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オスグッド・シュラッター病(Osgood-Schlatter Disease)

オスグッド・シュラッター病は、アメリカ人の整形外科医Robert Osgood (1873-1956)とスイス人の外科医Carl Schlatter (1864-1934)の2人の名前から命名されました。

この疾患は小学生から高校生にしばしば見られる脛骨粗面の骨軟骨炎(成長骨端炎)です。ジャンプ動作やランニングの反復などで症状が悪化することが多いため、何らかの運動を行っている小中高生(男子は12歳から15歳、女子は8歳から12歳)に好発します。また、女子よりも男子に多く認められる傾向がありますが、昨今は女子の運動参加率が上昇しているため、男女比は拮抗しています。

 

症状

主訴は脛骨粗面(膝前側)の鋭い局所痛です。痛みは階段の上り下りやジャンプ、ランニングなどの反復動作により徐々に悪化していきます。脛骨粗面の肥大が認められることもあります。片側にのみ症状が現れているケースが多いですが、両側に症状を訴える場合もあります。また、休息時に痛みは自覚されないことが多いですが、炎症反応が強い場合、その限りではありません。膝関節のロッキングや突発的な脱力などの症状は稀です。症状の程度は、痛みの持続時間によって3つに分類されています(以下参照)。

 

オスグッド・シュラッター病の症状の程度

グレード1;運動後に痛みの増悪が起こるが24時間以内に無痛になる

グレード2;運動中または運動後に痛みの増悪が起こり、24時間以上持続する

グレード3;常時痛みがあり、運動や日常生活に支障をきたしている

 

 

原因

牽引負荷

オスグッド・シュラッター病では、脛骨粗面に繰り返し牽引負荷が加わることが発症のメカニズムとなります。

大腿四頭筋腱は膝蓋骨に付着しており、膝蓋靭帯を介して脛骨粗面に停止部を持っています(図1)。従って、膝関節の屈曲・伸展が反復されることにより大腿四頭筋の伸縮が起こり、脛骨粗面には牽引負荷が加わります。

図1 膝の周辺構造
膝蓋靭帯は膝蓋骨尖(膝蓋骨下端)から脛骨粗面に伸びています。大腿四頭筋腱は膝蓋骨底(膝蓋骨上端)に付着しており、大腿四頭筋で発生したエネルギーは
膝蓋靭帯を介して脛骨粗面まで伝達されます。

 

患者が成長期の場合、脛骨粗面の骨端はまだ閉じておらず構造的に脆弱になっています。そのため、この部分に牽引負荷が加わることで、炎症反応が引き起こされます。また、過剰な負荷が加わることにより骨端の剥離骨折が生じることもあります。

 

骨化中心

脛骨近位端には、近位脛骨骨端と脛骨粗面の2つの骨化中心があり、これらの骨化中心は軟骨橋によって区切られています(図2)。骨化前の脛骨粗面は線維軟骨(牽引負荷に対して強い抵抗力を示す)がその主構成成分ですが、骨化に伴い脆弱な軟骨細胞に置き換わります。そのため、この時期において脛骨粗面は剥離骨折のリスクがより高いと考えられます。

図2 脛骨遠位端にある二つの骨化中心
軟骨橋によって、近位脛骨骨端と脛骨粗面は区分されています。

 

 

脛骨粗面の剥離骨折の6分類

脛骨粗面の剥離骨折には大きく6つに分類されます。タイプⅠは軽度の剥離骨折であり、患者は膝関節の伸展可動域は正常に保たれていることもありますが、タイプⅡ(中度)、またはタイプⅢ(重度)では荷重位において膝関節の伸展に伴い強い痛みが現れます。特にタイプⅢでは、関節内において出血が伴っている場合があり、出血による関節の腫脹が認められるようになります。

 

タイプⅠ(軽度):剥離骨折は脛骨粗面にある骨化中心の遠位部において生じている。

タイプⅡ(中度):骨折線が軟骨橋まで及んでいるが、関節軟骨には損傷がない。

タイプⅢ(重度):骨折線が軟骨橋と骨端線にまで広がっている(関節内骨折)。



検査

触診検査

触診検査では脛骨粗面における炎症反応(熱感、腫脹、発赤)の有無を確認します。次に脛骨粗面の膝蓋靭帯付着部位における圧痛を触診します。その際、脛骨粗面の上内側、上側、上外側の3か所において触診を行い、それぞれの箇所における圧痛の程度を(患者に聞いて)判断します(それぞれ写真1A、1B、1C)。

