは細胞膜の構成成分の一つです。ビタミンD、胆汁酸、各種ステロイド系ホルモンの材料となります。

コレステロールは肝細胞(小胞体、細胞質)において合成されています。肝細胞以外では、小腸や副腎皮質、大動脈、精巣、皮膚においても合成されています。血中コレステロールの80%は肝細胞で合成されています。

食事からコレステロールを摂取すると、肝細胞でのコレステロール合成量が減ります。逆に食事からのコレステロール摂取量が減ると、肝細胞でのコレステロール合成量が増えます。

このようにして、肝臓(肝細胞)は血中コレステロール濃度を一定に保つ調整機能の役割を果たしています。

高コレステロールによって引き起こされる疾病

血中コレステロール濃度が高いと、動脈硬化のリスクが高くなります。コレステロールが血管壁にへばりつくことで、血管の狭窄が起こることが動脈硬化の発症メカニズムです。

高コレステロールにより、血中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)と中性脂肪濃度が増加します(善玉コレステロール(HDLコレステロール)濃度は低下)。特に悪玉コレステロールが血管壁にへばりつくことで、動脈硬化が起こります。

動脈硬化により、脳梗塞や心筋梗塞などの疾病が引き起こされます。

低コレステロールにより引き起こされる疾病

先ほども書きましたが、コレステロールは細胞膜を構成している重要な物質です。従って、コレステロールが少ないと細胞膜の機能障害が起こる可能性があります。

細胞膜にはセロトニン(神経伝達物質)の受容体があります。しかし、体内のコレステロール量が不十分な場合、細胞膜の機能低下が起こっているため、同時に受容体の機能低下も起こっています。

つまり、セロトニンが分泌されていても、それを受け取る受容体が少ないため、セロトニンを細胞内に取り込むことができません(セロトニンの吸収率低下)。

従って、低コレステロールによりセロトニンの利用効率が下がることで、うつ病を発症する割合が増えると言われています。

また、低コレステロールは癌(がん)の発症率を上げるとも言われていますが、こちらは相反する研究報告もあり明確なエビデンスが未だありません。

タンパク質(凝固因子)の合成

肝臓で合成されているタンパク質は、アルブミンやフィブリノゲンなどの血液凝固因子です。戒細胞において一日におよそ25g程度の血液凝固因子を合成しています。

Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ凝固因子の合成にはビタミンKが必要です。従って、ビタミンKが不足している場合、凝固因子の合成が適切に行われません。

内出血しやすい場合など、ビタミンK不足または肝機能の低下が起こっているかもしれません。ビタミンKは納豆に多く含まれており、春菊やホウレン草にも含まれています。

因子 別名 機能
フィブリノゲン(Fibrinogen) 血液を凝固させメッシュ状にする
トロンビン(Thrmbin) フィブリノゲンの活性化、血小板産生の活性化
プロアクセレリン(Proaccelerin)または不安定因子 不足により出血リスクが高まる
プロコンバーチン(Proconvertin) 組織因子と協同して血液凝固を刺激
クリスマス因子(Christmas factor) 不足により血友病Bを誘発
血漿トロンボプラスチン前駆体(Plasma thromboplastin antecedent) 第Ⅸ因子を活性化
プロテインC 抗凝固剤
プロテインS 抗凝固剤、プロテインCの補因子
アンチトロンビン 凝固酵素の不活性化

中性脂肪の合成

摂取カロリーが過剰になると、肝臓で中性脂肪が合成され皮下脂肪として貯蔵されます。また、内臓に蓄えられると内臓脂肪になります。

中性脂肪は第2のエネルギー源です(第1のエネルギー源はグリコーゲン)。従って、筋肉や肝臓に蓄えれているグリコーゲンが不足した場合、中性脂肪がエネルギー源となります。

糖質の代謝

小腸で分解・吸収された糖質は門脈系を介して肝臓へ運搬されます。肝臓に運搬された糖質は、肝細胞によってグリコーゲンに転換・貯蔵され、必要に応じて血中に流れ出し血糖値を一定に保っています。

  • 糖新生(Gluconeogenesis):アミノ酸、乳酸、グリセロールからグルコースへの転換
  • グリコーゲン分解(Glycogenolysis):グリコーゲンからグルコースへの転換
  • グリコーゲン合成(Glycognesis):グルコースからグリコーゲンへの転換
門脈の役割
肝臓に流入する血液の70%は門脈系を介しています。胃腸で消化・吸収された栄養素を肝臓に運んでいます。門脈系からの血液は、肝類洞を介して肝細胞まで運ばれ、そこで様々な物質(アンモニアなど)の転換(解毒)が処理されています。

