下肢関節のマルアライメントが前十字靭帯へ及ぼす影響について

前十字靭帯損傷の危険因子には以下のようなものがあります。

  • 下肢関節のマルアライメント
  • 下肢筋郡の機能低下
  • 固有受容器の機能低下
  • 性差

本記事では、前十字靭帯傷害と下肢関節のマルアライメントの関係性について解説してあります。

下肢関節のマルアライメントと代償作用

股関節や足関節など下肢関節のマルアライメントにより、膝関節にも代償的な運動障害が引き起こされます。

なぜなら、ランニングやジャンプなどの動作により地面から足部に伝えられたエネルギーは、足関節から膝関節、股関節と上方に伝達されていくからです。

各関節の機能が正常である場合、伝達されたエネルギーは筋肉や靭帯、関節包などの軟部組織や関節(関節軟骨)において適切に衝撃が吸収されます。

しかし、関節のマルアライメントがある場合、衝撃吸収機能は低下しています。

関節のマルアライメント骨格のゆがみにより、各関節の運動が効率的に行われなくなり、その結果として局所的・機械的な負荷の増加が起こります。そして筋骨格神経系障害のリスクを高めることになります。

関節に過剰な負荷がかかることにより、関節の補強構造(特に靭帯や関節包)には顕微鏡レベルの損傷(微細外傷)が起こります。

それに伴い、機械受容器の機能低下が起こり関節の不安定性へと症状が進行していきます。

関節のマルアライメントがある場合、靭帯には通常よりも過剰な負荷がかかっています。そのためわずかな負荷によって損傷が起こります。

問題となっている関節やその周辺構造の機能的問題を理解することも重要ですが、姿勢のゆがみのようなマクロ的視点で問題を捉えていくという考え方も重要です。

前十字靭帯損傷の危険因子となり得る下肢関節のマルアライメントには、さまざまなコンディションが考えられます。ここでは以下の項目に限定して、その検査法なども合わせ解説していきたいと思います。

  1. 足関節の過剰回内
  2. 反張膝(Genu Recurvatum)
  3. 脛骨の外旋変位(サブラクゼーション)
  4. Qアングル

足関節の過剰回内

足関節の過剰回内はさまざまな機能的障害の危険因子となります。股関節や膝関節以外にも、仙腸関節や腰仙関節、椎間関節などにも影響が及びます。

従って、足関節の過剰回内は、あらゆる筋骨格系傷害(障害)の原因となります。

足関節の中心となる骨は距骨です。距骨の上側に距腿関節、下側には距骨下関節があります。足関節の過剰回内障害において、しばしば問題となるのが距骨下関節です。

荷重位において、距骨下関節には外反力が作用します。歩行時では、踵接地(heel strike)から足趾離地(heel rise/lift off)において足関節には外反が起こります。

足関節の回内には外反が含まれています。つまり距骨下関節が外反しているとき、同時に回内も起こっていることになります。

荷重位における距骨下関節の回内は、衝撃吸収にとっては必要なものです。歩行やジョギング、ジャンプなどによって生じた衝撃の一部は、距骨下関節が回内することによって吸収されています。

足関節の回内には脛骨の内旋が伴います。従って、足関節に過剰回内が生じている場合、脛骨はそれに伴いより大きく内旋変位を起こします。

前十字靭帯は脛骨内旋位において伸張されるため、足関節の過剰回内は前十字靭帯により大きな負荷(伸張)を加えることになります。

従って、足関節の過剰回内は前十字靭帯の傷害リスクを高めることになります。

足関節の過剰回内の検査法には以下のものがあります。

  • 舟状骨ドロップテスト
  • 踵骨外反の検査

舟状骨ドロップテスト

舟状骨ドロップテストは足関節の過剰回内の検査として、もっとも一般的なものです。この検査では、座位と立位における舟状骨結節の高さを測定しそれらの差を比較検討します。

座位において舟状骨結節の高さを測定するとき、舟状骨は中立位に維持します。

座位において距骨下関節の中立ポジションを見極め、その状態で床に足底部を着いてもらい舟状骨結節までの距離を測定します。

舟状骨結節の場所にマークを付けておくと検査が行いやすくなります。

次に患者に立位になってもらいます。このとき両足に均等に体重が乗るようにします。

そして同様に床から舟状骨結節までの距離を測定し、座位との足底結果を比較します。

踵骨外反の検査

踵骨の外反も荷重位と非荷重位において、アキレス腱の角度を測定し比較検討を行います。

荷重位における踵骨の外反角度の測定

 

非荷重位における踵骨の外反角度の測定

 

反張膝(Genu Recurvatum)

反張膝は膝関節が過伸展している状態のことです。スポーツ障害に限らず膝関節周辺構造の傷害リスクを高める要因となります。

膝関節への過伸展の反復が発生機序となります。このとき膝関節後側の靭帯、関節包、筋肉(腱)などの軟部組織へ慢性的負荷が加わっています。前十字靭帯は膝関節の伸展に伴い伸張されます。

従って、反張膝では膝関節の過伸展が反復されることで、前十字靭帯には通常よりも大きな負荷が加わります。

反張膝の検査は、患者仰臥位のいて膝関節を伸展方向へ圧迫して行います。

指や肘の伸展検査、母指の外転検査などにおいて陽性となるケースが多いです(これらの検査により、全身の柔軟性の程度を調べることが可能)。

脛骨の外旋変位(サブラクゼーション)

脛骨のねじれ(内旋/外旋)の程度を検査する方法には、大腿部と足部の成す角度を測定する方法があります。大腿部と足部の成す角度は膝関節90°屈曲位において測定します。

子供ではこの角度は約10°外旋位です。年齢に伴い外旋角度は増加していきます。

Qアングルの増加

大腿前捻角の増加、脛骨の過剰外旋、足関節の過剰回内などがQアングル増加の要因となります。

  • 大腿前捻角の増加
  • 脛骨の過剰外旋
  • 足関節の過剰回内

大腿骨前捻角の増加

大腿骨前捻角というのは、大腿骨頚の長軸と大腿骨顆の横軸が形成する角度のことです。

大腿骨頚と大腿骨体が成す角度は頚体角と呼ばれます。

大腿骨前捻角の測定法については以下の写真を参照してください。

 

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