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腰椎椎間関節症(Lumbar facet syndrome)

2つの隣り合った椎骨は、椎間板と椎間関節によって支えられています。椎間関節は椎骨後部の左右に1つずつあり、滑膜性関節に分類されます(図1)。

図1 腰椎の椎間関節

腰椎の椎間関節はほぼ矢状面に平行となっているため、腰椎の矢状面での運動(屈曲/伸展)で椎間関節には剪断力、横断面での運動(回旋)では圧迫力が働きます。

また、椎間関節は荷重位(立位)においてある程度の圧迫負荷にさらされています。そのため、腰部の反復動作により関節軟骨の摩耗(変性)が進行する可能性があります。

その結果生じるのが椎間関節症であり、特に下部腰椎(L4/L5/S1)で好発します。腰椎の椎間関節症は慢性的な腰痛の原因となります。


症状

 腰部を後ろに反る動作(脊椎の伸展)により、腰痛が増悪するケースが多いです。また、長時間の座位や立位によっても症状の増悪が起こります。

 症状の特徴は、朝起きてすぐの痛みやこわばり感です。初期の段階では、この症状は数時間で軽減し、午後には痛みがほぼ感じられなくなります。

椎間関節症では、椎間関節の関節軟骨の摩耗が起こっています。関節軟骨には関節の間の動きを円滑にする機能がありますので、関節軟骨の摩耗は椎間関節の可動域制限(フィクセーション)を引き起こします。

従って、患者は体幹の動作(屈曲/伸展、回旋、側屈)にこわばり感(硬さ)を訴えます。また、こわばり感だけでなく、動作痛が生じることもあります。

関節軟骨の摩耗は、椎間孔の狭窄も引き起こします。それに伴い、腰椎神経根の圧迫・刺激が引き起こされ、神経根症状が現れることがあります。

腰椎の神経根症状は、腰部からでん部、下肢にかけて痺れや感覚麻痺などが特徴です。

また、椎間関節からは関連痛症状が現れることもあります。腰椎の椎間関節の関連痛は、主にでん部から大腿後面にかけて現れます(図2)。

図2 腰椎椎間関節の関連痛領域

特に下肢への関連痛が認められる場合、坐骨神経痛との鑑別が重要になります。腰椎椎間関節症による関連痛の好発部位は以下の通りです(Fukui S., 1997, http://bit.ly/2RLwmPd)。

  1. 腰部~でん部(40~70%)
  2. 股関節外側(10~30%)
  3. 大腿後面(10~30%)
  4. 陰部(5~10%)

原因

 急性傷害の原因には、交通事故やスポーツ傷害(マクロトラウマ)などがあります。

長時間の悪い(異常)姿勢や同じ動作の反復(マイクロトラウマ)なども椎間関節症の原因になります。

また、我々の身体は多かれ少なかれ加齢に伴い変性が生じていきます。

従って、加齢も椎間関節症の原因の一つになります。このことは、椎間関節症と年齢に強い相関性があることからも明らかです。

椎間関節は、脊髄神経後枝の内側枝(同レベルとその上下のレベル)による支配を受けています(図3)。椎間関節の変性により内側枝が刺激を受け、椎間関節に痛みが生じます。

図3 腰椎椎間関節への関節枝

検査

 患者の腰椎を伸展させた後、回旋させます(ケンプテスト)。このようにすることで、腰椎の椎間関節に圧迫の負荷を加えることができます。

この検査で症状(腰痛)の増悪があれば陽性です。しかし、複数の論文において、この検査法は特異度が低いと報告されています。

従って、この検査において陽性となったとしても、椎間関節症と特定することはできません。

 椎間関節の触診検査では圧痛が生じます。圧痛は鋭い局所痛であることが多いです。

この痛みは椎間関節そのものから来るものではなく、関節周辺の軟部組織である関節包などに起因するものと思われます(関節包にも変性が生じている可能性が大きい)。

 腰椎の可動域検査では、全可動域において制限が現れます。関節包の変性に伴う拘縮が強い場合、屈曲の可動域制限が顕著となります。

一方、椎間関節の軟骨の変性が進行している場合、伸展の可動域制限が強くなります。

治療

 椎間関節症の治療において、留意すべきことには2つあります。

一つ目は、症状の進行を遅延させることです。関節軟骨の厚みを取り戻すことは不可能だからです。

二つ目は痛みのコントロールです。

 症状の進行遅延と痛みのコントロールにとって大切なことは、椎間関節の可動域制限を改善させることです。そのために有効な治療法は以下の通りです。

  1. アジャスメント(カイロプラクティック)
  2. モビリゼーション
  3. 腰椎周辺の軟部組織リリース
  4. エクササイズ

1.アジャスメント

 アジャスメントは、フィクセーション(可動域制限)がある椎間関節に対して特定的にスラストを加えることができます。

フィクセーションが生じている腰椎の椎間関節だけでなく、必要ならば仙腸関節にもアジャスメントを行うとよいでしょう(椎間関節症には、往々にして仙腸関節のフィクセーションも生じていることが多い)。

2.モビリゼーション

 モビリゼーションも椎間関節症の症状改善には、有効な治療法です。

アジャスメントとの唯一の違いは、スラストを入れないことです。

お年寄り(骨粗しょう症による骨密度低下が疑われるケース)や症状が重度のケースでは、素早いスラストはリスク高いため極力避け、モビリゼーションで代替させるようにします。

3.腰椎周辺の軟部組織リリース

 腰椎周辺の軟部組織には、筋肉(回旋筋、脊柱起立筋、腰方形筋、大腰筋など)、靱帯(腸腰靭帯、棘上靱帯など)、椎間関節の関節包などがあります。

椎間関節症では、これらの軟部組織に拘縮や隣接組織との癒着(これらも痛みの原因となる)が認められ、それが可動域制限を引き起こしています。

従って、これらの軟部組織をリリースすることは、症状改善(または進行遅延)にとって必須の治療法となります。

4.エクササイズ

 エクササイズには、ストレッチやウエイトトレーニングなどがあります。エクササイズにより、椎間関節の可動域制限や血液循環の改善が期待されます。

血液循環の改善により、軟部組織の拘縮が和らぎ鎮痛効果が期待されます。また、栄養供給がスムーズに行われ、代謝も活発化することも症状の軽減に役立ちます。