ホルモン(インスリンやエストロゲン)の分解

膵臓で産生されたインスリンの大半は、肝臓において分解(代謝)されています。なぜ、このようなことが起こるのかは未だ解明されていません。

また、肝臓はエストロゲン代謝でもっとも重要な臓器です。肝臓でのエストロゲン代謝作用が低下すると、血中エストロゲン濃度が上昇します。

エストロゲンの作用の一つに毛細血管の拡張がありますが、血中エストロゲン濃度の上昇により、母指球と小指球が赤く変色します(手掌紅斑)。

ヘモグロビンの分解

ヘモグロビンは、赤血球の中にあるタンパク質のことです。ヘモグロビンと酸素が結合(酸化)することで全身に酸素が送られます。

クッパー細胞は肝臓の細胞にあるマクロファージの一種です。異物を貪食することで活性化し、化学物質を分泌して肝星細胞を活性化させます。

また、腸内細菌によって産生されたエンドトキシン(内毒素)もクッパー細胞によって解毒されます(免疫機能の役割)。

古くなった赤血球は肝臓にあるクッパー細胞によって貪食されます。そのヘモグロビンから分離された鉄(ヘム)が胆汁色素として胆汁と一緒に分泌されます。

ヘモグロビン
ヘモグロビンは赤血球の約1/3を占めるタンパク質のことです。ヘモは鉄のことであり、グロビンはタンパク質の一種です。従って、ヘモグロビンは鉄とタンパク質が結合してできた物質です。ヘモグロビンと酸素が結合することで、全身に酸素が送られます。ヘモグロビンの鉄の部分が酸化すると、赤色になります(血の赤色は酸化したヘモグロビンの色)。

ビタミンD3をヒドロキシル化しカルシフェジオール (25-hydroxyvitamine D3) に変換

日光(紫外線)により体内で合成されたビタミンD3は、肝臓へ送られ代謝されます。その際、ヒドロキシル化されカルシフェジオールに変換されます。

従って、カルシフェジオールは、肝臓でビタミンDをヒドロキシ化して作られるホルモン前駆物質です。カルシフェジオールは、腎臓においてカルシトリオール(Calcitriol、(1,25-(OH)2D3))に変換されます。

カルシトリオールは活性型ビタミンD3であり、小腸からのカルシウムの吸収を促し骨密度の低下を抑えます。

別名;カルシジオール、25-ヒドロキシコレカルシフェロール、25-ヒドロキシビタミンD

ヒドロキシル化
分子構造にヒドロキシ基(-OH)を置換・導入することです。ヒドロキシ化とも呼ばれます。

ビタミンB12、ビタミンD3、鉄、銅の貯蔵

ビタミンB12の体内貯蔵量のうち、およそ50%(1.5㎎)が肝臓(アデノシルコバラミン)において貯蔵されています。腸内細菌によって産生されているので、腸内環境の悪化はビタミンB12欠乏症となる可能性があります。

日光によって皮膚で合成されたビタミンD3は、肝臓に運ばれた後、貯蔵型ビタミンD3(25-ヒドロキシビタミンD)に転換され肝臓に貯蔵されます。

全身にある鉄の75%はヘモグロビンとして結合しています(ヘモ=ヘム=鉄)。残りの25%は肝臓に貯蔵されています。

銅を摂取すると十二指腸で吸収された後、肝臓に運ばれていきます。肝臓においてタンパク質と結合(銅結合タンパク質)して貯蔵されます。過剰な銅は、胆汁と混ざり体外に排泄されます。

解毒作用

解毒作用は肝臓の機能の中でももっとも重要なものです。門脈系から肝臓に運ばれてきた血液の中には、栄養素や化学物質、毒物、薬物など様々な物質が含まれています。肝臓では、それらの物質の活用または除去を行っています。
以下が肝臓による解毒のプロセスになります。
フェーズ プロセス
フェーズⅠ(酸化) シトクロムP450酸素添加酵素系
フラビン含有酸素添加酵素系
アルコール脱水素酵素とアルデヒド脱水素酵素
モノアミン酸化酵素
ペルオキシダーゼによる共酸化
フェーズⅠ(還元) NADPHシトクロムP450オキシドレクターゼ
還元されたシトクロムP450
フェーズⅠ(加水分解) エステラーゼとアミダーゼ
フェーズⅡ グルタチオン S-トランスフェラーゼ(メルカプツール酸から生合成)
N-アセチルトランスフェラーゼ
アミノ酸N-アセチルトランスフェラーゼ
硫酸転移酵素

アンモニアを尿に転換

アンモニアは、腸内細菌によってタンパク質が分解されるときに産生されます。産生されたアンモニアは肝臓において解毒され尿素に転換されて体外に排泄されます。

しかし、肝硬変などにより肝機能が低下すると、血中アンモニア濃度が上昇し脳細胞にダメージを与えることがあります。このような状態を肝性脳症(かんせいのうしょう)と言います。

肝性脳症
肝性脳症はアンモニアによって中枢神経系(脳)の障害が起こる疾患なので、症状は中枢神経系に関連するものになります。意識障害の程度により段階分けされており、初期段階では「身なりに無頓着」になったり、「朝と夜が逆転」したりします。しかし、症状の進行とともに異常行動(お金を捨てたりなど)や記憶障害が起こり、重篤な場合は昏睡状態に陥ります。

 

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【ボディビル歴33年】大学入学と同時にボディビルを開始。その後、現在までウエイトトレーニングを続けている。国内・海外でのボディビル大会での優勝・入賞歴多数。
【瞑想歴19年】33歳の時、インドに3か月滞在。1日12時間のヴィパッサナー瞑想を行う。それ以来、朝晩の瞑想は欠かしていない。
【カイロプラクティック歴22年】大学卒業と同時に渡米。カリフォルニア州のカイロプラクティック免許を取得しLAにて10年臨床経験を積む。オリンピック帯同経験あり。2007年に帰国。プロフィール詳細はこちら

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