A 脛骨粗面上内側の触診 B 脛骨粗面上側の触診
C 脛骨粗面上外側の触診

 

写真1 脛骨粗面の触診

脛骨粗面の触診では脛骨粗面の近位に接触し、A~Cの3つの方向に圧迫して行います。矢印は圧迫方向を示します。

抵抗運動検査

次に膝関節伸展の自動的または抵抗運動(アイソメトリック)検査を行います。抵抗運動検査では膝関節を①30度屈曲位、②90度屈曲位、③完全屈曲位の3つのポジションにおいて行うようにします。陽性反応は症状(痛み)の増悪です。膝関節の屈曲角度を大きくすると、膝蓋靭帯が伸張されるため、抵抗運動検査ではより痛みの増悪が現れやすくなります。従って、上記の3つのポジションにおいて抵抗運動検査を行うことで症状の程度を推察することができます(症状の程度は①重度、②中度、③軽度となります)。

炎症反応が強く表れている場合、膝関節の他動的屈曲検査においても陽性反応が現れます。この場合、膝関節の屈曲角度が大きくなるに従い、痛みの増悪が起こります。

鑑別診断

オスグッド・シュラッター病と脛骨粗面の剥離骨折の鑑別診断は、荷重位における患者の反応を見るようにします。通常、剥離骨折の場合、強い痛みのために荷重位が困難です。一方、オスグッド・シュラッター病の場合、荷重位において若干の痛みの増悪が起こり得ますが問題ありません。また、剥離骨折では急激に痛みが現れるのに対し、オスグッド・シュラッター病では徐々に痛みの増悪が起こるという違いもあります。

剥離骨折以外の鑑別診断にはジャンパー膝、膝蓋大腿関節痛症候群(Patellofemoral pain syndrome)、膝蓋下脂肪体炎があります。これら4つの症状は、痛み(または圧痛)が生じる部位によってある程度鑑別することが可能です(図3)。オスグッド・シュラッター病と膝蓋大腿関節痛症候群では、それぞれ痛みは脛骨粗面と膝蓋骨尖に局在化しています。一方、膝蓋大腿関節痛症候群と膝蓋下脂肪体炎では、痛みは散在化しています。

 

A B
C D

図3 膝痛の鑑別診断

オスグッド・シュラッター病では、痛みは脛骨粗面に局在(A)していますが、ジャンパー膝では膝蓋骨尖に痛みが現れます(B)。また、膝蓋大腿関節痛症候群では膝蓋骨または大腿骨の関節軟骨に痛みが広がっており(C)、膝蓋下脂肪体炎では膝蓋靭帯の直下に痛みが広がっています(D)。

 

 

治療

脛骨粗面の構造的問題については徒手的には対応不可能です。従って、膝関節の機能的問題を改善させていくことになります。機能的問題では脛骨粗面への負荷が増加する原因を考察します。

膝蓋大腿関節の運動障害

一つ目は膝蓋大腿関節の運動障害です。膝蓋骨と脛骨粗面は膝蓋靭帯によって繋がっています。従って、この関節に運動障害がある場合、脛骨粗面への負荷に影響を及ぼすようになります。また、膝蓋骨は大腿四頭筋からの影響を受けやすいため、ホームエクササイズは大腿四頭筋のストレッチを行ってもらうようにします。

大腿脛骨関節の運動障害

二つ目は大腿脛骨関節の運動障害です。膝関節伸展の最終可動域において脛骨には外旋が起こります。これはスクリューホームメカニズムと言われています(逆に屈曲の初動では脛骨は内旋します)。スクリューホームメカニズムの障害により、膝蓋靭帯へかかる負荷には変化が生じます。従って、大腿脛骨関節の屈曲・伸展に伴う内旋・外旋の運動障害の有無を検査し、異常があれば治療するようにします。また、脛骨の外旋制限が強い場合、膝窩筋の硬縮(短縮)が原因となっていることがあります。