上腕二頭筋の解剖学(起始・停止・作用・神経支配)と関連症状

解剖学(起始・停止・作用・神経支配)

起始:関節上結節(長頭)、烏口突起(短頭)

停止:橈骨粗面、上腕二頭筋腱膜

作用:肘の屈曲と回外、肩の屈曲

神経支配:筋皮神経

 

上腕二頭筋長頭の起始は関節上結節にあります。関節上結節は肩甲骨の関節窩の一部です。この部位において上腕二頭筋長頭腱は肩の関節唇と癒合しています。

また、上腕二頭筋長頭腱は上腕骨近位前部にある結節間溝を走行しています。

停止は橈骨粗面と上腕二頭筋腱膜です。上腕二頭筋腱膜は尺側手根屈筋と癒合しています。

上腕二頭筋の作用には、肘の屈曲・回外だけでなく肩の屈曲の作用も持ちます。従って、上腕二頭筋の機能低下は肩関節の運動障害の要因にもなります。

サブラクセーション

上腕二頭筋長頭腱が結節間溝において内方にサブラクセーション(変位)することがあります。

サブラクセーションは内方に起こります。その場合、結節間溝において腱(+腱鞘)に摩擦が生じ炎症反応が起こります(上腕二頭筋長頭腱炎)。

関連症状

上腕二頭筋の関連症状には以下の3つがあります。

  1. インピンジメント症候群
  2. 上腕二頭筋長頭腱炎
  3. SLAP病変

インピンジメント症候群

インピンジメント症候群は肩関節の運動障害です。インピンジメント(Impingement)とは「衝突」を意味します。

上肢を挙上(外転、屈曲)するとき、上腕骨頭の大結節と烏口突起や烏口肩峰靱帯が衝突することが発症のメカニズムになります。

正常な肩関節では、これらの構造は衝突(インピンジメント)が起こりません。インピンジメント症候群では、上肢挙上に伴い上腕骨頭が上方に変位を起こすため衝突が起こります。

その際、棘上筋腱や上腕二頭筋長頭腱が挟み込まれるため、これらの構造の炎症が肩関節の痛みの原因となります。

上腕二頭筋長頭腱炎

上腕二頭筋長頭腱炎は、肩関節の反復動作が発生のメカニズムです。

また、姿勢に問題がある場合もリスクになります。例えば、猫背の場合、上腕骨頭が前方に変位しているため、上腕二頭筋長頭腱に圧迫負荷がかかります。

その状態で肩の反復動作を行うと上腕二頭筋長頭腱炎になるリスクが高くなります。

SLAP病変

SLAPとは”Superior Labrum Anterior and Posterior lesion”の頭文字を取って作られた言葉です。

SLAP病変では、肩の関節唇上部の断裂が起こっています。上腕骨頭の前方脱臼によって起こる場合が多いです。

上腕骨頭が前方に脱臼する時、上腕二頭筋長頭腱には牽引負荷がかかります。上腕二頭筋長頭腱と関節唇は癒合部位を持っているので、その際、癒合部位が剥離することがあります。これがSLAP病変と呼ばれるものです。

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